第12章 6話
僕の撃った疾風は空気の成分を変更して撃ったものだ。ジョナサンが火の鳥で来るなら燃えるものを無くせばいい。
そう。酸素が無ければ火は燃えない。僕は魔力操作で酸素濃度を最小限に抑えた空気で疾風を撃ったのだ。
しかもその疾風はジョナサンの周辺のみ維持し続けた。最初は動きが早かったので苦労したけれど10秒もしないうちに墜落していった。そうか、息を吸っても酸素を取り込めないからなのか? いや、火の鳥も息を吸うのかわからないけどね。
「マスター、焼き鳥拾ってくるか?」
もう焼き鳥でもローストチキンでも何でもいいと思う。
「僕も一緒に行くよ」
百メートルぐらい先に墜落しているだろうジョナサンを探しに見に行くと少しだけ草の焦げた場所が見えてきた。
そこには、すでに火が消え去りカモメの姿に戻ったジョナサンが横たわっていた。胸の上下運動が激しい。頑張って呼吸しているのに酸素が取り込めない苦しみが伝わってくるよ。
「どうも。君がカモメのジョナサンだね?」
僕の声に反応したジョナサンはこちらを振り返ると苦虫を噛み潰したような顔を見せた。
「なんだよ燃えてねぇじゃんか。もう終わりなのか? 気合いが足りねぇんじゃねぇか」
自分が火の鳥でないことに今頃気づいたのか、何度も炎を纏おうとスキルを発動しているようで、まるでガスの無くなったライターのように火が着きそうで着かない。
少しぐらい話をさせてやろう。
土棘
逃げられないようにジョナサンの体を地面に縫い付けると、少しだけ酸素を増やしてあげた。
苦しそうな顔から少しずつ柔らかな表情に変わっていくも、こちらを見るとまた険しい表情に戻った。
「お前、お、俺に何をした!」
「さぁね。どう? 狩場にしようとしてた初級ダンジョンに返り討ちに合う気分は?」
「イ、イーグルはどこにいる! 最後に奴と少しでいいから話をさせてくれ!」
「却下。巻き戻しのスキルでも使わせるつもりかな?」
「ちょっと待て、『狩場』に『初級ダンジョン』だと。なんで知るはずのないことをお前が知っている」
「そうだな。君の『大阪ダンジョン』には残り半数10万の『ガルーダ』しかいないんだよね。うちのダンジョンでのやられっぷりを見てるとちょっと心配だね」
「なっ! 情報が漏れている……だと。ちっ、今はどこから情報が流出したかは考えてもしょうがない。俺が最終ラウンドに行くためにはお前を倒すしか選択肢がないということは理解出来た」
スキル『エレメント雷化』!
全身を雷に変化させて文字通り雷鳥となったジョナサンは先程よりも更に速いスピードで後方に距離をとった。
変化出来るのは火だけじゃなかったようだ。ヨルムンガンドちゃんから感じる視線が痛い。
「マスターは相変わらず詰めが甘いよな」
「人から話を聞くだけで判断したくなかっただけだよ。僕の自己満足の為にジョナサンと会話しただけ」
「へー。で、どうすんだ?」
「倒すよ」
雷って何に弱いのかな。全然わかんないんだけど。もういい、目には目を、歯には歯を! ということで雷鳥には雷鳥で行こう。
雷鳥×5
「二体は僕たちのガード兼避雷針代わりで残り三体でジョナサンを攻撃!」
「俺はどうすんだ?」
「そうだね、僕らも倒しに行こうか。雷鳥を防御につけているけど一応雷には気をつけてね」
「ようやくだな! 先にいくぞ! マスター」
一気に距離を詰めていくヨルムンガンドちゃん。正攻法でも強い五歳児がうらやましい。スピードは雷ジョナサンの方が上のようだが、三体の雷鳥の相手をしながらなので隙が生じる。
闇矢! 闇矢!
闇魔法攻撃は通るようだ。
「隙ありだ! 焼き鳥!!!」
闇矢をくらい落下中のジョナサンにヨルムンガンドちゃんの蹴りが入った。
ダァーン!!
「あばばばっ!!!!」
蹴るとともに感電したヨルムンガンドちゃんも一緒に落ちていく……。
心配そうに雷鳥が追いかけるが彼もヨルムンガンドちゃんに触れない。感電するから……。
ちょっ、何やってるのかな!
身体強化!
僕は急いで落下地点に向かい落ちてくるヨルムンガンドちゃんのキャッチに成功した。
治癒
「あっ、マスターごめん」
「全く、気をつけてよ」
さて、どうしようかな。魔法攻撃は通っていたよね。で、スピードがかなり速くて直接触れないと。
「ヨルムンガンドちゃん、援護頼む。次は僕がいくよ」
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