第13章 4話
ちょびっとだけ回復した僕は魔王様の後を少し離れてピースケとアモナ姫と一緒に追い掛ける。
「ピースケ、どこに行くのかな?」
「この方向は王城に向かっているっす。謁見の間か執務室のどっちかっすね」
「どんな話なんだろね」
「私とタカシ様の婚約についてかしら!」
い、いや僕さっきの模擬戦負けてるから。いや、一応引き分けだったか。どちらにしろ嫁にするつもりはないからね。10年後にまた会おう。
「うーん。アモナの言うこともあながち無いとも言いきれないっすね」
「そうなの!?」
どうやら目的地に着いたようで扉が開かれる。場所はどうやら魔王様の執務室。ソファーには魔王様ともう一人が座っていた。
「初めまして、私はこの国の宰相をしているディランです。タカシ殿にはこちらに来て早々いろいろと巻き込んでしまい申し訳ない」
「い、いえ、タカシです。よろしくお願いします」
魔王様は相変わらず膨れっ面で横を向いている。子供か! とりあえず話はディラン宰相が進めてくれるようなので聞こうと思う。
「先ずは順番的にアモナ姫に関しての話からした方がよいであろうな。アモナ姫には困ったもので、だんだんお母様似になられたと思っていたら性格は父親似でしたな」
「な、なんだと!」「な、なんでよ!」
シンクロ率が高いじゃないか。ピースケはもっと達観しているというか落ち着いてるからね。血が繋がっているとはとても思えない。
「ちゃんとタカシ殿に謝られたのですか?」
「う、あぅ、その、ごめんなさい」
顔を俯かせて謝る14歳の女の子。まぁ、理由次第では許してあげよう。
「よろしい。それでなのですが、タカシ殿。下着姿のアモナ姫と抱き合っていたのは多くの貴族にも話が回ってしまいましてな」
「先程の模擬戦後に抱き締め合っていたのも多くの城兵に見られておる。こうなってはアモナが嫁ぐことは難しいだろう」
「魔王様、誠でございますか……。となると最早、情報操作で何とかなるものでも御座いませぬな」
「おい、変態! お前には選択肢が二つある。アモナを辱しめた罪で打ち首になるか、ア、アモナと婚約するか選べ」
「お父様ぁー!」
喜びの声を上げるアモナ姫を冷たい目線と共に一蹴する魔王様。
「アモナ、勘違いするなよ。お前の行動は国にとって誉められたものではない。王族としての品位、意識が低すぎる。お前についている侍女もだ」
「ジ、ジルは悪くありません。私が一人でしたことです」
「二人とも謹慎だ。しばらく部屋から一歩も出さん」
ちょっと待ってくれ。打ち首か婚約だと! なんだその二択は。
「あのー、三択目を教えてください」
「ないわ!」「ないですわ!」「残念ながら」
「タカシ殿、残念ながら婚約する以外にタカシ殿が生き残る道はございません。他の貴族を納得させるためには内々で決まっていたということにして、婚約発表をするまでにタカシ殿には伯爵になってもらいますぞ」
「えぇぇー!! ピ、ピースケ?」
「馬鹿な妹っすけど、このまま結婚せずに人生を送らせるのも不憫っす。マスターになら任せてもいいっすよ」
「ぼ、僕の意思は!?」
「マスター、こっちの世界は何人と結婚しても大丈夫っす。あとでみんなとも相談したらいいっすよ。それにまだ婚約っすから安心するっす」
「みんなともって……」
「タカシ殿、ダンジョンマスターには名誉騎士の称号が与えられる。婚約を発表するにあたって男爵の上にあたる子爵になってもらう。そして結婚までには伯爵にする」
「えーっと、何故ですか?」
「変態は頭も悪いと見えるな。格が釣り合わんのだ。貴族諸侯も納得をせぬ。アモナも覚えておけ、貴族社会に少なからず亀裂を入れたのだからな」
「タカシ殿、噂はどんどん広まっておってですな。つまりですな、今日中に子爵になってもらいます」
「はあぁぁぁ!?」
「ディランよ、地図を用意せよ」
「はっ、こちらに」
机の上に広げられた地図はこの世界の物と思われる。知らない地形ばかりだしね。
「変態、タイミングよくちょうど爵位を上げるには持ってこいの戦争中でな。何を言いたいかわかるな」
「つまり、戦果をあげなさいと」
「そうだ! しかも驚くべき戦果をだ!」
「タカシ殿には最低でもこちらの三つの砦を落としてもらいたい。可能であれば敵将の首もあればあるほどよい。中にはいつでも落とせる砦もあると聞いておる」
「仲間は連れていっていいですか?」
「もちろん構わない。前線部隊にも話を通しておく。失敗は許されんのでしっかり頼みますぞ」
「か、かしこまりました……」
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