第14章 6話
僕たちは取り調べが終わるまでピースケの家で待機することとなった。いろいろと心配ごとが重なってしまったが今は待つしかあるまい。
「マスター、アモナのことは心配っすけど焦ってもしょうがないっす。休息も必要っすよ」
「……そうだね。そういえば、カイトさんがシトラスのマスターの情報を持って来てくれるんだよね」
「シトラスのマスター、メルキオールっす」
メルキオール……奴とアモナ姫が一緒にいるのだろうか。奴の目的は何なのだろう。クリメニア派の貴族にも再度、捜索の手が入っているとのことだがキメラに関わる情報はあがってきていないとのこと。
「キメラとアモナ姫の関係性がわかれば何か進展がありそうな気もするんだけど、ピースケ何かわかることない?」
「さっぱりっすね。どちらかというと誘拐の可能性の方がわかりやすいっすけど」
「シトラスのアモナ姫への執着を見ると婚姻以上の何かを感じてしまうんだよね」
「タカシ様、ミルさんが紅茶を用意してくださいましたわ。アッサムティーですのよ」
「ありがとうティア。ミルさんもすっかり我が家のように寛がせてもらって申し訳ありません」
「いいえ、急に賑やかになってとても楽しいのですよ。ヨルムンガンドちゃんを見てるとまるでピース様との間に子供ができたみたいで想像力が溢れてもうビシャビシャですわ」
「ビシャビシャですか。そ、それはよかったですね」
何がビシャビシャ溢れているのかはよくわからないけど深く聞かない方がいいだろう。きっと母性が凄いことになっているのだ。ピースケ、早く子供を作ってあげてね。
そして、何故かおとなしくお世話されているヨルムンガンドちゃんは五歳児なりに空気を読んでいるのかもしれない。あとで遊んであげよう。
「ヨルちゃん、ほら、お口にジャムが付いてる。フフッ、おかわりはまだいっぱいあるからね」
ミルさんお手製のスコーンにジャムをのせて食べさせられているヨルムンガンドちゃん。なかなか愛らしい姿をキープしている。その隣ではウンディーネが自分と同じくらいのサイズのスコーンに悪戦苦闘しているのが見える。何というか平和だ。
「タカシ様、このアッサムティーの茶葉はゴールドの茶葉が含まれていてとても番付の高いものなのですわ」
「あっ、本当だ。この白っぽく見える茶葉がそうなの?」
ガラスポットでジャンピングしている茶葉の中で白っぽく見える茶葉が含まれているのが見える。
「はい。これが多く含まれているほど深い味わいになるのですわ」
「大切な茶葉を用意してくれたミルさんに感謝しなくちゃね」
「はいっ。そろそろ蒸らし時間もいいですわね。レヴィ、温めていたティーカップを持ってきてちょうだい」
「はい、お姉さま」
レイコさんも焼き上がったばかりのスコーンを持ってきてくれている。やはりみんなと寛げるこの日常が気を休めさせてくれる。『千葉ダンジョン』に早く戻りたいと思ってたけど、場所ではなく人も重要なんだよね。
「ピース様、カイト様がいらっしゃいましたが如何いたしましょうか」
門番から話を引き継いだメイドさんがカイトさんの来訪を告げる。
「ちょうどお茶の用意ができたところっす。こちらに通してもらいたいっす」
「かしこまりました。お連れいたします」
意外と早く会うことができたね。
「どうぞ、こちらでございます」
メイドさんに案内されて入ってきたカイトさんは優しそうな柔らかな表情をした好青年といった感じの方だった。
「どうもはじめまして、カイトです。ピース様、お初にお目にかかります」
「気楽にしてほしいっすよ。こちらに座ってくれっす。ちょうど紅茶とスコーンを用意してたところっす」
「はい。お言葉に甘えさせていただきます。君がタカシ君かな?」
「はい、はじめましてカイトさん」
「手紙読ませて読ませてもらったよ。何というか、こんな縁もあるんだね。第一世界では最大限タカシ君とピース様の力になることを誓いましょう」
「はい僕も同じくですよ。あと、第三世界で『新潟ダンジョン』の三人の力になることを誓います」
「ありがとう。『ゲリュオン』が転生してたなんてびっくりしたんだ。またいつか会える日を楽しみにしてるよ」
「時間はまだちょっと掛かるとは思うけどわりかし安全にポイントを稼いでいるから安心していいですよ」
「それはよかった。じゃあ、メルキオールについての話をしよう」
新作、「冒険の書を拾ったら異世界に飛ばされたので無難にセーブしながら進んでみる」の投稿はじめました。
下のリンクから見れますのでよかったらブクマよろしくお願いします。
圧倒的弱者が死にそうになりながらも(たまに死ぬ)ギリギリのところでセーブとロードを繰り返して、無難に(本人的に)乗り越えていく異世界成長ファンタジーを目指してます。




