第10章 4話
ミャウーミャウー!! ミーウー!! ミャウーミャウー!! ミーウー!!
これは猫の鳴き声ではない。鳥の鳴き声なのだ。エディ曰く、ダンジョンの入口で追加のニワトリを納品のためヨルムンガンドちゃんに渡そうとした時に集まってきたそうだ。
「ヨルムンガンドちゃん、なんで亀山にカモメがいるのかしらね。しかも不気味なぐらい大量にいるんだけどあれ知り合い?」
「鳥の知り合いはいねぇぞ。ニワトリさん狙ってんのか!?」
「カモメが食べるのは小魚とか昆虫じゃない?」
「まさかこのニワトリ達、訳ありなんじゃねぇだろうな!」
「ちょ、ちょっと! 訳ありのニワトリってどんなニワトリなのよ。ちゃんと卵産むわよー」
ミャウーミャウー!! ミーウー!! ミャウーミャウー!! ミーウー!!
「あの鳥、昆虫も食べるのか。ということはコウモリさんの敵だな。少し駆除しちまうか……」
「いくら近くに人が住んでないとはいえ、あんま激しくしたらタカシ君に怒られるわよ」
「それもそうだな。ちょっとマスターと遊んで……聞いてくる!」
「……それにしても不気味ね。なんだかこっちを見張っているような気がするもの」
ヨルムンガンドちゃんが大量の鳥が攻めて来たと騒いだのは女性陣が温泉に入っていた頃だった。
「マスター! すげーいっぱい鳥が攻めて来てるぞ!」
「攻めて来たって、ダンジョンには入って来ないようだけど……いったいどんな鳥なの?」
「白くてミャーミャー鳴くやつ」
「えっ、ネコ?」
「ちげーよ! 空をミャーミャー飛んでるんだぜ」
ミャーミャー言われると猫しか思い浮かばないじゃないか。今のところ羽の生えた白猫がミャーミャー飛んでいるイメージが浮かぶ。とっても平和な風景だ。
「あれっ、エディは大丈夫なの? 納品だったんでしょ」
「あっ、置いてきた……」
とりあえず、ヨルムンガンドちゃんに危なそうならエディをダンジョン内に避難させてあげるようにと、あと鳥を一羽捕まえてダンジョンに戻ってくるように指示を出した。
鳥と聞いて頭に浮かぶのは『大阪ダンジョン』の鳥人間だ。まさか、あの一瞬目が合っただけで追い掛けてきたというのも考えづらい。さすがに距離が離れ過ぎているし、新大阪から新幹線のスピードを見失わずに追ってくるとかなかなか難しそう。
「やん、タカシ君怖かったぁ……ゲフッ!」
いきなり抱きついてこようとしたエディを『賢者の杖』で軽く殴って突き放した。おネエに隙を見せてはならないのだ。
「ちょ、ひどいー。本当に怖かったんだからー」
「外にいる鳥に何かされたの?」
「あの鳥目に視姦されたわ……もうちょっとで服を脱がされるところだったと思うの」
「へぇ。裸になったエディを縛り付けて鳥の餌を全身に撒きたい気分だよ!」
「まぁ、タカシ君たら激しいプレイがお好みなのね」
「………」
「マスター! 一羽捕まえてきたぞ」
エディと不毛な話をしていたらヨルムンガンドちゃんが鳥を捕まえて戻ってきた。
ギャーギャー! ミーウー!! ミーウー!!
「これはカモメだよね?」
「えぇ、まったくエロいカモメだわ」
氷結
話は死んだあとに聞かせてもらうよ。鳥の心臓とか小さすぎてわからないので胸の辺りを凍らせてもらった。
「よし、あとは『てんとう虫』さんよろしくね」
予定通り、ここからは全て調べさせてもらうよ。さすがに小さい鳥の頭の中に入るのは大変らしく少し時間がかかったようだ。カモメの脳みそなのでどのくらいの知識を持っているのか不安だったけど、おおよその情報は取得することができた。細かいことはわからないんだけどね。
「それでマスター、カモメを情報収集に使ってたってどういうことなんだよ」
「小魚との交換でカモメのネットワークを少しずつ広げて情報を集めていたらしい。それで『大阪ダンジョン』は小魚を集めてたのか」
そう。外のカモメ達はモンスターではなく普通のカモメなのだが、『大阪ダンジョン』のダンジョンマスターから依頼を受けて情報を集めているのだった。腐りかけの小魚との交換で。
そして、重要なのが何故カモメ達がこの場所を見つけることが出来たのか。カモメ達はレベルアップをしていた。レベルが上がることで渡り鳥特有の力が増幅するのだという。
渡り鳥は正確な方向感覚を持っているのだが、これは磁場を知覚できるからだと考えられている。その小さな鳥目の網膜にクリプトクロムという青色光受容体が含まれており、その生化学的反応で弱い磁場変異を感知する。
ダンジョンと磁場の関係性がどういうものなのかはわからないがはっきりと、どの方角、距離にダンジョンがあるのかわかるそうだ。
カモメ恐るべし。
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