第12章 2話
「おい、イーグルはいつになったら戻って来るんだ。ちょっと遅すぎじゃねーか。気軽に外出できる奴はうらやましーなこの野郎」
つい近くにいたタコ丸にあたってしまった。案内人ってのはどうも何を考えているのかわからない時がある。得たいの知れない感じがどうにも気持ち悪い。イーグルがいないとどうも上手くまとまらねぇな……くそっ、酒を飲んだ時の悪い癖だな。
「うるせー、酔っぱらい。今、『ガルーダ』とカモメ達に確認しているからもう少し待ってろよ。にしてもイーグルにしては珍しいな、遅くなるのに何の言付けもしないなんてな」
普段とは違うイーグルの行動に違和感を感じながらもタコ丸はカモメ達から情報を集めていく。通常ならこの役割はイーグルに任されているためタコ丸がこの作業をするのは久々のことだった。
「どんくらい待てばいいんだよ。まぁ特に用事ないし今日は俺もう寝るけどな。タコ丸はしっかり情報をまとめとけよ。イーグルが帰って来るまでしっかり頼むぞ」
「ちょっとカモメの量を増やしすぎだろ。これ情報まとめるの結構しんどいぞ」
ぶつぶつ言いながらも、しっかり仕事するとこなんかは頼りになる。仕事のできるできないと信用できるできないは全くの別物なんだよな。
自室の鳥籠に入り眠ろうとするが、どうにも寝つけない。ちっ、まだ酒が足りなかったのか……。明日は静岡のダンジョンでも攻める会議をするか。あのダンジョンは犬しか出入りしてねぇ超初期ダンジョンだから『ガルーダ』のレベルアップダンジョンにしたい。その次は新潟か。
最終ラウンドがどんなものかわからねぇが出来る限りのことはしといた方がいいだろう。この復活ラウンドはとにかく力を蓄わえる。ある程度情報も整理出来た。敵は吸血鬼以外にいないし、奴とは既に話もつけてある。復活ラウンド美味しすぎるぜ! ここからはじっくり最強の鳥部隊を作り上げようじゃねぇか。こりゃ10億ポイントを超えないように注意が必要だな。
「ジョナサン大変だ! お、起きてるか! イーグルが、イーグルが捕まったらしい」
「はぁぁ? 訳わかんねぇ事言ってんじゃねぇよ!」
「いや、マジで」
「嘘だろ! マジで?」
「囚われたのは『千葉ダンジョン』だ。『ガルーダ』達を人質にされて様子を伺っていたところを何かしらのマジックアイテムか魔法で眠らされたらしい」
「あのアホ! まさか、ただ寝てるだけだから『巻き戻し』が使えなかったのか。だ、だが『千葉ダンジョン』は人間どもに封鎖されたダンジョンだったはずだろ。一体どういうことなんだ?」
「『千葉ダンジョン』は人間と組んでいるダンジョンだったようだ。カモメ達にも伝言を残している。内容はこうだ『大阪ダンジョンのマスターが一人で来るのならこの捕らえたモンスター達は返してやろう。そうでない場合、捕らえているモンスターは全て殺す。それから、あまり遅く来られても面倒だから今から一時間毎にガルーダを一体殺していくことにしよう。早く来ないと全部死ぬぞ』以上だ」
「……初期ダンジョンが舐めた真似してくれるじゃねぇか!!! 『ガルーダ』の半数10万を連れていく。『ガルーダメイジ』には分担して闇の門に詰めこめさせろぉ! 俺が『ガルーダメイジ』を闇の門で隠す」
「ジョナサン! バレたら殺されるんだぞ! いいのか?」
「バレる前にぶっ殺す! 最悪バレても他の『ガルーダ』達には悪いが、少なくともイーグルは『巻き戻し』のスキルがある以上死にはしない。むしろ目を覚ましたら千葉ダンジョンが終わるだろうさ」
「し、しかし……わ、わかった。すぐに準備させる」
全ての準備が終わりダンジョンを出発した時点ですでに一時間半は経過していた。伝言がどのタイミングでこちらに伝わっているのかはわからないから『ガルーダ』はもう二体は殺されているかもしれない。
腸が煮えくり返る。ここまで俺のダンジョンを虚仮にされたのは初めてだ。最早、理由とか関係ねぇ。ダンジョンごとぶっ潰してやる! 全てのモンスターを食らい尽くしてやる!
カモメのジョナサンが『大阪ダンジョン』を出たのがリリア・ツェペシとの会談が終了してから約六時間後の午前八時のことだった。
カモメのジョナサン、『千葉ダンジョン』到着まであと三時間。
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