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第9章 12話

 五階層に続く階段を降りると、肩にコウモリさんを乗せたリリアさんが何とも言えない表情で待っていた。


「まさか本当に一人で五階層まで来るとはな。正直、二階層あたりで厳しいと思っておったのだがな」


 二階層は婆さんのフロアだ。魔法使いタイプにとっては、あの婆さんは鬼門といっていいだろう。


「なかなか苦労させられましたよ。出来ることなら二度と会いたくないですね」


「はははっ、『ウィッチ』はいい性格してるからの」


 あの婆さん、『ウィッチ』って言うのか。万が一『千葉ダンジョン』で召喚出来るようになったとしてもスルーだな。


「ところで、四階層のことなんだけど……」


「あぁ…すまぬな。私が見ていなかったとはいえボスモンスターを三体も投入してしまった。あまりにもタカシの攻略スピードが早いから驚いたのだろう。許してくれ」


「あ、いや、こちらこそ、ボスモンスターを倒してしまって申し訳ないというか……」


「気にするな。ポイントはまだあるし、奴等も変に気を遣って生かされていたら、それはそれでプライドが傷つくだろう。いい経験をさせてもらった。奴等に代わって感謝しよう」


 あれっ、あんまり怒っていないというか逆に恐縮されている気がする。


「そ、それで、今後の話なんだけど……」


「そうだな。『佐賀ダンジョン』といったな。あそこを攻略するのはやめよう。そ、それとだな、五階層までたどり着いた褒美をだな……その何だ……」


 なんだこの凄まじく良い流れは!? これはチャンス! 極上の押せ押せ場面だ。逃してはならない。こちらから何かを先に与えることで断りづらい雰囲気を演出しようじゃないか。


「リリアさん!」


「ふぁ、ふぁい!」


「では、どうでしょう。リリアさんはまだこの世界に詳しくないでしょうから私が手取り足取りアテンドいたしましょう」


「て、手取り足取りか!?」


「また、それにともないポイント取得手段の構築とダンジョン同士の同盟を進めたいと思います。同盟、つまり家族のようなものです。更に! 定期的に私の血でよければ提供しましょう」


「か、か、家族か! タカシの血まで……わ、わ、私は何を提供すればいい? これでは私が貰ってばかりだ」


「そうですね。うちのダンジョンと協力関係にあるダンジョンを攻略しないでもらいたいんです。もちろんこちらから攻略することもありません」


「ま、まぁ、家族だしな。致し方あるまい」


「あとはですね、リリアさんのダンジョンモンスター達が使っていた魔法がとても興味深いものだったのでいろいろと教わりたいなぁと……」


「そんなことでいいのか? どんな魔法なのかわからんがタカシならすぐに覚えるだろう」


 よ、よしっ! これで最悪魔法が覚えられなくてもどんな魔法かはわかるだろう。それだけでも対処の仕方が変わってくる。問題は先生役だな……。


「ちなみに、先生役は誰になるかな? 例えば反射の魔法だったら」


「反射の魔法なら『ウィッチ』だな。あの魔法は特殊でな私では教えられんのだ」


「やはり、婆さんか……」


「何やら勘違いをしているようだが、『ウィッチ』は別に婆さんだけではないぞ」


「えっ! そうなの」


「数は少ないが、私と同じくらいの見た目の者もおる。口と性格の悪さは年齢に比例するようだから安心するがいい」


 にこりと笑いながら話すリリアさん。大人っぽい雰囲気にドキッとさせられる。


 男は美女の唇のテカりだけで魅了されてしまうくらい柔な生き物だ。上目遣いでおねだりなんてされようものなら、世のパパは何でも買ってあげたくなっちゃうぐらいに柔だ。今なら血を吸わせてあげてもいい。もちろん、おかわりも許可しよう。


「では、先生役は婆さん以外でお願いします」


「うむ。了解した」


「じゃあ、心配させちゃっている人もいっぱいいると思うから一旦帰ることにするよ」


「も、もう帰ってしまうのか!? でも待っている者は確かに心配だろうな。仕方ない。では、次にタカシが訪れた時にはゆっくりと歓待するとしよう」


「うん。楽しみにしてるよ」


 帰りはリリアさんにダンジョン内転移で一階層の入口まで連れてきてもらった。


「落ち着いたらすぐ来るから」


「うむ。なるべく早く来るのだぞ」


「うん。じゃあね」


 とりあえずは『佐賀ダンジョン』に行ってミサキさんを安心させないとね。きっと心配している。


 ダンジョンの外に出るとてんとう虫さん達が迎えてくれていた。


「マスター、『熊本ダンジョン』の殲滅、お疲れ様でした。車はそのまま駐車場にございます。レイコ様がダンジョンから戻ったらすぐ連絡するようにとのこと。こちらのスマートフォンをどうぞ」


「ありがとう。あと殲滅はしてないからね。すでに協力関係にあるんだから気をつけてよ!」


 僕はスマートフォンを受け取ると発信ボタンを押した。

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