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第11章 9話

 やはり人数が多いと迫力がある。七名が一斉にお弁当にがっつく姿はある種異様な光景でもありなんだかすごい。食べてる姿だけを見たらガテン系の香りがプンプンだ。


「な、なんか熱気はあるのに静かよね。食べる音しか聞こえない。まぁ、わからないでもないけど」


「そうだね。そろそろ三回目のおかわりだから落ち着いてくるんじゃないかな。あっ、サクラちゃん追加のお茶を持っていってあげてもらえるかな」


「はい、師匠。任せてよ」


「サ、サクラちゃん、ぼ、僕も手伝うよ!」


 サクラちゃんに仕事を振ると、セットでコウジさんが倍以上の働きでついてくる。なんて便利なセットだ。


「タカシ、悪い顔してるよ」


 おおっと、あぶない、あぶない。


「……そろそろいいかな。炎弾(ファイアボール)


 神殿の中央天井付近にゆっくりと炎弾(ファイアボール)を撃った。ある程度の高さまでいくと旋回しはじめ分裂すると花火のように綺麗に弾けた。


 食事中というのもあってみんな口をあけてポカーンとしている。いい表情だ。


「これが魔法だよ」


「か、勘違いしてもらっても困るから最初に言っておくけど、こんな生き物みたいな気持ち悪い魔法普通は撃てないから夢を見ないでよ」


 リナちゃんが人見知りの癖に辛辣だ。ちょっとリラックスしてもらおうかと思って頑張ったのに。


「師匠の魔法がまた一段と洗練された気がするな。これは九州で何かあったのかな? 後で詳しく話を聞かせてよね」


「と、とりあえず、僕からみんなに話があるんだけど、食べながらでいいから聞いてもらえるかな。えーっと、僕たちの仲間になってくれるなら出来る限りの範囲でポイントと安全を保証しようと思っている。また魔法の使い方をレクチャーしてもいい。あっ、でも魔力がない人には無理だと思うからそこはあきらめてね」


「ちょ、ちょっといいか。私は『チンポーコダンジョン』の雪蘭だ」


「ひ、卑猥よ! ダ、ダンジョンに何て名前つけてるのよ! あ、あなた変態ね!」


 ローパーなダンジョンマスターであるリナちゃんに言われたくはないだろうが、確かに女性が口に出していい言葉ではない。


「な、何が卑猥なのだ! 中国ではそれなりに観光地として有名な湖なんだぞ。に、日本語だと卑猥になっちゃうのか?」


「そ、そうね。日本語だと男性の生殖器を意味する言葉になるわ」


「な、なんということなの……名称は変えてもいいんだよね!」


「気にしなければいいんじゃない。中国語では違う意味なんだしさ」


 サクラちゃんが良いことを言っている。何も解決していないけど。


「そうだね。略してみたらどうだろう。チンーコとかチポコとかさ」


 コウジさんチンーコはアウトだからね! 絶対わざと言ってるよね。単純にサクラちゃんに言わせたいだけだよね。


「チ、チポコはなんだか可愛らしい響きなのではないだろうか。と、とりあえずそこのメガネの言っているように『チポコダンジョン』と名乗ろう」


「そ、それで、雪蘭さん。聞きたいことって何?」


「あぁ、そうだった。私はダンジョンマスターをやめたいと思っている。その場合、どのような手段が考えられるか知りたい」


「やめる場合は、どこかのダンジョンの傘下に入ってボスモンスターとして生きるしかない。その際に、案内人はそのままそのダンジョンに置き去りになるので見つかり次第討伐される可能性がある。もちろん、なるべく見つからないように手は打つけどね」


「そ、そう。やはり元の生活には戻れないのね」


「うん、残念ながら。案内人から聞いている人もいるだろうけど、ダンジョンマスターになったことでこの世界から忘れられていくらしい。みんなが生きてきた証はもうこの世界には残ってないだろう」


 グスッ、グスン うぅぅ……グスッ、グスン


 『ペナンダンジョン』のアイシャちゃん(16歳)と『岩手ダンジョン』のユウタさん(30)が泣いていた。えっ、ユウタさん?


「あっ、いえ。じ、自分のはもらい泣きです。き、気にしないでいいです。うぅ……」


「そ、そうですか。では、続けますね」


「助けるって他に手段はないの? みんなも案内人と何日か過ごしているから簡単に見捨てるとか出来ないっしょ」


「えーっと、君は……」


「『茨城ダンジョン』のニコルよ!」


「本当の名前は花子だっぺ」


「い、いきなりばらさないでよ!」


 今回、シビアな判断をする可能性もあったので案内人はなるべく呼ばないように連絡をしていたのだが、それでも案内人と同行して来たダンジョンマスターの一人だ。他には『北海道ダンジョン』と『ペナンダンジョン』からも案内人が同行している。


「で、花子さんの意見について……」


「ニコルよ! 次間違えたら納豆投げるわよ」


 納豆は服に付いたら取るの大変だし、臭いもなかなかとれないんだからね。


 どうでもいい話だが、案内人の地塚君は茨城在来種の納豆用小粒大豆なのだという。地塚大豆(ぢづかだいず)、または納豆小粒(なっとうしょうりゅう)と言う種類の大豆らしく、納豆にするとえらく美味しい品種だとか。


「ボスモンスターになった場合の話も一応聞かせてくれますか。あっ、自分は『山口ダンジョン』のナオキです」


 その後、ボスモンスターになった場合の話をしたところ、しばらくはダンジョンマスターとしてやってみようというのが全体の総意だった。案内人への気持ちや、あとからでもボスモンスターになれることがわかったからだと思う。


 誘導したとはいえ、やはり大抵の人はそう選んでしまうものだ。ボスモンスターになると魔素がなければ生きていけなくなる。つまり見た目は変わらなくても人間では無くなってしまう。しかもまだよくわからない『千葉ダンジョン』でボスモンスターやるとか絶対に選択できない。


 さて、では魔法のレクチャーへと進もう。みんな魔力あるといいんだけど。

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