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第14章 13話

 さて、これで近衛兵の格好は完璧だ。僕はタカシ君と別れた後すぐに近衛兵の制服と装備に着替えると、それっぽく動き回る振りをしながら様子を伺っている。


 スキルは継続しているので、すれ違う人もこの慌ただしさの中と相まっては誰も気にする様子はなさそうだ。みんな外が、いや水竜が気になっている。外を気にして内側が見えていない。


 しばらくすると大きな音と振動がゆっくりとこちらに向かって近づいてきているのがわかる。おっ来たね、ティアさんとレヴィさんだろう。


 さて、そろそろ広間に戻って男爵達の動きを見ておこう。僕の予想では彼らも自らに危機が迫れば秘密の抜け穴を使ってでも逃げるであろうと読んでいる。動かないならそれとなく男爵に近づいて自尊心を傷つけない程度に進言してもいい。


「何っ? ドラゴンがこの館に近づいているだと!?」


「ちっ、街に住んでる奴らが集まって来ているせいであろう。近衛兵達は一体何をしているのだ!」


「ミクロ男爵、エレモ男爵、このままではこの館は危険でございます。外のドラゴンは近衛兵の手に負えません。早くここから退避しましょう」


「なんだと! あの数の近衛兵がいて対処出来ないというのか。エレモ男爵、ど、どうしますか?」


 その時、館の外壁が凄まじい音とともに崩れ去っていった。床は揺れ壁は軋み埃が舞っている。そして、崩れた壁があった場所を見るとその視線の先には口を開けたドラゴンがいた。


「ひぃっ! ミ、ミクロ男爵、この館はここまででしょう。わ、我々もカミア様の後を追って逃げるのです! 街の者を犠牲にすればまだ時間は稼げる」


「お、お前たち10名は我々に付き添い抜け穴に向かえ。その他の者はあのドラゴンをどうにかしろっ!」


 予定通り、男爵の側に控えていた僕はまんまと10名のメンバーに選ばれ秘密の抜け穴へと向かっていった。



◇◇◇◆◆



 それにしてもまさか、空を自由に飛べるようになるとは思わなかった。スキルエレメント『風人』のお陰である。普通に空を飛んだらきっと風圧で目を開けるのも大変だろう。あと絶対寒いと思うんだ。


 しかし、このスキルエレメント! 息をしなくてもよければ、目も開けっぱなし、風圧でドライアイにもならない優れもの。通販だったら即完売間違いなしだろうね。


「もう港が見えてきたぞ。問題は避難場所の選定か……」


 港ということもあってか周辺には倉庫が立ち並んでいる以外には特にこれといった建物は見あたらない。


 港には大型船と漁船と思われる船がいくつか停泊している。避難場所も何もないな。可能性があるとしたら倉庫のどれかということだろう。


 大型船では、船長? っぽい人が偉そうに船員に指示を送っている。大きな荷物を次から次へと船に積み込んでいる最中だった。


「あの船長、どっかで見たことある気がするんだよなぁ……」


 気になった僕はそっと船長に近づいて顔を覗きこむ。この嫌らしい目付き、横柄に指示を飛ばす態度。こ、こいつメルキオールか!? ピースケの家の門を躊躇いもなく破壊していた嫌らしい顔を思い出した。


 ということは、カミア王子はここには避難場所として向かっているのではなく、そのまま逃走しようと考えているのかもしれない。


 ティア達が来るまでに船の中をチェックしておくか。いきなり水竜が二体飛んできたらメルキオールがどんな行動をするかもわからない。エンジンルームか船底に仕掛けをして逃げられないようにはしておこう。


 積み込んである荷物も怪しく動いていたり、唸り声まで聞こえてくる。これ絶対キメラだよね。そうなるとジルサンダーもここにいる可能性が高い。この船にいるキメラが全てであることを祈りたい。


「エンジンルームはここかな……おっ、発見」


 キメラやら他の荷物を積み込んでいるからなのか船内は人も少なくエンジンルームには誰もいなかった。


「大きな音をたてずに壊したいな。どうするか……いや、別に今壊さなくてもいいのか」


 雷鳥(サンダーバード)


 キュルルー、キュルルー


「あっ、静かにしてくれるかな? 君はしばらく音を立てずにここに待機ね。僕が指示を送るか、誰かに見つかった場合にこのエンジンを壊すこと。 オーケー?」


 ピカピカ光りながら黙ってコクコクと頷く雷鳥(サンダーバード)さん。とっても便利だ。


「あと、エンジンルームを壊した後は船底を突き破って出てくるんだよ」


 これで問題なしだな。そろそろティア達が来るかもしれない。もう船を出るか。

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