第15章 11話
マレーシアかぁ、遠いなぁ……。そもそも場所がよくわからない。そもそも東南アジアって島が多いから国境がわかりにくいよね。ペナン島というくらいだから島なんだろうしね。
せっかくのバカンスが1日と持たず終了を向かえようとしているこの悲しさ。
いや、すぐに片付けて戻ってくればいい。どうせティア先生達ボスモンスターは魔素を吸収するためにダンジョンに一度戻らないとならない。その間にサクッと解決出来ないかな……。
「師匠、『ペナンダンジョン』に『てんとう虫』さんは?」
「まだ到着したとの連絡は入ってないんだ。それに、彼らが到着したとしても軍隊が投入されたら、さすがに持たないと思うよ」
「強い人が行ってる訳ではないの?」
「そもそも、現地の野性動物に寄生する予定だったからね。確か、レベル2の特侵隊員さん数名じゃなかったかな」
「じゃ、じゃあ、私たちがさっき乗っていた輸送用ヘリで一気に乗り込む?」
マレーシアはアメリカと同盟を結んでいる国ではない。そもそも、在日米軍のトップは押さえているけど、アメリカ本体はノータッチだ。マレーシア軍も相手がアメリカだけに、いきなり爆撃してくる可能性はないかもしれないけど、あとあと面倒なことになるのは間違いない。
「マレーシアは、確かイギリスの同盟国なんだ。全く関係ない在日米軍が行っても、恐らく相手にされないよ」
「えーっ! どうしよう。アイシャ、ヤバいじゃん! 師匠、何か助けに行く手段はないの?」
「まずは、ダンジョンの入口をすぐに隠すように柿の種さんを通じてダンジョン会談で伝えてもらって」
「そ、そうだね! ショウに伝えてくる」
「タカシさん、私たちが向かいましょうか」
「3人はパスポート持ってるの?」
「ないですよ。そこは、タカシさんの日本政府裏ルートを活用してですね」
「いやいや、それでも時間が掛かるよ。パスポートとか面倒だし、もう密入国しようか……」
「密入国ですか!? パスポートよりもハードルが上がってますよっ!」
スキルエレメントと透明化スキルを併用すれば水竜で、ひとっ飛びだ。しかしその場合、僕とティア先生、または僕とレヴィの組合せに限定される。
「とりあえず、僕とティアで『ペナンダンジョン』へ向かうよ。ダンジョンの様子を見て、手伝ってもらいたいことがあったらお願いしたい。だから、まだ『新潟ダンジョン』に戻るのは待っててもらえるかな」
僕にしがみついてマレーシアまでついていける人がいたら人数は増やせるけど、風人の場合だと僕に触れないだろうし、ティア先生納得の氷人で張り付いて向かうとしても、凍傷でものすごいダメージを負ってしまうか、下手したら死ぬかもしれない。そんな危ない暴れ竜、空の旅を経験するのは僕一人で十分だろう。
「もちろんです。私たちの指導ミスでもありますから、何でも言ってください」
「うん、よろしくね。しばらくは、ここのホテルを自由に使っててよ。一週間まとめてこの階を全部押さえてるからさ」
「この階全てですか……」
「何か困ったことがあったら、さっきいたエディに相談して」
「あ、あのオカマさんですね。わかりました」
「さてと、では僕は酔っぱらいを起こしてこようかな」
部屋の前まで行くと、中からエディの声が聞こえてきた。どうやらお水を渡しているようだ。まだ入れないね。少し待とう。
「なんで、脱いでるのよ。っていうか、床びっちょびちょじゃないの。あなた達、酒癖悪いとタカシ君に嫌われるわよ」
「やだー。嫌われたくない!」
「ちょっとー、匂うわよ。シャンパンファイトするなら先に言ってくれる? とりあえず、私が部屋を片すから、あなたたちはもう一度お風呂入って目を覚ましなさい」
「大丈夫よ……ウンディーネ。吸収して、とりあえずレイコからその次はレヴィよ」
「ひぃあー、ちょっ! ぷはっ!」
「ふぁぁっぷ、は、貼りつきますー」
治癒×2
中で何が起こっているのか確かめたい。非常に興味深い声が聞こえてくる。
「私もお願いするわ。うーん、はぁぁぁーん」
治癒
「何それ、便利すぎるわね。水滴も匂いも全部なくなってるじゃない。床とかもいけちゃうの?」
「ウンディーネ、綺麗にしてもらえる?」
「す、すごいわね。床の一部が新品になってるじゃない。これならホテルに怒られるどころか、逆にどうやったのか問い詰められそうだわ。あ、あれっ? お酒、もう抜けてるの?」
「そうね、魔法のおかげでかなり抜けてきたみたい」
「そう、なら早く浴衣を着直しなさい。風邪引くわよ」
「そうね。タカシ様も扉の前でお待ちですものね」
お、おう、全然バレてるし……。
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