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第13章 15話

 ゴリズのことはタカモトさんが公爵領近くまで送り届けてくれるとのことなのでソフィアさんも安心だろう。魔族で一番強い人が護衛してくれるのだ。ゴリズにはもったいないぐらいの人選といえよう。


 それにしても次から次へと問題が山積でなかなか『千葉ダンジョン』に戻れないのが何とも悲しい。早く戻ってのんびりだらだらしたい。



 僕がクリメニア伯爵家に到着するとすでにレヴィとレイコさんが門の近くに待機していた。空は暗く時間帯は深夜。ほとんどの人は寝ている時間だ。


「タカシさん、遅いですよ」


「お兄さま、早速ですがすぐに麻酔をお願いします」


「う、うむ」


「前回よりも少し強めでいいでしょう」


「うむ」


 レヴィとレイコさんによる、手術前の看護師と先生みたいな会話プレイを楽しみながら麻酔を疾風(ウインド)の魔法に乗せて運ぶ。


「10分ぐらい様子を見るよ」


「はい、そうですね」


 見える範囲では門番の人がぐっすり夢の中に旅立っている。前回の約1.5倍で麻酔ガスを飛ばしている。効果は抜群のようだ。


「レヴィちゃん、この魔法防ぐ方法ってあるのかな?」


「魔法で麻酔を飛ばすという概念がそもそもない様子ですので初見殺しと言えますね。ダンジョンでも効果的な魔法となるでしょう」


「こっちの世界、換気扇はあっても空気清浄機やガス警報器とかは無さそうだもんね。なるべくこの魔法はバレないように使用することにしよう」


「そろそろ時間ですか?」


「そうだね。もう十分かな疾風(ウインド)×10」


 クリメニア伯爵家に充満した麻酔ガスを風で上空に分散させていく。こんなもんで大丈夫かな。


「じゃあ、レヴィとレイコさんは二階と三階を。僕は一階から探すよ」


「「了解です」」


 門番を裏側に隠すと僕たち三人は伯爵家の捜索を行うために広いお屋敷に入る。


 ティア先生とヨルムンガンドちゃん、ウンディーネはクリメニア派の子爵邸を確認してもらっているのだがメンバー的にとても不安だ。クリメニア伯爵邸が本命とはいえ、本能的に動くメンバーなのでプラス面もありそうだが、それ以上にやらかしそうな予感がしてならない。だからこちらの捜索もなるべく早く片付けようと思う。何か問題があっても揉み消せるように。


 レヴィとレイコさんが玄関を入ってすぐ目の前の大きな階段を上がっていく。僕は右側の広い部屋から見ていこう。


 10分後、一階の階段下に集合した僕たちだったが収穫は何もなかった。伯爵と長男シトラスは寝室にいるところを確認している。


「あと可能性があるとしたら地下だね」


「地下なんてあったのですか?」


「それはあやしいですね。お兄さま、それで地下の場所は?」


「階段の裏側に」


 表から隠すように設置された地下への扉はやはり何かを隠しているように思える。


「シトラスのマスターは見なかったんだよね?」


「はい」「それっぽい方は見掛けませんでした」


「じゃあ入るよ……」


「タカシさんどうしたんですか?」


「い、いや、鍵がかかってる」


「お兄さま、エレメント化でこの鍵穴から中に入れませんか?」


「それだ! スキル『エレメント風人』」


 風のエレメントになった僕は小さい鍵穴を抜けて無事反対側へとたどり着いた。


「これはまた犯罪的なスキルのようねレヴィちゃん」


「魔法だけでなくスキルまでとは、さすがお兄さまです」


 褒められているのか貶されているのか判断に迷うところだ。二人とも、ちゃんと聞こえているんだからね!


 スキルを解除して鍵を開けると二人を部屋に誘導する。部屋からは異臭と薬品の混じりあった臭いが充満しており、そして異様な光景が広がっていた。


「う、うぇっぷ……」

 疾風(ウインド)


 レイコさんが思わず吐きそうに口元を押さえた。これはきついな……。あまりの臭いに直ぐ様換気をして空気を入れ替えた。


「こ、ここは、何かの実験室なのか……」


 見たこともない器具が並び、まるで血が壁や床に飛び散ったような痕が残っている。本物か!?


 奥へと続く通路を見ると両脇に人が一人入れるくらいのガラスケースがいくつも並んでいる。


 しかしながらそのほとんどは割れており、ガラスケースから出たばかりの生物がそのまま生き絶えたかのように死んでいる。沢山のガラス片と同様に肉片に近い死体となって。


 もはや元の生物が何だったのかすら判別できないものが多い……。何か違和感を感じる。



 レイコさんが僕の服の袖を掴む力が強まった。こ、これは……。奥に進めば進む程、形が残っている死体が多くなり一体それが何なのかがはっきりわかるようになった。


「お、お兄さま、これはゴブリンでしょうか」


「そうだね。しかも妊娠していたようだね」


「お、お兄さま! あのケースの中に人が入っています!」


 レヴィが指差した方向のケースにいたのは培養液のようなものに浸された侍女のジルさんだった。


「あ、あれはアモナ姫の侍女の!?」


 慌ててケースに向かう僕たちの後ろには物陰に隠れるようにしてこちらの様子を伺う何かが蠢いていた。

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