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第11章 15話

 会談をするのも久し振りであるな。そういえば前回の会談もジョナサンとだったか。あの時は、相互不可侵の取り決めでお互いにメリットがあった。


 今回の会談の目的も似たようなものになるだろう。お互い10億ポイントが見えているのだ。わざわざ強いとわかっているダンジョンとぶつかる必要はない。あとは、タカシの作戦が上手くいくよう時間を稼ぐとしよう。


「これはこれは高名な吸血鬼の姫、リリア・ツェペシ殿。敗者復活おめでとう。会うのは前の世界振りか、相変わらずおっぱいでけーな」


 椅子の上には紳士のようなシルクハットにスーツを華麗に着こなすカモメのジョナサンがいた。


「ふん、後半が余計だ変態め! 用件はなんなのだ」


「まぁまぁ、まずはお互いに復活ラウンドに進んだお祝いに乾杯しようぜ。ワインの赤でいいか?」


「なんでもよい」


 たこ焼きの案内人タコ丸がワイングラスをテーブルに用意し、赤ワインを注いでいく。どうでもいいが、ジョナサン用のグラスはカモメサイズにカスタマイズされている。


「ベリー系の飲みやすい赤だ。タコ焼きにも合うぞ」


 テーブルの上で軽くグラスを回すとフルーティーさと酸味が合わさった匂いが鼻腔をくすぐる。


「香りは悪くないな」


「では、我々の未来に乾杯」


「我々の……か」


 チーン!


「この世界はまだあまりダンジョンが多くない。復活ラウンドを始めるにしては時期尚早の初期ダンジョンのようなものが数えるほどだ。我々の敵ではあるまい」


「もうそこまで調べあげているのか。さすがはカモメのジョナサンだな。それで会談までして私と話したい内容とはなんなのだ?」


「うちのダンジョンもリリア殿のダンジョンも似たようなタイプだったなと思ってな。眷属だったか。それを増やすだけでポイントを増やしていけるはずだろう。うちも同じく同族をダンジョンに集めてポイントを稼げる」


「それがどうした」


「つまり、我々が直接争わなければリリア殿のダンジョンとうちのダンジョンは自動的に最終ラウンドに進めるということだ。もちろん、暇潰しに他のダンジョンを潰していく訳だが、そこはリリア殿と前回同様に線引きをしようと思ってな」


「なるほどな。お主の言うことには一理ある。しかし、敵はダンジョンだけなのか?」


「何を懸念している?」


「お主の言う通りダンジョンの数は少ない。しかしながら、この世界はかなり錬金術の発達した世界のように思える。ダンジョンが成長出来なかった理由がそこにあるのではないか」


「ふむ、なかなかに鋭い。俺が調べたところによると入口を隠しているダンジョンが五ヵ所、残り一つは既に包囲されていた。つまり、入口を隠しているダンジョンは自らこの世界に負けを認めているようなものじゃねぇかな。もう一つは論外だな」


「つまり、この世界に於いてはダンジョンよりも錬金術が勝っているということか。ならば、我々も隠れてやり過ごした方が無難に思えるのだが」


「ほーう、ずいぶんと丸い考えをするようになったなリリア殿。俺の知っているリリア・ツェペシなら隠れてこそこそするような戦略はとらないはずだがな。何か心境の変化でもあったか?」


「な、何もないわ! まぁ、線引きをするのはいいだろう。どのようにして分けるのだ」


「タコ丸、地図を持ってこい」


 すでに準備されていたのだろう。すぐに大きめの地図がテーブルに用意された。


「こ、これがこの世界の地図なのか。随分と精密に描かれておるのだな。これも錬金か」


「錬金かどうかはわからんが、ほぼ完璧な縮尺で再現されているようだ。この赤い印が付いているのが大阪、このダンジョンのある場所だ。そして、青い印の場所が熊本、リリア殿のダンジョンがある場所。黒い印の場所がこの世界のダンジョンがある場所だ」


 開通前のダンジョン情報はさすがに入っていないようだな。


「私のダンジョンの周りにはダンジョンが少ないのだな。なら線引きはこの辺りが妥当か」


 私は九州、四国、中国地方を指でなぞりながら兵庫と書かれた辺りで指を止めた。


「リリア殿。そりゃいくらなんでも欲張り過ぎだ。もちろん信用していない訳ではないが、これでは俺のダンジョンと近すぎる」


「お主のエリアは東に大きく広がっている。譲れてもそうだな……この辺り(岡山)までだな」


「んー。まぁいいだろう。その線を持って相互不可侵ということにしようじゃねぇか」


「ふむ、よかろう。明日以降ダンジョンのそばでカモメを見つけたら仕留めてよいのだな」


「はっはっは、それは手厳しい。あぁ、カモメ達はすぐに退かせよう。リリア殿も眷属をこちらのエリアに飛ばすようなことは勘弁してもらおう。うちのカモメ達はコウモリを率先して仕留める訓練をしているのでな」


「もちろんだ。ところでジョナサン、ワインのお礼ではないが私もお土産を持ってきておる。よかったら乾杯の続きといかないか」


「それはそれは、一体何を持ってきた?」


「口に合えばよいのだが、私のダンジョン周辺で採れる人気の魚だ。ガラカブと言ってな、唐揚げにしたものと刺身にしたものを持ってきている。旨いぞ」


「魚か! そいつはありがてぇ。では我々の敗者復活ラウンドの突破に乾杯といこう」


「あぁ、そうだな」


 チーン!

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