表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/355

第10章 5話

 風呂上がりの女子っていい匂いするよね。無意味に深呼吸したくなるぐらい好き。特にうちの女性陣は髪が長いからよりシャンプーの香りとかも相まって、めっちゃフローラルしている。フローラル深呼吸最高です。出来ることなら直接髪の毛に顔を埋めてムハーって吸い込みたいんだけど人として終わってしまう気がするから思いとどまっている。


「お兄さま、それで他のカモメ達はどうされたのですか?」


「うん。ヨルムンガンドちゃんが頑張って捕獲してくれてるよ。お風呂上がりに申し訳ないんだけど、みんなも外の様子を見てきてもらえるかな。結構大量にいるみたいでさ……」


「えぇ、かしこまりましたわ」


「タカシさん、捕獲ということは殺さないようにするということですよね」


 レイコさんがいい質問をしてくれた。そうなのだ。カモメ達を討伐するつもりはない。


「うん、実は『てんとう虫』さんがカモメ達を乗っ取れることがわかったからね」


「なるほど。情報を逆手にとるのですね」


「どういうことですの?」


 『大阪ダンジョン』は情報を集めている。ならばそれを逆に利用させてもらおう。というのが今回の主旨なのだ。


「ティア先生は『てんとう虫』さんを信頼していろんな情報を集めてますよね。もしもその情報が偽の情報だったらどうします?」


「レ、レイコ、それはひょっとして裏切りですの!? ま、まさか下剋上なのかしら。『てんとう虫』さんが裏切るとかゾッとするのだけど……」


「そういうことです。『大阪ダンジョン』のマスターは『てんとう虫』さんの代わりにカモメを情報収集に使っているのです。しかもかなり信頼を置いているのではないでしょうか。タカシさんはカモメ達を味方にして情報操作をしようとしているのだと思います」


 ティア先生が信じられない! みたいな顔を僕に向けてくる。


「お姉さま、これがお兄さまが行う戦略なのです」


「わ、わかっていますわ! でもなんて恐ろしいことを考え付くのかと内心驚いておりましたの。私、『てんとう虫』さんに誘導されたらお小遣い三日で無くなる自信がありますわ。マスターがタカシ様で本当によかったですわ」


 ティア先生のお財布なら『てんとう虫』さんでなくても簡単に浪費させられる気がするぞ。


「お姉さまは『てんとう虫』さんを無条件に信頼し過ぎなのです。今回の件がいいお薬になればいいのですけど……」


「仲間を信頼することはもちろん大事なことだよ。だからといって何でもかんでも信じてしまうのは危険なんだということをみんなにはわかってほしいな」


 レヴィの言うことも、もっともなことなのだ。『てんとう虫』さんが逆に洗脳されるようなことがあった時に僕はちゃんと見抜けるようにしておかなければならない。対策は立てておいた方がいいだろう。


「ウンディーネは僕とお留守番だよ。じゃあ、みんなよろしく頼むよ。僕は大きな鳥かごでも準備して待ってるから」


「はい。では行って参りますわ」


 ティア先生の胸元から飛び出したウンディーネはまるでハグをするかのように、ぺちっと僕の頬っぺたに張り付いてから頭の上に登っていく。ウンディーネ可愛い。


「さて、ウンディーネ。僕たちは草原フロアにポイント交換可能な鳥小屋を設置しよう」


 見た目普通のカモメだけど、あれでレベル1のカモメなんだよね。簡単なビニールハウスみたいのだと脱走待ったなしな気がする。ある程度の強度は必要だろう。


 催眠が効くまでの間、魔法を使って少し弱らせることも必要かもね。そんなことを考えながら交換可能な鳥小屋を探していたら良さげなものを発見した。


「ウンディーネ、なかなかいいのを見つけたよ」


 僕が見つけたのは『大きめのガレージハウス』100万ポイントだった。


 鳥類って暗闇の中だと静かにしてそうなイメージがあるからシャッターを閉めて真っ暗にしてしまえばおとなしくならないかなぁとかって僕の願いもある。


 まぁ、静かにならなかったら強制的に軽めの稲妻(サンダーボルト)とか撃ってしまおうではないか。


 悪い顔をしていたらウンディーネにおでこをぺちぺち叩かれてしまった。何か伝わってしまったのだろうか……。嫌われないように気をつけたい。


 その時、入口からみんなが戻ってくるのが見えた。おっ、もう戻ってきたのか。ぺちぺちが止まってヨルムンガンドちゃんの方を指さしている。どうやらウンディーネはみんなが戻って来たことを伝えてくれたようだ。うん。ウンディーネいい子だ。


「マスター! 全部残らずまるっと捕まえたぞ」


 なぜだか、夏休みにカブトムシを捕まえてきたかのように聞こえる不思議さ。


「羽根一本も残さず捕らえたわ!」


 別に羽根はいらないよティア先生。


「うん、みんなおかえり。お疲れさま」


「ヨルムンガンドちゃん大活躍でした。汚れちゃったからもう一回みんなで温泉入りましょうね」


「じゃあ、このガレージハウスの中に捕まえたカモメを放しておいてね。あとは僕が引き受けるから温泉に入ってきなよ」


 あぁ、本日二度目のフローラル深呼吸したい。髪を乾かす魔法とか覚えて順番にクンカクンカしたい。


 ぺちぺちっ


 おおっと、仕事仕事。ウンディーネに注意されてしまった。とりあえず『菜の花』さんの応援でもしよう。


 ギャウギャウ!! ミーウー!! ミーウー!! ギャウギャウ!! ミーウー!!ミーウー!! ミャウミャウ、ウー!! ミーウー!! ギャウギャウ!! ミャウミャウウー!!


 稲妻(サンダーボルト) 稲妻(サンダーボルト) 稲妻(サンダーボルト) 稲妻(サンダーボルト) 稲妻(サンダーボルト)


 さすがに数が多すぎてうるさすぎた。条件反射で力を調節しながら魔法を撃てるあたり僕も成長しているのだろう。稲妻(サンダーボルト)されてピクピクしているカモメ達、また怯えて静かにしている賢いのもいそうだ。


 それにしてもこんなにいたのか。数は途中まで数えてやめた。微妙に動く鳥とか数えられない……あとで聞こう。多分三千羽くらいな気がする。

続きが気になった方は、ブクマやポイント評価を頂けると作者のモチベーションアップに繋がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ