第15章 10話
「師匠、何この部屋! 部屋の中に部屋がいっぱいあるじゃないの」
ベッドルームが5つ、和室が2つに大きいリビングとなっている。しかも露天風呂もかなりの大きさだ。
「ティアがいるから念のため大量に用意しておいてよかったわ。普通の舟盛りでゴメンね」
「タカシさん、このオカマさんは何故、舟盛りで謝っているんですか? むしろ希望通りというか以上なんですけど」
「気にしなくていいよ。爆食の水竜がいたせいで、訳わからない盛りつけ方をする思考になってるだけだから」
「アワビって初めて食べる! オカマさん、これどうやって食べるの?」
「カットされているからそのまま網焼きでいいわ。出汁醤油で焼きなさい」
「リノ、手伝って。アワビとサザエを焼くわよ」
「タカシから懐かしい匂いがする」
「香ばしい醤油の焼ける匂いしかしないわよ」
「さっきお風呂から上がったばっかりなのに、シャンパンぶっかけられた感じの匂い?」
「あー、確かに酒くさかったかも。まぁ、たまにはのんびり過ごすのもいいでしょ。許してあげなさい」
「タカシ、カイトに会った?」
こえーな、この子。匂いなんか絶対残ってないと思うんだけど、この子なりに何か感じるのかな……。
「カイト!? どういうこと?」
「リノどういう意味?」
「カイトって、三人のマスターだったカイトさん? 最近会った初対面は、カモメのジョナサンとかイーグルとか鳥さんばっかりなんだけど」
「そう、カイトはやっぱり生きていた」
話が通じないな。というか、リノちゃんにバレまくってるな。制約があるから僕の口からは話せないのがもどかしい。
「話せないならいい。でも一つだけ答えて。カイト元気?」
どの辺りから制約に引っ掛かるのかわからないけど、関係のない話なら大丈夫……かな。
「会ったことはないから、元気かどうかはわからないね。でも、『忍び足』は是非習得したいスキルかな」
「そう。ありがと」
ニヤリと口角が上がったリノちゃん。どうやら満足頂けたようだ。
「ちょっと、リノ? どういうことなの?」
「わかんないよー」
「タカシは話すことが出来ないということ。私たちしか知らないはずのカイトのスキルをタカシが知っていた。それが答え」
「つまり?」
「タカシはカイトと会っている。ただ、何かしらの理由があって、それを私たちに話せない」
「そうなの師匠!?」
「サクラ、話せないってリノが言ってるでしょ」
「ごめんね。今は話せないから、先に『大阪ダンジョン』の話を聞かせてよ。あっ、ご飯は食べながらでいいよ」
「気になるー」
「では『大阪ダンジョン』の件、私から話しますね。管理が必要と言ったのは、『ガルーダ』がダンジョンから逃げ出さないように見張りを立てる必要がありそうなんです」
「それって、やっぱり」
「自ら消滅の道を選ぼうとしているか、近くのダンジョンに攻めこもうとしているかのどちらかでしょうけど、おそらくは前者の可能性が高いかと」
「まぁ、そうだよね。立場が逆なら僕たちの仲間が同じ目に合っていた可能性があったんだ。そう思うと、なんとも言えなくなるね」
「前世の私たちのダンジョンだって今頃……」
「そうか、そうだったね」
「今はリリアさん達が封鎖しています。ずっと、『大阪ダンジョン』にいる訳にもいかないでしょうから相談をと」
「しばらくは『特侵隊』(てんとう虫)、『在日米軍』(てんとう虫)でレベルアップを兼ねて封鎖するように指示しておこう」
「それが助かるかな。レベル上げに行くときには中を解放する感じでね」
「あそこにモフモフはいない。一ミリも興味がない」
さすがはリノちゃん。相変わらず自分の欲望に忠実です。そういえば、リノちゃんにモンスター懐柔系のスキルがあるのではとかいう話があったっけ。
「ミク、スマホが鳴ってるよ!」
「あっ、本当だ……元勇者のショウ君からね。何かあったのかな……もしもし、どうしたの?」
「ミクさん、マレーシアの『ペナンダンジョン』のアイシャさんから緊急の連絡が入りました。ダンジョンモンスターが外部の人間に見つかってしまったかもしれないとのことです」
「モンスターが? えっと、ダンジョンは見つかってないの?」
「はい。獲物を探しに出ていったモンスターが一体戻って来てないそうです」
「何でそんな危険なことを。あれだけ注意したのにっ!」
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