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第10章 3話

 居住区に戻るとティア先生とウンディーネが丁度戻ってくるところだった。


「どう? レベルアップは順調?」


「そうですわね。概ね問題は無さそうですわ。もう少しレベルが上がれば一人でも大丈夫かしら」


「そっか。じゃあ、しばらくはフォローお願いね」


「えぇ、もちろんですわ。ところでタカシ様、もう温泉は使えるのかしら?」


「あぁ、大丈夫だよ。さっきお湯を入れたばかりなんだ。レヴィとレイコさんが入ってるんじゃないかな」


「あら、そうでしたの。では私とウンディーネもいただこうかしら」


「うん、ゆっくり浸かってくるといいよ。というか、ウンディーネも温泉入るんだね」


「えぇ、大好きみたいですわ。タカシ様と一緒に入りたいと言ってますけど」


「い、いや、それはちょっと、いいかな」


「相変わらずウブですわね」


 何故なのか、うちのボスモンスター達は積極的だ。恥ずかしがりやな日本人を嘗めないでもらいたい。それにしてもボスモンスターになるとマスターに好意が向くような仕掛けでもあるのだろうか。今度他のマスターにも聞いてみよう。


「ティア、ちょっと『新潟ダンジョン』にお呼ばれされているから行ってくるね。みんなにも伝えておいて」


「かしこまりましたわ」



◇◇◇◆◆



 今回の熊本遠征で『新潟ダンジョン』にはいろいろと迷惑を掛けてしまったのでお詫びを兼ねて改めてお礼に行くのだ。案内人抜きで話をしたいとのこと。あと、弟子のサクラちゃんからのお願いも一つ聞かなきゃならない約束をしているんだよね。



 『新潟ダンジョン』に行くのは二回目か。ダンジョンの迷路化は進んでいるかな。ちょっと楽しみだ。


「ようこそいらっしゃいましたタカシ様。マスター方がお待ちでございます。どうぞ、こちらへ」


「あぁ、ありがとう。あれっ、君どっかで見たことあるような……」


「私はショウです」


「えっ! ショウ君って元勇者の?」


「はい。お恥ずかしながら、その節はご迷惑お掛け致しました」


「えーっと、理解が追いつかないんだけど……とりあえず……三人に会おうか」


「マスター、タカシ様をお連れ致しました」


「あっ師匠、一昨日振りー」

「タカシ元気?」「タカシさん、心配したんですよ! ご無事で何よりです」


 サクラちゃん、リノちゃん、ミクちゃんの順番に声を掛けられた。そういえば、リノちゃんと会うの久々な気がするな。彼女の優先順位は常にモフモフが一番だからね。


「みんな『熊本ダンジョン』の件ではごめんね。最悪のケースを考えた時に、他に手段が見つからなくてさ」


「急すぎて驚きましたけど、今まで『千葉ダンジョン』に頼りきりでいたサクラもリノもこのままではいけないって頑張るようになったのでいい意味で刺激になったと思います」


「それはよかったよ。それとショウ君のことは何か関係かあるのかな?」


 三人を見るとリノちゃんが話をするらしい。


「タカシ、ショウは私が面倒みることにした。一通り弱点の洗い出しが終わった頃に予想通りというか精神耐性スキルを習得してしまった」


「つまり、痛みや属性耐性に続いて精神耐性を習得したことで拷問が意味をなさなくなったんだね。でもよかったの?」


「うん。もう十分痛めつけたし何度も精神的に殺したから。あと、今のショウは無害」


「無害か……。ボスモンスターになるとマスターに対する考えとか変わるのかな」


「そう。柿の種さん言ってた。ボスモンスターはマスターに対して敬愛の念をもつ」


「なるほど。心当たりがあるね」


 ミクちゃんもそのことが気になるようで話しかけてきた。


「私たちのカイトに対する想いもそうなのかなって思うと少し悲しくなる。サクラやリノはもうカイトのことそこまで好きではないみたいだし」


「ミク。私やリノもカイトが好きなことに変わりはないよ。でもそれはあくまでも戦友としての気持ち。ボスモンスターではなくなっても変わらないミクの気持ちは本物なんじゃない?」


 リノちゃんもフンフン頷いているので気持ちは一緒なのだろう。


「そうだね。ミクちゃんの気持ちはきっとカイトさんも嬉しいんじゃないかな。ダンジョンマスターって孤独だし周りは敵だらけだからボスモンスターって精神安定の役割でもあるのかもしれないね」


 そう考えるとティア達の気持ちもボスモンスターとして誘導されている部分が少なからずあるのだろう。うちのダンジョンにもミクちゃんのような人がいたら嬉しいな。


「そういえば、サクラちゃんのお願いを聞かなければならないんだったね。どんなお願いなのかな?」


「あー、師匠。それはね。もしもの話なんだけど、この先私達がカイトと戦わなければならなくなった場合、『千葉ダンジョン』のボスモンスターにしてほしい。そして、師匠がカイトと戦わなければならなくなった場合は戦わずに『新潟ダンジョン』のボスモンスターになってほしいんだ」


「なるほど。今回みたいに、もしもの場合に備えて先に話をしときたかったんだね。案内人を入れずに会談した理由はこの話をするからか」


「うん。他のダンジョンに助けを求める場合、現行のルールではダンジョンマスターとボスモンスターは助けられるけど、案内人は助けられない。私達は優先順位を決めておきたいの」


「話はわかった。君たちが『千葉ダンジョン』のボスモンスターになることはもちろん構わない。ただ、後者については僕にカイトさんと戦う気持ちが無いのはわかってほしいけど、今の時点で頷くことは出来ない」


「そ、そうですか」


「もちろん、話し合いや最大限に戦闘回避の手段を模索することは約束する。今はそれでいいかな?」


「うん。師匠ありがとう。今はそれで充分だよ」


 この三人もこの子達なりにいろいろ考えているんだね。見た目とは違い精神年齢的には中学生ではないのだから当たり前か。うちのダンジョンもそろそろこういう話をしといた方がいいかもしれない。

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