第12章 3話
『千葉ダンジョン』に戻った僕たちはジョナサンを迎え撃つ準備をしていた。入口は鋸山を使用するため、特侵隊と在日米軍には連絡して兵を引いてもらっている。
「タカシさん、ジョナサンは一人というか一羽で来るのでしょうか?」
レイコさんが気になるようで聞いてきた。まぁ、大量の『ガルーダ』が一緒に来るなら守り方も変わってくるからね。
「どうだろうね。一応、情報がわかり次第カモメ(てんとう虫)達から近くの在日米軍兵(てんとう虫)経由で携帯に連絡が入るようになってる。連絡があるまで待ってよう」
今はレヴィが高橋さんのボート小屋にて連絡待ちをしている。ちなみにだが、念のため『静岡ダンジョン』にはミクちゃん、サクラちゃん、リノちゃんのモンスタードールズが待機しており防衛に。『香川ダンジョン』にはリリアさん以下、ガルフ、フランケンが待機し、いつでも『大阪ダンジョン』に突っ込める態勢を整えている。
「そ、そうですね。なんだか緊張します。タカシさんは緊張とかしないんですか?」
「ある程度『ガルーダ』の分析とか出来ているからかな。今回はあまり緊張感とかはないんだよね。唯一、ジョナサンのことはわからないから気をつけなきゃいけないかなってぐらい」
ダンジョン内転移ですぐ目の前にレヴィが現れた。同じく外に出ていたであろうティア先生とウンディーネも一緒だ。
「お兄さま、連絡が入りました。到着予定時刻は午前11時頃です。カモメのジョナサンはダンジョンにいる約半数10万の『ガルーダ』を闇の門に隠して向かっているそうです。ですので『大阪ダンジョン』にいる残りの『ガルーダ』は約10万となりますね」
「よし、リリアさんにその情報を伝えて。僕は一応リナちゃんに連絡しておくよ。それから決戦の場所は三階層にする。ピースケ、全モンスターに伝えてくれ。プランBだ。いつも通りによろしくと」
「任せるっす!」
「じゃあ、僕たちも準備を進めよう」
「「はいっ!!」」
◇◇◇◆◆
休みなく飛び続けること約三時間。もうすぐ目的のダンジョンが見えてくる。
昨日からほとんど寝ていないまま、そして若干アルコールの残る重い体だったはずだが、ここまで飛んで来てもほとんど疲れなど感じていない。それよりも新人ダンジョンマスターに舐められた屈辱と怒りでどうにかなってしまいそうだった。
「昨日は気持ちよく祝杯をあげていたはずなのに、イーグルのアホのせいで面倒くさいことこの上ないぜ!」
実際にはアドレナリンが出ているせいで気がついていないだけなのだが、少なからず疲れは体に蓄積されており、間違いなく普段より思考能力も落ちていた。
「見えたぞ! あれか」
切り立った石山の中腹に目的のダンジョンが見えてきた。どうやら封鎖は解除されているようだ。
「ふんっ、手間が省けるぜ。あっという間に終わらせてやる!」
ジョナサンは迷うことなく一気にダンジョンの前に降り立った。
「闇の門! よぉぉし、お前らぁ『ガルーダ』達を出したら中の奴らを食らい尽くしてこぉーい!!!」
次々と『ガルーダ』達がダンジョンに入っては行き消えていく。半数ぐらいが入った頃、ようやくジョナサンも様子を伺うようにダンジョンに入っていった。
「う、うおぉぉぉ! ど、どうなってやがる!?」
ダンジョンの中は『ガルーダ』で溢れかえっており熱気はものすごく隙間もないほどの密度っぷりだった。通路を行ったり来たり味方同士がぶつかり合っては喧嘩をしている奴らまでいる。
「こ、これは迷路か!? しかも通路が狭い……。こんな通路どうやって造ったってんだ」
次から次へとダンジョンに入ってくる『ガルーダ』達で尚もダンジョン内は埋め尽くされていく。
「お、おい、『ガルーダメイジ』は『ガルーダ』をすぐに闇の門に入れろ! 外の奴らには入って来んなと言ってこい! チッ、いったん退却する……のぁぁぁ!!!!!」
指示を出そうと動き始めた瞬間を狙いすましたかのように入口から巨大な水弾と共に残り半分の『ガルーダ』達が押し流されてきた。
「ぐぅあぁぁぁぁ! 痛っ、くそっ! お前ら早くどけ邪魔だっ!」
ダンジョンの入口近辺は水流に押し潰された多くの『ガルーダ』達が瀕死の状態で倒れている。ジョナサンは自分に重なるように固まっている『ガルーダ』を退けながら惨状を目の当たりにして呆然としていた。
通路の奥の方では場所によっては行き止まりで溢れた水で溺死している者、壁に叩きつけられ圧死する者等も多くいるだろう。
「今ので、どんだけ死んだんだ……!? ド、ド、ドラゴンだとぉぉぉ!!!」
入口を見ると『ガルーダ』を口に加えた大きなドラゴンが二体。
「外の『ガルーダ』は全部中に入ったかしら」
「お、お姉さま、大きな魔法を使うときはあらかじめ言っておいてください! もう! 『菜の花』さんの避難が遅れてたらどうするんですか! 『ガルーダ』は全部ダンジョンの中に入ってますけど」
「そこは、あれよ。なんとなく大丈夫な気がしたのよ。あと双子の共有感覚的な……」
「そんなのありません! それよりお姉さま。鳥狩りの始まりですよ」
「そうねぇ。数はいっぱいいるから競争しましょう」
な、なんで。こんなところにドラゴンがいるんだ……。入口が塞がれてしまっている。お、奥へ、とにかく奥へ逃げなければ……。
「に、逃げろぉぉぉぉ!!!!!」
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