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第13章 12話

 僕は食事をする前にみんなに先延ばしにしていた話をすることにした。話というのはもちろんアモナ姫の行動から始まった婚約やら結婚のことで、あらためて僕の意思を伝えようと思ったのだ。


「僕はダンジョンマスターになってからみんなのことを本当の家族のように思って過ごしてきたんだ。それが親愛感情なのか恋愛感情なのか、はっきりわかっていなかったんだけど。……いや、考えないようにしていたのだと思う」


「今回の件で僕なりにいろいろ考えてみたんだけど、みんなとこれからも一緒に生きていきたい。いつも楽しく笑いあって、いっぱい話をしたい。いろんな場所にも行きたい。どんな些細なことでも思い出を共有したい。僕は、みんなを愛しているんだ。正直、まだ結婚とかは早い気がするんだけどアモナ姫と婚約することになるのなら、僕はみんなともそうありたいと思っている。勝手なのは十分理解しているのだけど、その……いいかな?」


「「「はいっ!」」」


 そう返事をすると三人が僕に抱きついてきた。あぁー、よかった……。ティア先生が泣いている。つられるようにしてレヴィもレイコさんも泣いてしまった。



「今日はいろいろとめでたい日っすね! もうお腹ペコペコっすよ」


「そうですね。みなさんが腕によりをかけて作った料理が冷めない内にいただきましょう」


 ミルさんが指示を出すとメイドさんが料理を運んできてくれた。


 この家には多くのメイドさんがいるのだが、今日は配膳のお手伝いまでにしてもらい、料理はみんなが担当してくれている。



 ミルさんが作ったミートローフはもちろんのことみんなが作ってくれた料理もとても美味しく、久し振りに心休まる時間を過ごすことができた。


 唯一の誤算はウンディーネが作ってくれた砂糖水だろう。気持ちはとても嬉しかったけど一杯を飲み干すと普通の水に変更してもらった。気を悪くするかと思ったけど、お水のおかわりでも喜んでくれたので安心した。


 ミートローフというのは初めて食べたのだけど、ちょっと似ている料理であるハンバーグとの違いは圧倒的な肉感にあると思う。ハンバーグが一人分毎に丸く焼き上げるのに対して、ミートローフは長方形にした肉の塊をダイナミックにオーブンで焼き上げるため肉汁がまるまる閉じこめられる。


「この香草が美味しさを更に際立ててますわ」


 ティア先生が言うようにオーブンで焼き上げる時にミートローフを香草で包んでいるため、その香りが燻製のように染み込んでいるのだ。


「でもやっぱりこのソースが最高っす!」


 ミルさんの作るグレイビーソースにはトマトをベースにピーナッツバターが隠し味に入っており奥深いコクを出しているのだそうだ。


「ミルさんミートローフとても美味しかったです」


「みなさんとても美味しそうに食べてくれて嬉しいです。お粗末様でした。みなさんが作られた料理もとてもお上手でびっくりしましたよ」


「お兄さま、私たちが作った料理はいかがでしたか?」


 最近、ティア先生とレヴィはレイコさんに和食を習っているそうで二人は肉じゃがを作り、レイコさんは二人の調理を見ながらヨルムンガンドちゃんが好きな鶏の唐揚げとグラタンを作ってくれた。


「味付けと染み具合がバッチリでとっても美味しかったよ。レイコさんもヨルムンガンドちゃんの好きな料理作ってくれてありがとね」


 食べすぎて眠くなってしまったヨルムンガンドちゃんは一足先にベッドに運んであげている。


「はい。ヨルムンガンドちゃんも喜んでくれてよかったです」


「私、次は煮付けにチャレンジしようかしら。レイコまた教えてちょうだいね」


「私はミルさんにミートローフの作り方を教わりたいです」


 女性チームはとても仲が良さそうで安心した。ちなみに明日アモナ姫と話し合いに行くとのことだが、ミルさんも同行してくれることになったので少しだけ安心している。


 食事も一段落し、ミルさんと一緒に紅茶を用意していたレイコさんが話しかけてきた。


「まずは女同士でお話をさせていただきます。タカシさんはアモナさんに何か伝えておくことはありますか?」


 僕とピースケは聖女様に呼ばれているのでご一緒は出来ない。なんと、その席に魔王様は参加しないらしい。とりあえず、いきなり魔王様に怒られるということは無さそうなので心のゆとりがぐんぐんと広がっている。


「さっきクリメニア家の長男がアモナ姫を探しにここに来ていたんだ。門番に止められると躊躇なく魔法を撃ってきた」


「まぁっ! 先程の大きな音はそれだったのですね」


「そうなんだ。アモナ姫に言いたいこともいっぱいあるとは思うけど、奴らは婚約が発表されたことで手段を選ばなくなってきている可能性がある。何を焦っているのか理由はこれから調べていくつもりだけど、アモナ姫にも何か心当たりがないか聞いてもらいたいんだ」


「確かにその行動はおかしいですね」

「魔王様にはピースケからすぐに伝えてもらうけど、今いる居場所を誰にも知られないように、またはすぐ移動することをおすすめするとも伝えてほしい」


「かしこまりました」


「お兄さまは捕虜になった聖女様とお会いになるのですよね。どんな話なのでしょう?」


「さ、さぁ? 心当たりが全くないかな」


「ピースケ様もご一緒にということですので、そのあたりも何か関係があるのでしょうか」


「どうだろうね。ピースケは聖女様と会ったことないんでしょ?」


「会ったことないっす。何の話っすかね」


 ピースケと顔を見合わせるが、実は魔王様からの手紙にはちゃんと内容が書かれている。しかしながら身内にも一切他言無用でとのことだったので一応みんなにも秘密にしているのだ。魔王様から判断は僕たちに任せるとのことだが、まぁ結論は既に出ている。

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