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第11章 2話

 黒竜江省は中国の最北東部に位置し、北部はアムール川(黒竜江)を挟んでロシアと国境を接している。どちらかというと避暑地として利用されることが多い地でもある。


 そして新たにダンジョンができた場所は鏡泊湖という黒龍江省の南にある火山活動で生まれた湖のほど近く。ちなみに鏡泊とは湖の面が穏やかで鏡のように見えるという意味があるそうだ。



 私はとても不思議な光景を目にしている。これはきっと夢なのだろう。そうでないならお昼に食べた野草にトリップするような成分が含まれていたのかもしれない。ヨモギは間違えないし、クコも大丈夫なはず……。あれっ、私何食べちゃったのかな。


「あなたが今日からここのダンジョンマスターよ」


 目の前には人参の形をした生き物が喋っていた。意味がわからないと思うけど、私も全く理解が追いついていない。そろそろ買物に行かなきゃならないというのに。


「私は高麗人参のキャロルよ。親しみをこめてキャロちゃんと呼んでくれていいわ」


「はぁ……まぁ……じゃあ、私はこれで……」


「いやいやいや、あなた全然わかってないわよね? ダンジョンマスターは簡単に外に出れないわよ!」


 きっと疲れているのだろう。目を擦りながら洞窟から出ようとした。したのだが、あの人参が言うように出られない。どうやら見えない透明の壁があり、跳ね返されてしまっているようで外に出られないようなのだ。


「あ、あのぉ、すぐ戻るので少しだけ外に出してもらえない? 特売品を買いに行かないとお母さんに怒られちゃうの。すぐに売り切れちゃうかもしれないのよ」


「ダンジョンマスターは外に出られないって言ってるでしょ?」


「私の家は貧乏。身代金を要求するにしても家は選び直した方がいい。なんならいくつか紹介してもいい。市長とか大学の教授先生宅とか大型商業ビルのオーナーとか。そっちの方がお金になるでしょ?」


「残念だけど一度決まったら変更はきかないの。あきらめなさい」


「あなたの……」

「キャロちゃんよ」


「キャ、キャロちゃんの目的は何なの?」


「私はこのダンジョンの案内人。ダンジョンマスター、つまりあなたの味方よ」


「私がダンジョンマスター……ダンジョンって日本にあるやつよね? 何で中国にできてるのよ!」


「別に日本だけに出来る訳じゃないから。で、あなたの名前を教えてちょうだい」


「わ、私の名前は雪蘭シュェラン25歳よ」


「あら可愛らしい名前ね。もう少しおしとやかにした方がモテそうだけど」


「余計なお世話よ! いいからあなたの目的を話なさい」


「私の目的は雪蘭と一緒にダンジョンを成長させることよ。ちなみに、このダンジョンが国にみつかったら討伐されて私たちもおしまいだと思うから頑張ってポイントを稼ぐわよ」


「何で私なのよ……。ダンジョンって国が力を入れて探してるやつじゃない。こんな場所すぐ見つかってしまうわよ」


「あれ? 早速だけど他のダンジョンマスターから会談の連絡が入っているわ。雪蘭どうする?」


「どうするって、ダンジョンマスター同士は味方なの?」


「そういう場合もあるし、そうじゃない場合もあるわ」


「今回連絡あったのはどっちなのよ」


「内容としては敵ではない感じね。本音はわからないけど。一応、手助けしたいと言っているわ。場所は日本の千葉にあるダンジョンよ」


「千葉ってどこなのよ! 北海道の近く? キャ、キャロちゃんならどうするの?」


「雪蘭、会談は魔法の使用や攻撃自体を禁止にすることが出来るの。相手が信用出来ない間はそうやって会えばいい。話を聞くのは有りだと思うわ」


「そ、そうなのね。あっ、でも私、日本語で知ってる言葉『カラオケ』と『アニメ』、『フジサン』ぐらいしかないんだけどこれじゃあ会話無理じゃない」


「大丈夫。会談中はダンジョン内での会話は同時通訳みたいな感じで伝わるはずだから」


「へぇ、便利なのね。危害がないのなら会いましょう。初の海外旅行が日本になるなんて楽しみね」


「正確には日本にあるダンジョンであって、外には出られないから旅行って感じじゃないと思うけど。じゃあ、とりあえずだけど案内人奥義ビーム!」


「な、なんでビーム撃つのよ! キャロちゃん敵なの!?」


「なんでこの距離で避けられるのよ! これはお約束でみんな食らうものなんだから逃げないでよ」


「黙ってビーム食らう奴なんていないから!」


「わ、悪かったわ。このビームはね……ダンジョンを管理する上でかかる過大なストレス等を……と話ながらビームを撃つことも出来るのよね。よしっ!」


 こうして、まんまと騙されてビームを受けてしまった私が目覚めたのは会談が始まる少し前のことでした。

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