第14章 5話
「それで、クリメニア伯爵邸が全焼したと……」
ため息を吐きながらディラン宰相が頭を抱えている。
悪いのはジルサンダーであって、キメラを造り出したクリメニア家が全部悪いということでいいんじゃないだろうか。
「クリメニア伯爵。何か言いたいことはあるか? このままならお主の死刑は免れぬぞ」
「魔王様、まずはこのような泥棒紛いの侵入をし、我が屋敷を全焼させた悪人をお裁きいただきたい。まさか悪人の話を真に受ける訳ではござりませぬな」
「そうか。タカシ、例のやつを用意しろ!」
「はい。かしこまりました」
アモナ姫の行方が未だにわからないため魔王様のご機嫌はすこぶる悪い。ちなみに僕が用意しているのはスマホと白い壁に映し出すプロジェクターだ。
映像はもちろんクリメニア伯爵邸の地下実験室と、ガラスケースに入ったジルさん。そして逃げるように飛び出してきたジルサンダーが映し出されていた。
「この白いキメラがいる場所はお主の屋敷の一階で間違いないであろう。趣味の悪い絵画が飾っておるのがよく見える」
「このような映像を信じるとは魔王様もかなり子爵殿に肩入れされているご様子。確かに我が屋敷に似ているようですが、これは本当に我が屋敷なのかな? なぁ、シトラスよ」
「そうですね、父上。最近模様替えしたばかりなので全然雰囲気が違いますね。それに我が屋敷の地下は倉庫であって実験室などありませぬ。どちらにしろ誰かのせいで全焼してしまったので証拠も残っておりませぬが」
「魔王様、遺憾ではこざいますがそこにいる子爵殿に我々への謝罪と屋敷の弁償、そしてアモナ様との婚約解消を提言致します」
「ほう」
「父上のおっしゃる通りです。やはりアモナ様との婚約は歴史があり信のおける、家格の釣り合う家と結ぶべきでしょう。例えばクリメニア伯爵家のようなね」
「つまりは映像に映っていた実験室も無いということか」
「はい。全く手の込んだ仕込みをしたものですな」
近くに控える近衛兵に向かって指示を出す魔王様。いやらしい笑みが見え隠れしているぞ。
「おい、クリメニア伯爵邸の調査状況を伝えよ!」
「はっ! 子爵様の氷の魔法がまだ溶けておらず確認は出来ておりませんが地下施設は無事とのことでございます」
「そうか、では氷が溶け次第調査を進めるように」
「はっ!」
「さて、クリメニア伯爵よ。何か言いたいことはあるか? このままならお主の死刑は免れぬぞ。今ならアモナとシトラスのマスターの居場所を話すことで減刑を考えてもよいぞ。キメラについても詳しく話してもらおうか」
悔しげに見つめてくるクリメニア伯爵とシトラス。全く、僕を睨まないでもらいたい。
「調査が進むまでクリメニア伯爵及びその息子シトラスを監禁する。引っ捕らえよ!」
それにしても、アモナ姫とジルサンダーの行方が気になる。あれから雷鳥からの連絡はない。レベルが上がってるけど何をしているのだろう雷鳥……。ちゃんと仕事してほしい。
「タカシよ、アモナが無事に戻ってくるまでこちらに残って助けてもらえないか」
「はい、それは構いませんけど。僕よりもタカモトさんの方がよいのでは?」
「タカモトは今、リズという者と公爵家に同行しておるだろ。そもそも奴は力はあるのだが細かい作業や偵察、斥候等の任務に圧倒的に向いていない」
「そうですか……」
「一応、その道に特化した人間をつけよう。『戦略と戦闘についての研究』グループにカイトという者がおる。お主と同郷の者だ。クリメニアから情報をとれ次第作戦に入る。お主の雷鳥についても情報が入り次第連絡をしてくれ」
「かしこまりました」
「では、しばらく休んでおれ」
まさか、ここでカイトさんに会えるとはね。手紙は読んでもらえただろうか。こんなんだったら三人の写真でも用意しておけばよかった。
こっちの世界に『てんとう虫』さんと『菜の花』さんを呼べたらクリメニア家の情報は全部手に入るのだけど、ボスモンスター以外はダメらしいからね……。まぁしょうがないか。
あっ、またレベル上がったな。
タカシ(ダンジョンマスター)
レベル77
体力830
魔力1740
攻撃力390
守備力395
素早さ392
魔法:水、土、闇、光属性初級、火、風、氷属性中級、雷属性上級、特異属性
スキル:魔力操作レベルMAX、痛み耐性レベル1、透明化レベル1、エレメントレベル1
新作、「冒険の書を拾ったら異世界に飛ばされたので無難にセーブしながら進んでみる」の投稿はじめました。
下のリンクから見れますのでよかったらブクマよろしくお願いします。
圧倒的弱者が死にそうになりながらも(たまに死ぬ)ギリギリのところでセーブとロードを繰り返して、無難に(本人的に)乗り越えていく異世界成長ファンタジーを目指してます。




