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第14章 4話

「ちっ、どこにいった!?」


 同じようなガラスケースが立ち並んでいる風景は一転して身を隠しやすい場所へと変わってしまった。


 キシャアァァァァ!!


「あぁ、お前もいたんだよな。ごめんごめん、もういいよ」


 炎剣(レーヴァテイン)改雷切(かいらいきり)


 ザシュッ!


 尻尾にさえ気をつければよい。

 スピードはまだ僕の方が速い。


 そう、まだ速いんだ。このキメラ達が外に出て魔力を体に取り込み続け、更に成長していくと手がつけられなくなる恐れがある。


 ここにいたのが全部ならよいのだけど既に外に出ていたとしたら。……ちょっと嫌な感じしかしない。今はとにかく、ここにいるキメラを全滅させないとだね。


 とはいっても残るはジルサンダーのみ。あの白い巨体は目立つはずなんだけどな……。妙に気配を消すのが上手い。


 とりあえずは出口を塞ぐべきだね。実験室の奥に外へ出る扉や窓は見当たらない。隠し扉とかあったらお手上げだけど生まれたばかりのジルサンダーに知るよしはないだろう。


 すぐに入ってきた扉へと向かおうとした時、外からレヴィの声が聞こえてきた。


「キャーッ! レ、レイコさんそっちに行ったわ。気をつけてっ!」


 まさか! し、しまった。もう外に出ていたのか!


 急ぎ向かうと、一階の階段を中ほどまで登った辺りにジルサンダーがいて、それを見上げるようにしてレヴィ達が追いかけようとしていた。


「お兄さま! 残りは?」


「あとは、あれだけだよ! あっ!」


 ジルサンダーはふと目線を横にずらすと口から火の玉を豪快に吐き出した。僕たちを狙っているのではない。この場から自分が逃げるために考えて行動しているようだ。


 壁をぶち破って爆発し隣の部屋が燃えていく……。


「レイコさん、消火を頼む!」


「は、はいっ」


 このままでは、寝ている人も起きてしまう。いや、火事になったらそれどころではない。ここで働いている人達の人命救助を優先しなければ……。


 随分と面倒くさいことをしてくれるじゃないかジルサンダーくん。


「レヴィ、このキメラの尻尾は魔力を吸収して成長する。尻尾に気をつけながら魔法を使わずに肉弾戦で!」


「そ、それでこんな大きくなってるんですね。あっ、またっ!」


 ジルサンダーの火の玉が止まらない。逃げながらそこら中に火の玉を吐きまくっていた。レイコさんを見ると諦めに近い表情を浮かべ首を横に振っている。


「っ!……人命救助優先で!」


 すぐに頷いたレイコさんがジルさんを闇の門(シャドウゲート)に包み込むようにしまうとすぐに走り出す。


「レヴィ、あいつをとにかく屋敷の外に出そう! このままだといろいろとまずい」


「はいっ!」


 スピードならうちでもトップクラスのレヴィ。ジルサンダーを猛追すると、あっという間に追いつき蹴り飛ばす。ジルサンダーは二階の窓を突き破りながら外へと放り出された。


「レヴィ、ナイス!」


 あとは外で一気に仕留める。


 僕たちもすぐに窓を突き抜けて飛び降りたのだが、そこにジルサンダーの姿はなかった。またしても姿が消えてしまっている。


「お、お兄さま。見当たりませんっ!」


「ジルサンダーめ、あんな目立つ姿をしてるくせに気配を消すのが上手すぎる」


「ジルサンダー、ですか?」


「あー、奴の名前ね。気にしなくていいよ」


「お名前あったのですね」


「まずいな。早く見つけないと」


「どんどん成長してしまうということですか……」


 伯爵邸がものすごい轟音とともに一部が崩れ落ちた。崩れた隙間からは新しい火柱が一気に立ち上って燃えていく。これ以上はさすがに不味いか……。


 雷鳥(サンダーバード)×10


 白いキメラを探すように指示を出すとすぐに向かわせる。攻撃の許可は出さない。下手に吸収されても困る。発見次第その場所を教えるようにと。


「レヴィ、僕たちは救助にまわろう。伯爵やシトラスも全員助ける」


「はい、お兄さま」


 僕は燃え盛るクリメニア伯爵邸を見ながら水弾(ウォーターボール)を大量に用意し上空から雨のように落としていく。



 途中から合流したティア先生達にも救助を手伝ってもらい、奇跡的に死傷者を出さずに全員を救出することができた。


 しかしながらここまで勢いよく燃えてしまったものを消火するのは時間が掛かるようで、伯爵邸は全焼。全ての人を救助した後に地下部分を凍らせて少しでも証拠を残すのが精一杯だった。

新作、「冒険の書を拾ったら異世界に飛ばされたので無難にセーブしながら進んでみる」の投稿はじめました。

下のリンクから見れますのでよかったらブクマよろしくお願いします。


圧倒的弱者が死にそうになりながらも(たまに死ぬ)ギリギリのところでセーブとロードを繰り返して、無難に(本人的に)乗り越えていく異世界成長ファンタジーを目指してます。

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