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第9章 5話

「おい、婆さんや」


「なんだい、じいさんや。あぁ、そういえばパン釜が壊れてしもうてな。チャチャっと修理してくれんかの」


 何気ない会話からもイラっとさせる言葉選び。これはこれでダンジョンモンスターとしてはきっと合格だろう。僕が今やられているのは、うちのダンジョンで小妖精(ピクシー)が耳元で囁いたりするやつと同じだ。決してイラついてはならない。


「おい、婆さんや」


「なんだい、じいさんや。あぁ、そういえば調合用の毒草をきらしてしもうての。チャチャっと採ってきてくれんかの」


「うるせー、ババア! いい加減にしやがれ! 元はと言えばババアのせいだろが」


 し、しまった。イライラを止められなかった。僕もまだまだたな。婆さんは汗を垂らしながらも魔法の準備をしている。婆は婆で命懸けで起死回生のカウンターを狙っているのだろう。


「ご、ごめんなさい、お婆さん。ところで、今準備している魔法だけど僕に教えてくれないかな。教えてくれたら新しいパン釜をプレゼントするのはもちろん、他にも婆さんが欲しい物を用意するよ。もちろん、リリアさんには秘密にする」


「……あぁ? 何て言ったんだい? もう一回言ってくれんかの。最近、耳が遠くてな」


「い、今準備している魔法だけど……」


「……あぁ?」


「テメー、ババアいい加減にしろよ!」


 抜かりなく反射魔法を準備している感じがする。こいつ徹底してるな。しかも忠誠心も高そう。『てんとう虫』さんがいれば、ぶっ殺して脳みそ覗いてやるんだけどな。まぁ、しょうがない。教えてくれないなら先に進むか。


「婆さん。今から我慢比べをしようと思うんだ。ぶっちゃけ、物理攻撃で婆さんを倒すのは簡単だと思う。でもね、僕も一応魔法使いとして、婆さんには魔法で勝負しようと思う」


「随分とバカな奴だね。反射魔法を使えるあたしに魔法で勝負かい」


「婆さんはその反射魔法が得意みたいだけど、僕の上級魔法を跳ね返すことは本当に出来るのかな」


「じょ、上級じゃと! 嘘つけ! リリア様ですら中級がやっとなのじゃぞ」


「へぇ、じゃあ試したことないんだね」


 上級魔法は使えないけどさ。ブラフにはなってるかな。僕は体を取り巻く魔力を最大に高め婆さんを威圧する。


「お、お前バカじゃろ。反射したらその魔法はお前さんに襲いかかるのじゃぞ!」


「反射したらでしょ。反射出来るの? 自信あるの?」


「魔法使いを何年やってると思ってるんじゃ。小僧が舐めた真似しよって、さぁ撃ってみるがいい」


 僕はゆっくり構えて右手を前に突きだして魔法を撃つ準備をする。婆さんも反射の準備をしているのだろう。さて、準備は整った。


 治癒(キュア)、そして炎剣(レーヴァテイン)


「なっ! ぐぅぁぁぁぁ!!!!」


 何度か様子を見たけど反射魔法はタイミングが重要なように見えた。だから最初に軽い治癒(キュア)を撃って反射を解除させ、念のため反射しなそうな魔法で仕留めた。実際試してみないとわからないけど炎剣(レーヴァテイン)なら反射魔法ごと真っ二つに出来るような気はしないでもない。


 正直、反射魔法を教えてもらいたいのだけど、婆さんからは無理だろう。あとで五階層に行ったらリリアさんと何かしらの交換条件で教えてもらえないかな。使えなくてもどういう魔法なのかは知っておきたい。


 さて、匂いがキツいしこのフロアは早めに抜けたい。フロアを見渡した感じだと遠くの方には婆さんっぽい姿がいっぱい見える。最悪のフロアだな……姿を見るだけでイライラするじゃないか。これだと広範囲魔法は撃てないか。


 雷鳥(サンダーバード)×4  身体強化(ストレングスン)


 さて、なるべく地面を踏まないようにチョコレートの木をパキポキ折りながら空中を翔ぶように進んでいく。雷属性の雷鳥(サンダーバード)はスピードも速く、僕の周りを余裕綽々で飛んでいる。


 雷鳥(サンダーバード)は僕の周りを通り過ぎる婆さんや罠を発見しては稲妻(サンダーボルト)しながら戻ってくる。たまに婆さんの反射が決まるようだけど、雷鳥(サンダーバード)に雷属性の攻撃を与えてもダメージは入らない。あっという間に三階層の階段が見えてきた。ん? よく見ると階層の入口を10人の婆さんが固めていた。


 なかなかマスター想いなモンスターのようだけど勝算もなく体を張って時間を稼ぐというならとても残念だよ。それとも何か作戦でもあるのかな? 僕が指示するまでもなく、すべての雷鳥(サンダーバード)が突っ込んでいく。


 稲妻(サンダーボルト) 反射(ミラー) 反射(ミラー)


 ズダーン!


 のぁっ! ば、婆さん、やるじゃないか。雷鳥(サンダーバード)が放った魔法は婆さんの反射、また反射で僕の真横に落ちた。


雷鳥(サンダーバード)! 戻れっ!」


 よろしい、やってやろうじゃないか婆さん。

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