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第13章 9話

 謁見の間には一番奥の椅子に魔王ヘーゼルが座っており、その脇にディラン宰相が立っていた。壁際には貴族と思われる面々がジロリと睨みを効かせてくる。


 僕はピースケと一緒に前に進むと片膝を付き手を胸元にあて頭を下げる。全部ピースケの真似をするだけだ。こういう時の作法とかさっぱりわからない。


「頭を上げよ」


 ピースケに続いて魔王様を見上げると一瞬ニヤリと笑ったように見えた。ディラン宰相から紙を受け取り一同をおもむろに見渡すとゆっくりと読みはじめた。


「魔操、そなたを今回の戦線押し上げ並びに捕虜として慰問に訪れていた人族のソフィア聖女を取り押さえた武勲の功績を称え爵位を授ける。戦線の押し上げ状況から鑑み、子爵位が相当であると判断する」


 や、やべぇ、聖女って何だっけ。あれっ、大丈夫なのかな……。僕は回復魔法しか使ってない。僕は回復魔法を使っただけ。そうただの回復魔法だ。う、うん大丈夫。きっと乗り切れるはず。


「お、お待ちください! 魔王様」


「静粛に! 御前であるぞ!」


「よい。どうしたクリメニア伯爵」


「魔王様、恐れながら陥落間近の砦を三つと前線の補給基地を落としただけでございます。男爵位ならまだしも子爵位とは如何なものかと思われます」


「はっ! たったそれだけで」「それなら私でも楽勝でございますな」


 なるほどあれがクリメニア伯爵で太鼓持ちの二人がエレモ家とミクロ家か。


「ほう。随分と前線の状況を詳しく知っておるのだな」


「自国の一大事でございます。情報収集に抜かりはございませぬ。捕虜も偶然の手柄でございましょう。これぐらいであれば我が息子でもやり遂げたことでしょうな」


「なるほど。そうだな、もう少し詳細に話すとするか。砦を三つ落とした時間だが僅か10秒だ」


「はあぁぁ!?」「10秒!?」


「補給基地の捕虜約350名を捕らえるのに要した時間はおおよそ30分程度。その後、周辺確認のために放った魔操オリジナルの中級魔法雷鳥(サンダーバード)がさらに前線を押し上げており魔族領土の25%をあっさり回復してみせたのだが、もちろんこの情報も存じておろうな」


 ザワザワしていた貴族のみなさんが今はとてもシーンとされています。


 雷鳥(サンダーバード)さんたら、いつの間に活躍してたのでしょう。帰ってる時にレベルが上がったから何か見つけたんだろうなとは思ってたんだけど……。結構頑張ってたんだね。


「25%回復だと!?」「う、嘘だ! 誰かがフォローしたに違いない!」


「誰がフォローしたというのだ情報通のクリメニア伯爵よ。適当なことを言うでない。ついでにもう一つ言っておこう。此度の魔操の武勲に対する褒賞として我が娘アモナとの婚約をここに発表する」


「な、なんと!!」「は、早すぎますぞ!!」「こんなどこの馬の骨かわからない者を信用なさるのですか!!」


「魔族のために力を見せた者を信用せずに何を信用するというのだ。まぁ、確かに早いと言われれば早い。だからこその婚約である。魔操が更に活躍を見せ伯爵位にたどり着いた時には結婚を認めよう。クリメニア伯爵よ、悔しかったら力を見せてみよ。まだ伯爵の息子にも可能性はあるやもしれんぞ」


 魔王様がクリメニア伯爵を煽ってらっしゃる。本当やめてもらいたい。伯爵がこっちをめっちゃ睨んでる。


「今宵は戦争中ではあるが我が娘の婚約を祝して、ささやかながら立食パーティーを用意している。アモナは体調が優れぬため欠席するが、みなは興味津々の魔操と仲を深めるがよいであろう」


 なんだよパーティーって、知らない魔族のおじさんと食事とか罰ゲームとしか思えないんだけど。


 魔王様は立ち上がり、後ろの扉を開けて出て行ってしまった。ま、まさか、言い出しっぺの癖に自分は参加しないつもりか!?


「それではみな、輪舞の間にて食事を用意しておる。魔王様は聖女殿と話をされるとのことで出席はされないがゆっくり楽しんでほしいとのことである」


 せ、聖女様!? それはなんとなくまずくないか。


「ディラン宰相、わ、私も少し聖女様と話が……」


「主役が参加しないパーティーがあるか! 話なら後でいくらでもすればいい」


「い、いや、今したいなぁって……」


「いいから行くぞ!」


 ディラン宰相に腕をとられて連れていかれてしまう。


 あぁ、何事もありませんように。

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