第12章 1話
「ふぅー、好きでもない奴との食事ほど疲れるものはないな」
「姫様、おかえりなさいませ」
「カールか。タカシは来ているのか?」
「はい。つい先ほど到着されました。配下のモンスターと『新潟ダンジョン』のダンジョンマスターも一緒です。あと、『ガルーダ』及び『ガルーダキング』のイーグルも捕らえているとのことです」
「そうか、やはりイーグルも負けおったか。さすがはタカシというべきか。みなは応接室に通しているのか?」
「左様でございます。リタ様がお相手をされております」
「そういえば、タカシがまたダンジョンに来たのなら二人目が生まれるのではないか!?」
「生まれないわ。召喚よリリア」
「おー、蓮子。で、どうなのだ。ボスモンスターチケットは手に入るのか?」
「うーん、調べてみたけど一度限りの特典みたいね。レベル100になってまた来てもらえば何か貰えるかも知れないわよ」
「レベル100なんて無理に決まっておろう。さて、私も応接室に行こうか。カールもついて参れ」
「はい、姫様」
◇◇◇◆◆
「パ、パパには既にこんな小さい子供がいたでしゅか!?」
「なんだよ。お前だってちっこいじゃねぇかよ。背ぇ比べするか? レヴィ、ちょっと見てくれよ」
背中合わせになり首を伸ばそうとしている子供二名。軍配は僅差でリタちゃん(六歳)の勝利となった。成長期はまだまだこれからだよヨルムンガンドちゃん(五歳)。
「ふん、口ほどにもないでしゅね」
「レ、レヴィ! も、もう一回だ」
「なんだなんだ、随分とにぎやかではないか。リタ、客人の前なのだ。あまり騒いではならぬぞ」
「はい、ママ。リタはお茶のおかわりを持ってくるでしゅ」
ママの前では変わり身が早い六歳児なのだ。
「あら、偉いわねぇー」
リリアさんに頭を撫でられながらも、出来る女は違うのよ、見なさいこれがアダルティなウーマンなのと言わんばかりにヨルムンガンドちゃんへ目線を送るリタちゃんは子供だ。
「マスター、キャラメル食べたいからくれよー!」
「リタちゃんにもちゃんとあげるんだよ、はいどうぞ」
ヨルムンガンドちゃんが最近お気に入りのエンゼルマークのキャラメルを出してあげると、リタちゃんの元へ走っていき無言で手渡した。ヨルムンガンドちゃんの大人な対応に満更でもないリタちゃん。
「うっまぁー、何これ、うっまぁー!」
リタちゃん、子供っぽい感想をありがとう。どうやら無事仲直りができそうだ。なんだか微笑ましい。そのまま二人でお茶を用意してくれるようだ。頼むから美味しく淹れてくれよ。
「リリアさんお疲れさま。それで、会談はどんな感じだった?」
「そうだな。私のいる『熊本ダンジョン』と奴の『大阪ダンジョン』の相互不可侵と不干渉エリアの線引きをしてきた。九州、四国、中国地方は岡山、鳥取までがこちらのエリアとなった」
「意外に広く確保出来たね。他のダンジョンについては何か言ってた?」
「うむ。入口を隠している初期ダンジョンが多いと。暇潰しに攻略するとも言っておった。ちなみに、ポイントについてはカモメの数を増やすことでクリアが見えていそうだ」
「なるほどね。しばらくしたら近くに『三重ダンジョン』も開通しちゃうしね。リリアさん、カモメのジョナサンがこちらの話し合いに乗る可能性はないのかな?」
「クリアが目前なだけに難しいだろうな。おそらく話し合いをしても利用されるだけであろう。しかし、今はイーグルがこちらの手元にある。奴とてボスモンスターを簡単に手離したくはないはずであるからチャンスがあるとしたらそこだろうな」
「お兄さま、お話中にすみません。そのイーグルなのですが『てんとう虫』さんから乗っ取れないと連絡が入っています。レベル差の関係なのかレジストされるようです」
「催眠は効いているの?」
「今は効いていますが、体力、魔力が戻ってきたらわかりません」
「うちの『ゴースト』達を貸そう。少しだが体力を奪うことが出来る」
あぁ、あの白いおばけか。僕の体力も吸収していたから問題ないだろう。
「ありがとう。リリアさん」
「それで、タカシはどうするつもりなのだ?」
「そうだね。イーグルをエサにしてカモメのジョナサンには『千葉ダンジョン』を攻略してもらおうかな」
「カール、どう思う?」
「姫様、おそれながらジョナサンは用心深いタイプでこざいます。いくらイーグルの為とはいえ、このタイミングでは来ないかと」
「お兄さまは情報操作されるのですね」
「うん。カールさんの言うように普通なら来ないと思うんだけど、ジョナサンが来たくなるようにカモメの誤情報をここで活用させてもらうよ」
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