第13章 2話
スピード特化型か。苦手なんだよな。とりあえず出来ることからやらないとだね。目の前にはやる気満々の侍。斬る気満々の笑顔が憎い。
身体強化 雷鳥×3
全ての雷鳥に防御指示を与えた。
上位者相手なので上級魔法を思いっきり試してみたいけど、スピード特化型のタカモトさんに当てられるイメージはない。魔力もごっそり持ってかれてしまうのでこの後の展開を考えると得策ではない。
タカモトさんは相変わらず居合いの構え。あの間合いに入ってはいけない。距離を取りながら魔法の物量で押し込んでやる。先手必勝だ!
土棘×10
四方から魔法を放つも、軽くジャンプしたと思ったらタカモトさんの姿が消えていた……。
何処だ!?
「なっ! 影盾×2」
ザァァン!! バリバリバリッ!!
一瞬で目の前に現れたタカモトさんの居合い斬りを辛うじて発動した防御魔法でスピードを落とすことができた。勢いを落とせたことでギリギリ半身になって上体を反らしながら避けられたようだ。
ちょっ、雷鳥が反応出来てない……。
ちっ、ならば攻撃だ! 行けっ!
ザン、シャキッ! シャアン!
「ほぅ、これはかわせたか。面白い」
な、何で雷鳥斬れるの!? 涼しげな表情で当たり前のように会話を始めたタカモトさんを見て僕は慌てて距離をとった。ヤバいヤバいヤバい。
こ、これならどうだ! 周囲を魔法で埋め尽くす。
水弾×50
強酸の水弾をタカモトさんを囲うように展開する。
臭いでただの水弾ではないと気づいたようで鼻を袖で隠しながら何やら考えている様子。
「むむっ、タカシ殿この水は毒でござるな?」
「どうでしょうね。一口飲んでみますか?」
「遠慮しよう」
タカモトさんはその場で腰を屈めると自身を中心に回転し始めた。
「ちょっ、ま、まずい! キャンセル!」
タカモトさん自身が台風の目となり僕の水弾を周りに吹き飛ばそうとしていた。おいおい、これ魔法じゃなさそうなんだけどあなた超人ですか?
そもそもタカモトさんに魔法が当てられない。この状況はよくない。どうにかして避けられない状況を作れないだろうか。考えろ。考えないとじり貧だ。
「では、次は某から参ろう」
か、考える時間をくれないー。
土棘×5
魔法を撃ちながら逃げるように距離をとるがステップを踏むように軽やかに詰められてしまう。やはり広範囲魔法じゃないと当たらないか。
「考え事とは余裕があるでござるな」
ぬあ! 真後ろから声が聞こえていた。慌てて影盾を何回か放ち、這うようにして逃げ出した。
後ろを見ると影盾は全て霧散しており、こちらをゆっくり眺めるようにタカモトさんが立っていた。
こんなものか? もう終わりにしていいのか? まるでそう言っているような気がした。
レベル100超えのダンジョンマスター。滅茶苦茶強いじゃないかよ。
残念ながら現時点では僕が頑張って何とか出来るレベルではないかもしれない。死なないとはいえ死ぬのかぁー……やっぱりイヤだな。
相手は明らかな格上。そうだな、先ずは魔法を当ててみるところから始めよう。
「みんな避けてね! 魔法が当たっても知らないから。全開の~! 絶対零度!!!」
周辺は一瞬で氷の世界に切り替わる。誰も経験したことのないマイナス273.15℃の世界が広がっていく。
しかし、氷の世界はドーム状に僕とタカモトさんのいる場所だけを変えるだけに留まった。これが魔王様のスキルってやつか。
さて、タカモトさんは……
「さ、寒いでござるな。某、薄着故に寒いのは苦手でござる。タカシ殿の後ろにいれば影響は少ないと思っていたが寒いものは寒いでな」
っ!? いつの間に後ろに! 全然効いていないのか? くそっ、いつでも倒せるということか。完全に遊ばれているじゃないか……。
こうなったらぶっつけ本番だ。やれるかどうかはわからないけど、このまま負けるよりはいい。
残りの魔力全部使い切ってやる!
「スキル透明化!」
そして、スキルエレメント 雷 、 炎剣改雷切
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