第15章 2話
サイゼスさんを訪ねると既に魔王様から話があったようで、すぐに腕を掴まれて魔法を解析する個室へと連れていかれた。魔法のことになると鼻息の荒いおじいさまだ。
ちなみにピースケは先に家に戻って帰る準備やらミルさんや子供達にバイバイするとのこと。実に家庭的な落花生である。
「キメラに有効な魔法というのがこの鎌鼬という風の中級魔法であるのか。魔操殿の新魔法はこれで何個目になるかのう」
「この魔法は構想としては頭の中にあったので直ぐに使えました」
「一応言っておくが、普通は直ぐに使えんよ」
前回同様に機械に手を置いて魔法の解析をしてもらっている。中級魔法の新魔法となるとそれなりに使い手を選ぶようで、まずは風魔法を得意とする人達から覚えていってもらい広げていくということになった。
僕が戻ってくる頃にはキメラを全滅しといてもらいたい。
「魔操殿は次から次へと全く畏れ入るわい。やはり、スキル『魔力操作』レベルMAXが効いておるのは間違いないな。長期的にはこのスキルを研究した方がいいのだがな……」
「『魔力操作』について何かわかったことがあるんですか?」
「スキルにはレベルがあるのは知っているであろう。わしが調べた所によると『魔力操作』ね、あれレベル10を超えてるかも」
「ふぁっ?」
「いや本当マジで」
「というか、そんな分析出来るんですか?」
「通常はレベル3か5が上限なんじゃが、分析するとそれらは一定の法則があることがわかっておる。で、『魔力操作』じゃがな、レベル5にあった法則が重ね掛けされておるのを発見したから間違いない。他にも初めて見るのがあったしの」
みんなまだレベル1とか2だったよね。これ極めるのって結構先が長そうなのでは……。
「『賢者の杖』を使って練習したらレベルが割りと早く上がったんですよ。道具から攻めてみるのもありかもしれませんよ」
「なるほど、興味深い。ガズズの奴にも相談してみるか。魔力を使いやすくするダンジョンアイテムをすぐに調べさせよう。いや、道具に絞る必要もないな。薬関係も併せて調べてみるか……」
「あ、あの、そろそろ僕は戻らせてもらいますね」
「うむ、何か発見があったらすぐに報告するのじゃぞ」
「はい、ではまた参りますね」
さて、戻ったら何をしようか。魔王様にキメラに有効な魔法かスキルをとか言われた気がするけど、言われて出来るものでもないんだよね。ということで羽を伸ばすか。
少し気になっているアイテムがあるんだよね。新規上級魔法習得特典として入手した『ダンジョンパスポート』。これって、僕もみんなみたいにダンジョンの外出が自由になるんじゃなかろうかと思っている。
まさかのポイントクリアからの転送でゆっくり考えている時間もなかったからね。とりあえず戻ったらピースケに相談しよう。
それにしても一ヶ月くらい滞在していたかのような濃さだったな。
「これは神様がくれた休みに違いないね。旅行とか温泉とかいいかも」
「あらっ、ハネムーン旅行かしら」
「旅行いいねっ! ん? ハ、ハネムーン!?」
いつの間にかピースケの家の近くまで来ていたようで、門の前ではティア先生がお出迎えしてくれていた。
「ティア、ハネムーンは結婚した後に行くんじゃないかな」
「じゃあ、デートなのかしら?」
……そういえば、ティア先生と房総半島に花を見に行く約束をしていたのを思い出してしまった。熊本からの帰りがヘリコプターだったからすっかり忘れていたな……。
「みんなでゆっくりお出掛けしようか。前に話していた房総半島の花畑を見に行こうよ」
「花畑? そんな話していたかしら?」
「い、いや、ほらっ、食用の花びらで握ったお寿司があるって話したでしょ!」
「あぁー! 食べられる花のお寿司ですわね。思い出しましたわ。どうせなら温泉があるところがいいですわ。本格露天風呂付き豪華ホテルにしましょう。とても楽しみですわ」
食べ物で思い出すあたりはさすがティア先生というべきか。
それにしても、ダンジョンで温泉風呂に慣れたせいか実際の温泉に興味が湧いたのかもしれない。豪華ホテルか。たまにはパーッとお金を使ってしまうのもいいかもね。レイコさんにエディ経由でまるっとお願いしてもらおうかな。
こうして、一週間ばかりのバカンスを夢見て僕たちは『千葉ダンジョン』に戻ったのだった。
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