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第14章 15話

雷鳥(サンダーバード)さぁん! カムバァックっ!」


 ドガァァァァァン!!


 ズガァァァァァン!!


 キュルルー キュルルー


「あぁ……更に酷いことになってしまった……」


 いったん船底を壊して海中に入った雷鳥(サンダーバード)さんが船を壊しながら地上に出てきた。船は半分に折れ浸水の勢いは増すばかり。


「若干手遅れな感があるけど凍らせてこれ以上の浸水と沈没を防がなくてはって……なっ!」


 その時だった。危険を察知したのか何体かのキメラが積み荷を破り甲板に上がってきていた。


 キシャアァァァァ!!


「えーっ! 外に出れるの!?」


 キュル!? キュルル!?


「ちっ! 雷鳥(サンダーバード)さん解除っ! やはりここにいたのか、ジルサンダー」


 あらゆることが後手に回ってしまった。


 甲板に上がってきたキメラ達はちょうど目の前にいた雷鳥(サンダーバード)さんを吸収していたのだ。何体かのキメラは背中が盛り上がり翼が生えている。ここにきて更に進化するとか……。


 そして他の個体とは一回り大きく真っ白なジルサンダーは瀕死のメルキオールを咥えている。


「ジルサンダー、何故そいつを助けようとしているのかな?」


 グルグルゥー、グルグルゥー


 もちろん喋るはずはなく、何をグルグル言ってるかもよくわからない。メルキオールに対して仲間意識を持っているのか? 配合で生まれた世代にダンジョンマスターへの忠誠心はないと言っていたはず。自らの意思か、それとも誰かしらの指示なのか。




 その時、倉庫のある方から声が聞こえてきた。船員達の阿鼻叫喚の声ではない。


「おいっ、離せ! メルキオールはどこにおる。そこをどけっ! おいっ、船が!? 船が傾いているではないかっ! い、一体どうなっているのだ」


「静かにしてください。あなたを守る人はもういませんよ。おとなしく出来ないなら闇の門(シャドウゲート)の中に入って頂きます」


 陸の方ではカミア王子と思われる大きな声が響き渡っていた。カイトさんに捕らえられた後も港にいるメルキオールに最後の期待を寄せていたのだろう。カイトさんの落ち着きのある言葉も続けて聞こえてきたので少し安心できた。おそらくアモナ姫も確保しているはずだ。




「ならば、僕は僕の役目をしっかり全うしよう」


 目の前にはその数を徐々に増やしていくキメラ達。


 スキルエレメント『風人』、炎剣(レーヴァテイン)(かい)雷切(らいきり)


 考える時間を与えずにどんどん斬っていこう。


 ザッシュ! シュバッ! ズシュッ!


 いきなり姿が見えなくなったこともあり、戸惑うキメラを斬り、突き刺しては数体仕留められたのだがやはり臭覚が鋭いようだ。


 あっという間に散開するとジルサンダーを後ろに庇うように陣形を組み直した。


「やはり知能が高いのか? どんどん倒していかないとねっ!」


 キメラが目で追えないようなスピードと切れ味に特化した魔法。疾風(ウインド)より圧倒的に速く、吸収させる隙を与えない。すれ違い様に切り裂く。切られたことに気づかないぐらいのスピードでね。まだ試したことはなかったのだけどこの状況にはピッタリだ。


 風の中級魔法 鎌鼬(スピードスター)


 三日月状の風魔法が複数回転しながらキメラの尻尾に狙いを定めて切り落としていく。


「しかし、キメラかなり増えてきてないか?」


 次から次へとやってくるキメラ。積み荷から仲間を助け出しているのかもしれない。


「タカシ様、助太刀いたしますわ!」


「ティア! 助かるよ。アモナ姫は?」


「カイトとレヴィが見ています。大量のキメラがアモナとカミアを救い出そうとする動きをみせていましたが、全部返り討ちにしていますわ」


 やはり助け出す人をちゃんと認識しているのか。


「ティアは尻尾を切ったキメラをどんどん倒していってくれるかな」


「えぇ、了解ですわ。ところで、あの白いのは逃がしていいのかしら?」


 メルキオールを咥えながら空を飛んで逃げるジルサンダー。既に結構遠くまで行ってしまっている。


「あの逃げ足の速さと気配の消し方は何なんだ……。僕は奴を追いかけるっ!」


「ちょっ、タカシ様! あれっ!」


 ティア先生が指差した方向には、まるで身代わりになるかのように数で邪魔をしてくるキメラが身構えていた。ジルサンダーの後を追うように、そして遮るようにして立ちはだかるキメラ。その数はおおよそ100体以上を超えていた。


「ちっ、これじゃあ届かないか」


 鎌鼬(スピードスター)×10


 新魔法で切り裂きながら二人で追いかけるも、体を張って邪魔をするキメラを前にして遂にはその姿が見えなくなってしまった。

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