第15章 9話
モンスタードールズの三人だが、近くにヘリポートがなかったようで、砂浜付近にパラシュートで降りてくることになったようだ。夜にパラシュートとか危険だと思うんだけど、彼女達のステータスは普通の人間とは違うから問題ないだろう。
到着までは時間にして15分後ぐらいらしい。とりあえず、三人をキングサイズのベッドに運ぶと部屋をカードキーで施錠してから外に出た。
とりあえずエディに電話しておこうか。
「あっ、エディ? 今、ヨルムンガンドちゃんと一緒なんだよね? 女性陣三人ともシャンパンに酔っぱらっちゃって寝ちゃってるから、ヨルムンガンドちゃんは違う部屋に連れてってもらえる」
「三人とも? しょうがないわねぇ。わかったわ。あとでお水持って様子見るわね」
「助かるよ。あと、急きょお客さんが三人追加になるんだけど大丈夫?」
「階層ごと借りきってるから問題ないはずよ。一応、ホテルには伝えておくわ」
「ありがとね。僕はその三人を迎えに行ってくるけど、すぐに戻ると思うから。一番手前の部屋に案内するよ。じゃあね」
「はーい。了解よ」
日が落ちた浜辺は明かりもないので、とても暗い。しかもホテルの前にある浜辺は、一般の人が立ち入らないように隔離されており静かだ。
「もうそろそろかな……」
遠目にもライトとともに少しずつ近づいてくるヘリコプターが見えてきた。パラシュートで降りてくるからなのか、高い高度で飛んでいるようだ。
火弾
目印になるように少し大きめの火弾を浜辺上空に漂わせて円を描くようにしながら浮遊させている。
間違って海に落ちたら可哀想だから、そうなりそうな場合は助けてあげよう。
「ひゃぁぁぁぁ!!!!」
「ちょっ、ミクうるさいから!」
「……あそこ」
どうやら、リノちゃんが僕の火弾を見つけてくれたようで、みんなを誘導してくれている。ミクちゃんは高い所が苦手なのかな? どうやら下を見れないようで一人離れていく。このままだと一人だけ海に落ちそうだ。
疾風
サクラちゃんの撃った疾風はミクちゃんのパラシュートに急な横風を与えてしまい、もはや墜落しそうになっている。
「し、師匠ぉー、ミクを助けてぇ!!」
「風の魔法だとバランスを崩して余計に危ないのか……。ならば、使い慣れた魔法で強引にでも引き寄せようね」
水弾
パラシュートの内側に水弾を飛ばすとそのまま強引に方向転換させて浜辺の方に持ってくる。
「ひぃぅぅぅぅ!!!!」
一人先にミクちゃんが砂浜に降りてきた。というか、降ろしてあげたという方が正しいか。
「ミクちゃん高所恐怖症なの? 大丈夫?」
「た、助かりましたぁ。パラシュートは無理だから私は一人で『千葉ダンジョン』か『新潟ダンジョン』に戻るって言ったんですけど、二人が許してくれなくて……」
「そっか、サクラちゃんが魔法で何とかするつもりだったんだろうけどね」
「あの風魔法のせいで私、死にそうになりました」
「まぁ、無事でよかったよ」
「タカシ、ミクにやったやつジェットコースターみたいで楽しそう。私もやりたい」
「やりたいって言われても」
「早く魔法を撃つべき! 私はいつでも準備万端」
「しょうがないなぁ。水弾」
パラシュートを装着したまま待機中のリノちゃんを再び空の旅に連れていってあげた。ジェットコースター好きなら多少激しくても喜んでくれるだろう。10分ぐらいランダムに動かしておこうか。
「師匠、助かったよ。それにしても、相変わらず気色悪いぐらい自由に動かすよね」
サクラちゃんの目線の先には笑顔のリノちゃんがくるくる回転しているのを楽しむ姿を捉えていた。
「考えられないです。あれの何が楽しいのですか……うっぷ」
ぐるんぐるん回っているリノちゃんを見て、また気持ち悪くなってしまったミクちゃん。
「とりあえず、露天風呂付きの部屋があるから案内するよ。よかったら『大阪ダンジョン』の状況を教えてくれるかな?」
「いいよ。とりあえず部屋に行ってからね! いいレベルアップ場所になりそうだけど、管理人が必要になりそうだよ」
ダンジョンの管理人ね……。
「あっ、夜ごはん終わっちゃったんだけど、カップラーメンとレトルトカレーどっちがいい?」
「えー!! 海鮮でしょ? 刺身と貝だよ。もう胃が魚を求めちゃってるよ。師匠のバカ!」
「サクラ、タカシさんがそんな酷いことする訳ないはずよ。ちゃんと刺身盛り合わせに、アワビのステーキぐらい用意してくれてるわ」
目が本気だ。さっきまで吐きそうにしていたミクちゃんが復活している。
「あっ、エディ? ちょっとお願いがあるんだけど……」
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