表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
185/355

第12章 8話

「マスターには申し訳ないというか、今まで話せなかったことがあるっす。その何というか、条件をクリアするまでは話すことが出来ない仕様だったっすよ」


「10億ポイントのクリアがそうなんだね」


 ピースケは静かに頷くと僕の目を真っ直ぐに見てくる。なんだか重そうな話になる予感をヒシヒシと感じさせる。


「つまり、ピースケが話したくても話せなかったってことでしょ。それは別に構わないよ。それよりも今後のことの方が大事なんじゃないかな」


「そうっすね。何から話せばいいっすかね……。マスターはパラレルワールドって知ってるっすか?」


「パラレルワールド? 確かこの世界と平行して存在するifの世界だっけ?」


「まぁ、だいたいそんなイメージでいいっす。この世界はマスターが生まれた世界から分離されたもう一つの世界……つまりパラレルワールドっす」


「はっ? ちょっと何言ってるかよくわかんないんだけど!」


「本当のマスターは山登りをした後、自宅に戻って次の日には会社に出勤してるはずっす。この世界は、マスターが洞窟に迷いこんでダンジョンマスターになってしまった別の平行世界になるっす」


「えーっと、つまり僕は僕だけどこの世界は僕が生きてきた世界ではない?? ん? ダメだ理解が追いつかないよ」


「この世界も勇者やモンスタードールズがいた世界もパラレルワールドっす。我々魔族の研究によって生み出されたものっすよ」


 魔族? パラレルワールドを生み出した!?


「勇者がいた世界を第二世界、マスターのいるこの文明の発展した世界を第三世界と呼んでるっす」


「第一世界は?」


「これから行けるようになった場所が第一世界。『転送キー』を手に入れたはずっす。それでこの世界と第一世界を行き来することができるっすよ」


 話は耳に入ってくるけど全く理解出来ていない。ピースケは何のために案内人をして、その目的はいったい何なんだ?


「困った顔をしてるっすね……。自分達案内人は戦力を求めてこの世界に来ているっす。第一世界を救ってくれる救世主を求めて」


「救世主? 第一世界では何が起こっているの?」


「第一世界は魔法が身近に使われている世界っす。第二世界と近いっすね。人族との長期間に渡る争いで多くの同胞が死に、領土も土地の痩せた北の大地に追いやられたことで国も民も疲弊しているっす」


「僕達は第一世界で戦うためにダンジョンで力を得て競争させられているってこと?」


「申し訳ないっすがそういうことになるっす。パラレルワールドで生まれた魔法や技術、アイテム、そして力をつけたダンジョンマスター達が更に研究を進めたり、魔族が苦手とする戦略の指揮をとったりするっす」


 なんだかすごい話を聞いているのはわかるけど、どこか他人事のように感じてしまっている。


「ところで何が理由で人族と魔族で争いが起きているの?」


「よくある話っすよ。元々住み分けは出来ていたっすけど、人族の人口が増えたことで魔族の住む領土へ侵食してきたことが要因っす。昔から境界近辺では小さな小競り合いは有ったっすけど、あくまでも初級モンスターと村人の喧嘩程度だったっす……」


 ピースケの話によると人族側の国王の代替わりから状況が変わったらしい。


 改革派の新国王は今まで魔族と交わされていた不可侵条約の更新をせずに一方的に破棄を宣言すると翌日には大軍による侵攻を開始。モンスター達は成す術もなく殺されて残された者達も逃げるようにして森の棲みかを追われてしまった。


 モンスターのいなくなった森はすぐに切り開かれ魔族との前線基地として兵士達の休憩所として人が集まり村を形成していく。王都のスラム街対策でどんどん人が送り込まれ新国王の人気は更に高まっていったという。


「魔族側は人族に対して抗議はしなかったの?」


「もちろんしたっすよ。第三王子が話し合いをするために魔王様の親書を持って人族の国に向かったっすが、近衛兵も含め誰一人戻って来なかったっす」


「うわぁ、酷い話だね……。てか魔王ってやっぱいるんだね。一応確認だけど、モンスター達が先に人族の村を襲ったとかではないんだよね?」


「もちろんその可能性がゼロではないっす。だけど初級モンスターほど自分の縄張りからは出ていかないっすよ。自分が弱いのがわかってるっすから。稀に頭の悪いモンスターが調子に乗って村に行って殺されることはあるっすけど年に一回もあるかないかっすね」


 予想以上にハードな話と展開に頭が疲れてしまった。僕はピースケのいる世界を救わなきゃならないのか? まぁ既に知らない仲ではないので協力はしたいとは思っているが、みんなの意見も聞きたいと思う。『千葉ダンジョン』はもう僕だけのダンジョンではない。みんながいての『千葉ダンジョン』なのだ。


 正直ここまでハードな展開は想像していなかったけど、ティア先生やヨルムンガンドちゃんはともかくレヴィやレイコさんのアドバイスが欲しい。


 あとはピースケの話を真に受けてしまっていいのかってところか……。ダンジョンマスターで10億稼いだ人とか癖強そうだしなぁ。そんな人が何人もいる世界とか想像出来ません。それでも尚、追い詰めている人族の強さもね。

続きが気になった方は、ブクマやポイント評価を頂けると作者のモチベーションアップに繋がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ