第13章 6話
目標地点の少し手前に到着すると既に全員揃っているようで既にレイコさんとレヴィの打ち合わせが始まっていた。
「あっ、やっと来ましたねタカシさん」
「お兄さまと話し合いたいことは山ほどあるのですが、まずはこのミッションを先にクリアしちゃいましょう」
「そ、そうだね。ちょっ、ティアも機嫌直してよ」
後ろ向きになり木の棒で地面にひたすらのの字を書いているティア先生はかなり哀愁を感じさせている。背中で語れる水竜である。
「……だ、第一夫人の座は譲れませんわ……」
小さな声で大きなアピールをぶっこんできた。あれっ、ティア先生自分で側室って言ってなかったっけ?
「側室はもういいの?」
「そ、それはどっかのお姫様に譲るわ」
「お姫様を側室とか殺されそうなんだけど大丈夫なのかな。その辺りはアモナ姫も含めて後でちゃんと話をしようね」
「じゃ、じゃあ、ちゃっちゃと片付けてこようかしら!」
すくっと立ち上がると一人で行こうとするティア先生を慌てて止める。
「待って、ティア! まだ作戦決まってないからっ」
みんなで作戦を話し合った結果、僕が考えていた通り周りを囲って逃げ道を塞ぎながら中心に向かって徐々に進んでいくというのは採用になった。
しかしながら攻撃手段についてはレイコさんからNGが入ったため考え直すことに。
「捕虜にとることを考えるなら一応、人道的に対処すべきです。タカシさんならギリギリ仮死状態にできるぐらいの絶対零度を撃てるはずでは?」
「いや、さすがにぶっつけ本番で無理でしょ。間違ってお偉いさん殺しちゃったら不味いし、ディランさんに怒られちゃうよ」
「電撃……はもっと危ないですね。眠らせるようにすれば……お兄さま! 疾風で基地全体に麻酔の風を飛ばすことは可能でしょうか?」
「それならサクラちゃんと魔法で遊んでた時ににやったことがあるな。大丈夫だと思う」
「それでは基地全体を囲うように魔法を発動。10分後に普通の疾風で麻酔を換気してから突入ということでよいでしょうか」
「オッケー! じゃあ、みんな二回目の魔法で突入するからよろしく」
僕一人で先に基地に潜入すると、何人か荷物を運んでいる作業員がいたけど慌てている様子もなく、砦が落とされた情報は入っていないようだ。がっつり眠ってもらおう。
「とはいえ、麻酔もやり過ぎると副作用があるかもしれない。様子を見ながら徐々に強める感じで試してみよう」
疾風! ×100
ガス状にした麻酔をイメージしながら基地全体を覆うように広げていく。
僕はその場で様子を伺うため、麻酔を吸い込まないようにエレメント化してから基地を観察をすることにした。
属性は何がいいかな。雷は試したから違うのにしてみよう。
エレメント化 風人!
体が浮かび上がり、足が徐々に地面から離れていく……。
あっ、僕空飛べるようになりました。
エレメント化面白いな。他の属性も調べておこう。闇とか光とかも気になる。
上空から基地を眺めると効果は覿面のようで外を歩いていた人達は次々と倒れていく。外は大丈夫だけど、建物の中も確認しておこう。念のためスキルを重ね透明化して地面に降りると手頃な建物を発見。倉庫っぽくないので人がいそうだ。
外側の窓から覗いてみると、床に倒れている人が数名見える。どうやら建物の中でも問題なく眠りについているようだ。威力弱めで麻酔飛ばしたけどこれで十分だったみたいだね。
数ヶ所ある建物内の麻酔が換気されやすいように窓や扉を適当に開けるとそのまま上空に上がり再び風魔法を放った。
疾風! ×100
魔法を放ったけど地味というか風って見えないから分かりにくい。つまり、ちょっと離れた場所にいるみんなには伝わってなかった。
しょうがない呼びに行くか。
「みんな! 行くよ」
「きゃっ!」「マ、マスターか!?」
驚いてくれたのはレイコさんとヨルムンガンドちゃんだけで、ティアとレヴィ、ウンディーネはまるで知っているかのようにこっちを見ていた。
感覚派のティア先生はもちろん、やはり同じ水竜のレヴィは鋭いよね。ウンディーネは精霊だから、かな??
「お兄さま、効果はどうでした?」
「うん。バッチリ。そろそろ換気されて大丈夫だろうから行こうか」
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