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第12章 15話

 どうしてこうなった……。


 僕の隣には、ピースケと同じ金色で艶のある長い髪を丁寧に編み込んだ、とてもいい香りのする華奢な女の子がいる。華奢といってもこの女の子が着痩せするタイプなのを僕は知っている。


 ピースケの妹、アモナ姫が僕の左腕を抱えながら魔王様を真っ直ぐ見据え何故か親指を下に向けていた。


「お父様のわからず屋! 変態!」


「へ、変態……おいピース! どうやらお前のダンジョンマスターは魔族を敵に回すつもりのようだな」


 魔王様の後ろには城兵が整列しており武器を持って睨みを効かせている。ピースケは頭をかきながら魔王様と妹に挟まれて苦笑いを浮かべていた。


「父上、自分とマスターはどちらかというと被害者というか巻き込まれてるだけで関係ないっすよね? もう帰っていいっすか?」


「はぁー? 被害者だと! よくもぬけぬけと、お前もそこの変態マスターの肩を持つというのだな」


「肩を持つとか持たないじゃないっすよ」


「まぁ、まぁ、みなさんいったん落ち着きましょうよ」


「お前は黙っておれ! このスケコマシがぁぁぁ! お前はぶっ殺す。決定事項だボケェ!」


 ブゥー! ブゥー! ブゥー! ブゥー!


 城兵さんのブーイングが本気すぎて怖い。アモナ姫がかなり人気のあるお姫様だということはわかった。それにしても酷い言われようだ。もはや話の通じる感じではなく、更に僕が喋ると火に油な状況な訳で、つまり何も言えない。


「みんなひどいわ!」


 そう言って僕の左腕をぎゅっと抱き締めてくるアモナ姫を見てとりあえずブーイングは止まったようだ。目の鋭さは強まったけど……。


 うぐっ! ちっ! わ、我らのアモナ姫を!?


 とりあえず何でこんなことになっているのか説明しようと思う。




◇◇◇◆◆



 時は遡ること約一年前。


 僕とピースケがダンジョンで出会った頃、兄を心配するアモナ姫はダンジョン協会へと足繁く通い詰めていた。もちろんパラレルワールドのダンジョンを管理するモニタールームの一つを王族パワーで占領して兄の様子を見させてもらうためだ。


「ま、魔法に革命が起きてるわ!!!」


「ちょ、ちょっと! いきなりコウモリに占拠されちゃうんじゃないかしら? だ、大丈夫なの?」


「な、なんなのー!!! あんな小さい『てんとう虫』さんが無双してるわ。こんなポイントの稼ぎ方って有りなのー!?」


「このマスター今までのダンジョンマスターとはちょっと違うわね。力があるだけではなく、考え方がとても柔軟ですわ。ピースお兄様はよき方をマスターに持たれましたのね」


 気づいた時にはモニタールームの一つを王族パワーで貸し切っていて、知らず知らずのうちに目で追い掛けているのは兄ピースからタカシになっていた。


「やっぱり競争率が高いようね。ティア、レヴィ、レイコ、リリアは確定ね。タカシが鈍いのがまだ救いだわ。これは攻め落とす時は一気に攻めなきゃいけないわね」


 アモナ姫は考えた。どうすればタカシと一緒になれるのかを。それはそれは策を練った。もうすぐ15歳なので年齢的にもいつ婚約相手を決められてもおかしくない。最近、お父様の元を訪れる貴族の親子も多いので、まぁそういうことなのでしょう。


 今まではお父様の愛情が深いゆえに無理矢理先延ばしにされてきたのだけど、戦争により貴族同士の結び付きを必要とされる雰囲気をひしひしと感じる今日この頃なのです。


 そこで私は侍女のジルに協力をお願いしてタカシ様が謁見にあたり正装するために着替えをする部屋に忍び込むことに成功しました。


「アモナ様、クローゼットの中に隠れていて下さいませ。私がタカシ様を部屋にご案内しますのであとはしっかり襲って下さいね」


「だ、大丈夫よ。これは私にとって最後のチャンスなの。きっとお母様も生きていたら応援してくださるはずだわ」


「アモナ様はお母様似ですものね。では、服を脱いでください」


「え、えぇ」


「んー、下着にインパクトがありませんね。チェンジしましょう」


「へっ、いや、ジル?」


「カラーはピンク&レッドで可愛らしさと大人っぽさを演出します。武器はちゃんと使いましょうか、ブラは露出高めでいいですね。うーん、やはりガーターベルトのほうがインパクトがあります。こちらをどうぞ」


 こうして、着替え終わった私がクローゼットに待機していると愛しのタカシ様の声が聞こえてきたのです。




◇◇◇◆◆



「ま、魔王様ぁぁぁ!!! 大変でございます! アモナ姫とピース様のダンジョンマスターがぁぁぁ!!!」


 執務室で作業をしているヘーゼルのもとにノックもせずに入って来たのは宰相のディランだった。


「おい、ディラン。静かにせんか! まったくノックぐらい出来んのか」


「そ、それどころではございません。アモナ姫が下着姿でピース様のダンジョンマスターに抱きついているところを多くの者に見られてしまいました」


「はぁ? 下着姿のアモナが抱きつかれただとぉ! ほぅ、それは宣戦布告ということだな。殺ぉす! 今すぐぶっ殺すぞぉ!!!」


「い、いや、アモナ姫の方から抱きついてきたようなのですが……」


「兵を集めろぉぉぉ!」


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