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第9章 15話

 翌朝、少し早めに僕は大阪に向けて出発した。電車で博多まで出て新幹線に乗り換えて新大阪まで向かう。博多駅で買った『かしわ飯弁当』を車内で食べた後、軽く睡眠をとった。午前中には到着する予定だ。


 ティア先生の予想では10メートルの食いしん坊な雌猫がマスターとのことだけど猫は肉食じゃなかったかな。魚が好きなのも勿論いるだろうけどさ。配下のモンスターは鷲頭の飛行モンスターとのこと。空中移動のスピード型モンスターだ。しかも結構な数がいるらしい。魔法使いタイプの僕とは相性はよくないだろう。敵の目が僕に向かないように暴れる前衛タイプのヨルムンガンドちゃんとか必要だ。


「もうすぐ11時か。予定ではそろそろ来る頃かな」


「あー、タカシさーん!」


 手を振りながら走って来るのはレイコさん。新大阪駅の肉まん屋さんの前で待ち合わせしていたのだ。留守番のみんなにも熱々ジューシーな肉まんをお土産に持って帰ろうと思う。


「ヨルムンガンドちゃんは来なかったんだね。てっきり面白そうとか言ってついて来るのかと思ってたよ」


「今はニワトリのエサの配合にはまってるようで、ゴブリン達と仲良く研究しているみたいです。卵黄の弾力と濃度をアップさせるのが目標みたいで……」


 何の研究してるんだよ。でも美味しい卵かけご飯が食べられるなら喜ばしい。期待しようじゃないか。


「そっかぁ。必要な物があるようならエディに言って用意してあげてね」


「はい、そうします。では、向かいましょうか」


 レイコさんに来てもらったのは、想定外の馬10頭で僕の闇の門(シャドウゲート)がいっぱいになってしまったので、念のためというやつだ。


 水竜双子姉妹も闇属性を習得したんだけど、二人だと青い髪の毛が目立ちすぎてしまうし、おそらく新幹線に乗って新大阪で待ち合わせとか言っても出来ないからだ。レヴィなら説明すればギリいけるかもしれないけど、ティア先生とか間違って沖縄とか行っちゃいそうだし、迷い竜になって千葉に飛んで来られても困る。


「すみません、USJの方までお願いします」


「はい、かしこまりました」


 タクシーに乗って大阪湾方面に向かう。情報では昼前に淀川の上を通って海に飛び込むとのこと。今のところ人に危害が加えられていないため警戒も割りと緩く、観光名所のようになってしまってるらしい。


 ダンジョンも封鎖することで敵対してしまう可能性を考えて遠巻きな包囲の指示にとどめている。さすがに被害が出たら形的には何か対応しないと不味いだろうけどね。


「ひょっとして、お客さんも鳥人間を見に来たんですか?」


「わかります? 毎日見れるんですよね」


「もう名物やからね。毎日、昼前には必ず来るさかいに港近辺は渋滞ですわ。この時間から行けば大丈夫やと思います」


「よかった。見れるといいなぁ」


 タクシーのおじちゃんは、鳥人間ダイビングポイントとやらを教えてもらい、おろしてくれた場所は橋の上の真ん中だった。


「タカシさん、今回は見るだけなんですよね?」


「うん。こちらから敵対するつもりはないからね。実際に見て肌で感じたかったんだ」


 その時だった。一陣の風が吹き去ると大阪湾に次々と飛び込む鳥人間が現れた。群れの一番後ろにいた二回り以上大きな体をしたモンスターと一瞬目が合った……。あれは他のとは違う。強者が纏う独特の雰囲気がある。


「タカシさん……あ、あれは強い……ですね」


 見るとレイコさんが震えていた。

「そうだね。あれはかなり強いボスモンスターじゃないかな」


 レイコさんの肩をそっと抱き締めると、僕はまたボスモンスターの方を見た。やつは一人飛び込まずにこちらをジーッと見ている。魔力を感じることが出来るタイプなのかもしれない。その時間はほんの1分あるかないか。


 仲間のモンスターが魚を咥えて海上に出てくると、一度こちらを振り返り一番後ろを守るようにして淀川を上っていった。


「こちらに気づいていましたね」


「うん。魔力を感知できるタイプなのかもしれない」


「復活組って、あんな強いモンスターがいるんですか?」


「うーん。『熊本ダンジョン』のボスモンスターを全て見た訳ではないと思うんだけど、あれは僕が今まで見た中で一番強そうなモンスターかも」


 あれだけの強さがありながら未だに何もしてこない不気味さ。『大阪ダンジョン』は注意が必要だ。

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