第1章 2話
目が覚めると、簡易な木製ベッドに寝かされていて、見える範囲は岩を削りとったような天井と壁だった。
六畳ぐらいの広さだろうか。木製の扉が一つ見える。
なんだか頭がボーっとしている。
確か、洞窟に雨宿りのため入ったら奇妙な落花生に話し掛けられて、ビームを撃たれた。おー、意味がわからん。
すると、急に頭がズキッとする。
「そうだ、僕はダンジョンマスターになったんだ。侵入者を仕留めなければならない!?」
あれっ、何かがおかしい。侵入者?仕留める?何故?
また頭がズキッとする。駄目だ。今は何も考えられない。もう少し寝た方がよさそうだ。そうして僕はまた意識を手離した。
◇◇◇◆◆
落花生はベッドに横になった新しいマスターの様子をうかがっていた。
人を殺すことには明らかに慣れていない人間だったから適合者としてどうかと思ったっすが、どうやら洗脳は上手くいったようっす。
それにしても、この人間かなり良質な魔力の持ち主っすね。案内人冥利につきるっすよ。何はともあれ次に目が覚めた時には、違和感なくダンジョンマスターとして行動するはずっす。
さて、マスターのためにあたたかいスープでも用意して待ってるっすかね。
◇◇◇◆◆
次に目が覚めると、頭はすっきりとしていた。なんだかいい匂いがする。そしてとってもお腹が減っている。
「起きたっすか?なかなか目が覚めないから心配したっすよ。さぁ、あたたかいスープを用意したっす。召し上がるっすよ!」
「あー、ありがとう。あと、君にいろいろと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「何でも聞いてくれっす。自分、マスターの案内人っすから。スープでも飲みながら質問に答えるっすよ。鍋にはまだいっぱい残ってるっすからいくらでもおかわりするといいっす」
そうして落花生から差し出されたスープだけど魚介の出汁が効いていてめっちゃ美味しかった。
スープに入っている野菜も少し苦味があるが癖になる味だ。落花生のくせに料理ができるとか誰トクだよ。質問する前についおかわりをお願いしてしまったじゃないか。
ようやくお腹が落ち着いたところで少し頭の中を整理してみた。
僕はダンジョンマスターというのに選ばれてしまったらしい。また、しばらくはこの洞窟から出られないようだ。
ゲーム的なダンジョンだとすると、侵入者を仕留めポイントを貯め、よりダンジョンの難易度を高めていくってところだろうか。このあたりは確認だな。
次に一番大事なのは、ダンジョンを攻略された場合、僕自身がどうなってしまうのか。とりあえずの質問はこのあたりだろうか。
「えーっと名前はないんだったか、何て呼んだらいいかな?僕はタカシ。大石タカシ」
「マスターはマスターっす。自分名前はプリチーで素敵な名前ならなんでもいいっす。マスターが決めてくれっす」
「じゃあ、落花生だからピーナツのピースケでいいかな?」
「おー!なかなかプリチーな名前っすね。ピースケ。気に入ったっす」
「うん。じゃあピースケ、質問なんだけどダンジョンマスターの仕事内容とダンジョンを攻略された場合、僕はどうなるのか教えてほしい」
「仕事内容は、実際に使いながら覚えていった方がいいっすね。まずは、ステータスオープンと言ってみるっすよ!」
「す、ステータス、オープン」
タカシ
レベル1
保有ポイント988
体力60
魔力200
攻撃力5
守備力10
素早さ7
目の前に透明の板が現れた。これはまさにゲームだな。
保有ポイントを指で押すと召喚、交換の2種に枝分かれする。
ダンジョンマスターは保有ポイントを使って侵入者を撃退するのが仕事らしい。レベルによってロックが解除され、より上級なものが選択できるようになるとのこと。
また、ダンジョンの成長の仕方によって召喚、交換される種類も変わっていく。ここは大事なとこで、ダンジョンが攻略された場合はマスターと案内人は攻略にきた侵入者に殺されるとのこと。
ちなみにポイントがなくなってしまった場合、食料品が交換できなくなって飢え死にするから気をつけた方がいい。そうならないためにも、早くレベルを上げて難易度の高いダンジョンにする必要がある。
やっぱりかぁ。ある程度は想像した通りだな。自分の命が関わる以上、侵入者を早く殺さないとな。優先順位は防衛と攻撃力か。
交換を見たら安い日替り定食(並)が10ポイントだった。しばらくは1日1食で我慢しながら戦略を練ろう。
ちなみに魚介スープ12ポイント。
おい、落花生!お前もポイント使えるのか。