第14章 8話
「王族のスキルっすか。カイトの私見とやらを聞かせてほしいっす。もちろん答えられないこともあるっすからその点は勘弁してもらいたいっすよ」
「それで充分です。私たちがなんとなく知っている魔王様のスキルはこの魔王城を囲う広範囲鉄壁の防御と訓練所等における一定空間における超回復です」
「そうっすね」
「そして、これらのスキルは継承可能であると。私は王家に流れる血がこれらのスキルを継承できうるのではと考えております。一時期、公爵家から王を迎えた際に婿殿ではなく血の繋がりのある姫君が女王として即位されたとの文献が残っております」
「続けるっす」
「スキルが防御と回復に特化しているのは、子作りや出産といった王族として重要な跡取りを残す行為の負担軽減に繋がっているのではと推測しました。そう考えるとアモナ姫が誘拐された理由にも納得がいくのです」
「でもカイトさん、スキルは継承しないと使えないんですよね?」
「そうですね。アモナ姫にスキルを使えば異種配合で何度も出産が可能かもしれません」
「えっ? 魔王様がアモナ姫にスキルを使うとか、それはさすがにないでしょ」
「えぇ、それはないでしょう。現時点で欲しているのはアモナ姫の卵子ではないかと考えています。異種交配に使えばスキル継承可能なキメラが大量に作られていきますから」
「いや、だからスキル継承は王族でしか行われないんですよね?」
「例えばの話ですが、もしもカミア第一王子が即位後に魔族を裏切って人族側についたら? いや、カミア王子にお子様がいらっしゃることを考えたらスキルの継承はもう終わっている可能性があります。今現在は王族のスキルが二人使える状況なのではないですか?」
「つまり、どういうことですか!?」
「私の仮説通りだとしたら、恐ろしいことに魔王様のスキルが大量のキメラに引き継がれることになります」
「いや、全然わからないですって!」
「カミア王子がアモナ姫の卵子で産み出されたキメラにスキルを継承します。そのキメラが次のキメラに継承、また継承、また継承と永遠に増え続るとしたら」
「そ、そんなことが……」
「さてピース様、ここまで私の推測は如何でしょうか?」
「なかなか興味深い話っすね。この話を父上には?」
「しておりません。ほぼ無いとは思っていますが、最悪のケースで魔王様が裏切っていた場合はその時点で私が終了ですからね」
「父上が兄貴にスキルの継承を行ったのは事実っす。そして父上と兄貴の二人が王族のスキルを使用できるのも事実っすね。兄貴が関わっているとはとても考えられないっすけど可能性があるというのが悲しいところっすね」
「ピースケ、カミア王子は今何処に?」
「戦争が始まってからは念のため父上と離れて家族と配下の兵とともに北の街へ行ってるっす」
「それはスキル継承者を万が一の事態に備えて離したということだね」
「そうっす」
「とりあえずクリメニア伯爵がどこまで話をするかによって状況が変わってくるね。いや、もしもカミア王子が関わっていると仮定するなら口封じに消される可能性もあるんじゃないの!?」
「ふぅ、この仮定話を父上にするのなら自分が言うしかないっすね。マスター、すぐに戻って父上のところへこの話をしてくるっす」
あの娘大好き魔王様が黒幕ってことはちょっと考えにくいし、まぁピースケを一人で行かせても大丈夫だろう……。
「ウンディーネ、念のためピースケの警護に同行してもらいたいんだ」
ティア先生の胸の中でウトウトし始めていたウンディーネが、ぽけーっとしながらも頷くとピースケの頭の上にフワフワと移動してきた。眠そうなところ悪いけど頼むね。
「マスター、すまないっすね」
「いや、気をつけてね」
「了解っす。あとカイトも動きがあるまでうちで寝泊まりすることをおすすめするっす」
「そうですね。敵の目的や理由がはっきりするまでは行動を共にした方がよいかもしれませんね。おそれいりますが、よろしくお願いします」
「ミル、カイトの部屋の準備もよろしく頼むっす」
「はい、かしこまりました。お気をつけくださいませ」
さて、今夜はカイトさんと親交を深めながら子供たちにスイムーの絵本でも読んであげよう。ピースケはお仕事だからね。子供たちというのはピースケの二人の子供とヨルムンガンドちゃんだ。ピースケの子供たちについてはまた今度あらためてご紹介しようと思うが、名前はお姉ちゃんのキュレイナと弟のピストワールだ。
関係ないけどスイムーの絵本はヨルムンガンドちゃんお気に入りの黒い小さな魚が大活躍する絵本である。
カイト(ダンジョンマスター)
レベル62
体力480
魔力460
攻撃力280
守備力290
素早さ490
魔法:全属性初級、風属性中級
スキル:忍び足レベル2
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