第9章 13話
「もしもし、レイコさん? あー、タカシです。ご心配お掛けしました」
「タカシさんですか? あの、怪我とかないですか? それにしても思っていたより早く連絡が来てびっくりしました。本当に終わったんですよね?」
「うん。大丈夫。ちゃんと終わってるよ。『熊本ダンジョン』とも協力関係を築けそうだから安心してってみんなにも伝えておいてくれるかな。これから『佐賀ダンジョン』に立ち寄ってから帰るから、ダンジョンに戻るのは明日になると思う」
「はい。ご馳走いっぱい用意して待っていますね……あっ、ちょ、ティア先生!」
「タカシ様! 熊本は馬を喰らう町だと聞き及んでおりますわ。私とレヴィに程よく油が乗った馬を10頭。お土産を希望するかしら」
「ちょっ、馬10頭とかどこで売ってるの!?」
「そのあたりは『てんとう虫』さんに話を通してありますので、タカシ様はお金を渡せばいいだけですわ」
て、手回しがよすぎる。馬刺しではなく馬を所望するあたりティア先生らしいっちゃらしい。それにしても一体誰が捌くのだろう。何はともあれ目の前にいる『てんとう虫』さんが頷いているのでどうやら間違いではなさそうだ。
「と、とりあえず、わかった」
ティア先生は僕を信頼しているのかわからないけど、どちらかというと馬肉の方を心配をしているようだ。まぁ、らしいといえばらしいか。
「レヴィは元気にしてる?」
「レヴィはローテーションでダンジョンお留守番の時間ですの。残念ですわね」
どうやらローテーションでスマホ圏外になるダンジョン居残り組とダンジョン外のスマホ前待機組に分かれていたらしい。なかなか可愛らしいとこがあるじゃないか。
「馬刺し以外にもみんなにお土産買って帰るから楽しみにしててよ。じゃあね」
「えぇ。明日は馬肉パーティーかしら」
どうやら馬10頭は明日の朝『佐賀ダンジョン』に届けてくれるとのこと。相変わらず『てんとう虫』さんは優秀です。
明日の朝。つまり、今日は『佐賀ダンジョン』に泊めてもらうつもりでいる。ミサキさんに伝えてなかったけど大丈夫だよね? 今後は『熊本ダンジョン』との繋ぎ役をお願いすることになるので、そのあたりも説明しながら夜ご飯にしよう。途中でお買い物してからダンジョンに行こうかな。
駐車場に行くと僕が乗っていた車の洗車を終えた『てんとう虫』さんがタイヤまで磨き始めていた。そ、そこまでしなくてもいいんだよ……。
「ありがとう。も、もう十分だよ……」
「はっ。車の中にお飲み物もご用意しております。あ、あの……運転は私がさせていただいてもよろしいでしょうか」
「そうだね。少し疲れてるし頼もうかな。『佐賀ダンジョン』に行く前に食材の買い出しするからどこか適当なところに寄ってくれるかな」
「かしこまりました。では参りましょう」
それからしばらくして車の揺れが気持ちよく感じた僕はつい寝てしまったようだ。目が覚めたのは九州自動車道を下りてショッピングモールの駐車場に着いたところだった。やはり精神的にどこか疲れがあったのかもしれない。
「起きられましたか?」
「うん……ん。寝ちゃってたね。ありがとう、助かったよ。買い物してくるからちょっと待ってて」
「いえ、荷物をお持ちいたしますのでご一緒いたします」
食品コーナーでは『佐賀牛』と『伊万里牛』のロースとサーロインを中心に購入していく。主力モンスターがオークの『佐賀ダンジョン』で、なんとなく豚肉は買ってはいけない気がしたのだ。
調理用具があったのか確認してなかったので、バーベキューセットごと大人買いしてしまった。『てんとう虫』さんが荷物を持ってくれて助かった。
ミサキさん的には野菜も欲しいよね。ピーマン、椎茸、アスパラガス、茄子、あとは季節ものでタケノコもいいね。
食材は大量に。ちょっと買いすぎた気もしないでもないが、余ってもオーク達がいっぱい食べてくれるだろう。
買い物が終わって外に出ると既に日は落ちて辺りは薄暗くなり始めていた。時刻は午後18時15分。
早く行かないとミサキさん食事の用意しちゃってるかもしれない。下手したら食べ終わってたりして……。ちょっと急ごうかな。
「ここから『佐賀ダンジョン』までどのくらいかな?」
「だいたい30分くらいでしょう。『佐賀ダンジョン』には先触れを出しておきましたのでご安心ください」
で、出来る人だ。
「で、では行きましょうか。バーベキュー喜んでくれるといいのだけど」
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