第14章 11話
目立つ水竜から人型へと変身を遂げた満足顔のティア先生とカイトさんを闇の門から出すレヴィ。
「早くアモナなんちゃらを探して戻りましょう! 空をババッと飛んで!」
「や、やっぱり帰りも乗らないとダメなの?」
「その方が圧倒的に気分が乗りますわ!」
「そ、そう」
「お姉さま、一応ここからは隠密行動になりますから静かにしてくださいね」
「あれっ、海? えっ、ここは何処ですか?」
カイトさんがパニクるのも致し方ない。まさかすでに街を通り過ぎていたとかは想像出来なかっただろう。
「カイトさん、ティアが調子に乗って街を通り過ぎちゃったんですよ」
「あぁ、そういうことでしたか。目の前に海があったので、ちょっとびっくりしましたよ。では、シャルビーまではそんなに離れていませんね」
「カイトさん、ここからの移動はどのようするのですか?」
「はい。シャルビーまでは私のスキルで進みますので、お二人には私の闇の門に入ってもらいます」
昨日カイトさんのスキル『忍び足』について伺ったのだけど、このスキル発動中は気配と足音を消すことが出来るという。僕が求めてやまないスキルがここにあった。
「お兄さまは入らないのですか?」
「うん、僕はカイトさんと共同作業をすることになってるんだ。シャルビーに着いたら例の作戦を行うからよろしくね」
「はい、また水竜になればいいのですよね」
「しっかり暴れますわ!」
「うん、やり過ぎないように頼むよ」
頷きながらカイトさんの闇の門に入っていく二人。ティア先生を見ているとたまには水竜に戻って飛び回ってもらった方がストレス発散に繋がるのかなとか思ってしまった。こっちの世界ならそんな問題になることも無さそうだし、文字通り羽を伸ばしてもらうのもいいのかもしれない。
「じゃあタカシ君行こうか」
「えぇ、行きましょう」
ここからシャルビーまでは周囲を気にしながら走って進んでいく。それなりに二人ともレベルは高いのであっという間にシャルビーに到着できるだろう。作戦開始は街に到着してから始める。
これからの作戦はカイトさんと僕のスキル重ね掛けを行う。
最初に僕がスキルエレメントで『風人』となり息を吸わなくても大丈夫な体になる。更にカイトさんと手を繋ぐとスキル『透明化』を発動。そこにカイトさんのスキル『忍び足』を併せることでパーフェクトな隠密行動が可能となった。
二人が組めばタカモトさんにもあっさり勝てるだろうし、お風呂だって覗き放題だ。最強コンビが誕生した瞬間だった。
「カミア王子が本当に裏切っていたとしたら魔王様もピースケも悲しむだろうな」
「もしもそうなら魔王様も任命責任を問われる可能性がある。内密に処理する方向で動こう」
「なるほど、了解です。カイトさんはシャルビーの街は来たことがあるんですか?」
「ありますよ。王族が滞在する館も知っています。そんなに大きい建物でもないですし、探し始めればすぐにわかるでしょう」
「探す場所とかはカイトさんにおまかせしますね」
「それにしても、タカシ君の麻酔ガスの風を使えばあっさり一網打尽に出来るんだけどね」
「昼間ですから無関係な街の人を巻き込むことになってしまうし、何よりカミア王子が白だった場合に不味いですからね」
「それを言ったら、水竜の襲撃ってプランもどうかと思うけどね」
「大丈夫です。うちのボスモンスターとは一切関係のない、はぐれの水竜だと言い張りますので」
「まぁ派手に暴れてもらった方が、僕らは探しやすくなるから構わないんだけどね。アモナ姫がいればあわてて連れて逃がすようにと動き出すだろうからさ」
「それなら頑張って探さなくても楽に発見出来そうですね」
話をしながら走っていると、シャルビーの街が見えてきた。思っていたより小さな街のようだ。
「タカシ君、ここら辺でいったん止まりましょう」
「作戦開始ですね」
「ティアは南側の門を、レヴィは北側の門を押さえるようにしてね。魔族の人達は逃がしてもいいけど、怪しい積み荷やアモナ姫を発見したらすぐに確保してね」
「お任せくださいタカシ様」
「お兄さまもカイト様もお気をつけください」
「じゃあ、作戦開始!」
これから小さな街に急に訪れた水竜の襲撃による大パニックが始まる。
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