閑話 9
はじめまして、リタといいます。六歳の女の子です。私が誰かって? 私は、リリア様に召喚されたボスモンスターなのです。
「マ、マスター、そんな大事な役目を私なんかでいいのでしゅか……」
か、噛んでしまった……。私の舌は小さいからしょうがないのです。
召喚されたばかりの私は戸惑いを隠せずにいた。マスターからの最初の指令が、マスターが恋するダンジョンマスター、タカシとの恋の架け橋になれというものだったからだ。
「何を言うか。お主はタカシを撃退した際に手に入れたボスモンスターチケットで召喚された『ウィッチマスター』なのだぞ。云わばこのダンジョンとタカシとの間に生まれた子供のようなもの。自信を持つといいリタよ。それから何度も言うが、私のことはママと呼びなさい」
「は、はぁ……マ、ママ?」
私がママと呼ぶと、マスターは顔をとろけさせ頬を赤く染め、くねくねとしながら子宮を抑える。よくわからないけど母性がギュンギュンにヤバいそうだ……。
ママは私をボスモンスターとしてではなく我が子であるかのように接してくる。それはとても光栄なことなのだと理解はしているけど、少しだけ心配になってしまう。
「そ、それでパパにはいつ会えるのでしゅか?」
ま、また噛んでしまった……。私はまだパパを知らない。架け橋相手のパパを見ないことには私にお手伝いが出来るのかの判断も出来ないのだ。
「そうねぇ。私も早く会いたいのだけどタカシは忙しいのよ。ようやく今日『千葉ダンジョン』に戻るらしいから会えるのはまだまだ先ね……。会談出来ないって辛いわ。これが遠距離というものなのね」
私のパパはタカシというダンジョンマスターなのだという。妻と子供をほったらかして遠出している駄目なパパだ。いや、実際にはまだパパではないのか。
ママはパパを溺愛している。明らかにベタ惚れしている。ひょっとしたらママはパパにいいように遊ばれているだけなのかもしれない。船乗りは港の数だけ妻がいるという。ダンジョンマスターならダンジョンの数だけ妻がいるのかもしれない。
とはいえだ。私がいうのも何だけど、ママはとても美人だ。スタイルも抜群だし、おっぱいは重力に逆らい芸術的なフォルムを維持しており、すごく柔らかい。もう一度言おう。とっても柔らかい。こんな綺麗な爆乳に言い寄られて落ちない男などいないだろう。もしかしてこの架け橋、案外楽勝かもしれない。
私はまだ六歳だからぺったんこだけど、将来はママのように美しいお胸に成長させたいと思う。その為には重力に影響を及ぼす魔法を習得することも厭わない。ウィッチのお婆さんのように垂れ下がってはならないのだ。
「それにしても、タカシのレベルが50を超えていたのは想定外だったな」
「パ、パパしゅごーい!」
お、思わず興奮してしまった……。レベル50を超えるなんてレジェンドなのです。なかなか会えることも出来ない存在なのです。レベル50オーバーの猛者、とてもすごいのです。
ボスモンスターチケットを手に入れられたのはレベル50オーバーの侵入者を撃退した特典なのだという。そんな化物を相手に魔法の指導とか畏れ多い。むしろ私が教わりたいぐらいだ。パパだって六歳の幼女を先生とは呼びたくないだろう。
とはいえ、私も架け橋のはしくれだ。なんとしてもこの幼女先生やりきってみせる。そして、ママとパパの子供としての恵まれた立ち位置を死守するのです。成り上がるのです。
ママの情報によると、パパは反射魔法に興味を持っているらしいのです。この魔法は相手の魔法を跳ね返す魔法なのだけど、通常の属性魔法ではないため習得出来るかはその人の運なのです。
ダンジョンポイントで習得できないので、習得出来なくてパパが暴れたらどうしましょうか。このダンジョンに消滅の危機が訪れるのです。
その時はそうですね……もしも機嫌が悪くなったらママのおっぱいで気を鎮めてもらおうと思います。ママのおっぱいに顔を埋めたら嫌なことも忘れると思うのですよ。架け橋なりにこちらも仕事をしなければならないのです。幼女に仕事させすぎだと思うのですよ。
ちなみに私の名前の由来だが、リリアのリとタカシのタをとって『リタ』と名付けられました。パパはまだその事を知らないそうなので、お会いしたら教えてあげようと思うのです。
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