第9章 10話
狼男の姿がようやく見えてきた。肩が上下しているのがここからでもはっきり伺える。かなり消耗しているように見えるね。大きな大木の近くでこちらを迎えるようだ。
さっきから雷鳥さんがそわそわしている。大木に白いおばけが大量にいるからだろう。おそらく、「あ、あれ倒しちゃっていいの? いっぱいいるよ。い、行っちゃう?」的な感じだと思う。チラチラこちらを見てくるのがとても可愛いい。
キュルキュルー キュルルー!
戦わずに次の階層に行こうかなとか考えて狼男の足を重点的に狙っていたけど、最初の被弾以外は何とかかわしているようだ。
今後のダンジョン同士の付き合いとか考えたら、禍根を残すよりかはちゃんと相手した方がいいのかな。ある程度力をみせてマウンティングするのも戦略としては有りだろう。
というか、リリアさんに交流する気があるといいんだけどな。もの凄い吸血はしたそうだったから、その辺をうまく利用できたらいいんだけどな。復活組とは会談が出来ないようだから、佐賀ダンジョンを通してとかになるんだろうけど。
僕は雷鳥を戻して狼男と向かい合う。それでも安全を考慮して距離は30メートルとっている。
「結構、水弾に当たったようだね。それ毒だからあと五分くらいで死ぬよ」
「ま、マジか!」
「冗談だけどね。でも一応、目には入らないようにした方がいいよ」
「テメー! ビビらすんじゃねえよ」
「君はダンジョン内で死んだことはあるのかな?」
「はぁ? ねぇよ!」
「そうか。死にたくないなら僕を通してくれないかな?」
「死んだことはないが死ぬ覚悟は出来ている。あんま舐めたこと言ってるならこっちからいくぞ……っな!」
水弾×20
「いつでもどうぞ」
「またそれかよっ! つうか、さっきより数増えてるじゃねぇか。おい、それいくつ出せんだよ」
僕は水弾半分を防御を兼ねて前後左右に浮かべ、残りの半分は追尾付きで狼男へ放った。
狼男は焦ったかのように前を向いたまま後ずさると大木の裏側へと回っていった。それを見て僕も少しだけ前に出る。そして、すかさず魔法を撃った。
土棘!
「ぐぁぁぁっ!!」
さすがの狼男も10個の水弾を避けながらの土棘は無理だったようだ。あの水弾には当たりたくないという無意識の恐怖が簡単に土棘される要因となったようだね。
左足を貫かれたガルフ目掛けて10個の水弾が次々に被弾していった。もう動けないだろう。止めだ。
稲妻!
ピコン! レベルが55に上がりました。
意外とあっけなかったな。これであとは階段を探せば条件クリアか。あの白いおばけが気味悪いから避けながら向かおうかな。
その時だった!
シュルシュルシュルー!!!
白い布のようなものが僕の足元に伸びてきたと思ったら右足を絡めとられた!
「うぇっ! ちょっ、えぇぇぇ!!」
足に絡まった白い布はそのまま僕の体ごと持ち上げて大木のある方に投げつけられた。布の先を見ると包帯男を見つけた。
僕の周りにあった水弾を全て包帯男に飛ばし、足に巻きついてる包帯を炎弾で焼き切ろうとしたものの特殊な包帯だったのか全てを焼き切ることが出来ず、その勢いのまま大木の前に設置された落とし穴罠に見事落とされてしまった。
一方、全ての水弾を飛ばされたカールもタカシを罠に落とすことに集中するため、水弾を自身の体で受け止めることを選択していた。かなりのダメージをもらうだろうが、自分の防御力なら耐えられると踏んでいた。ただの水なら。
強酸の水弾は包帯を溶かしながら浸透していき余すこと無く水分を吸収していく。ミイラ男のカールにとっては全身に強酸を浴び続けているようなものだった。
ピコン! レベルが56に上がりました。
落とし穴にはまったタカシを見て、大木から飛び込んでいったのはフランケン。一緒になって大量の『ゴースト』もまた続いていく。
落とし穴の下にも大量の『ゴースト』、上からはフランケンとまたまた大量の『ゴースト』が突っ込んでいく。
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