第9章 2話
「それにしても見つけてくれるって言ってたけど、どうやって僕の居場所がわかるのかな」
そんな疑問を感じていると、ものすごいスピードでこちらに向かってくる狼男のガルフが見えた。
「まさかとは思うけど、匂いとかじゃないよね? 狼なら嗅覚が鋭いのはわかるけど、ずっとダンジョンの外に待機している訳ないしな……まぁ、いっか」
よくわからないことは考えてもしょうがない。リリアさんに聞く機会でもあったら聞いてみよう。
「タカシといったな。逃げずに来たことは褒めてやろう。こっちだ、ダンジョンまで案内するぜ」
「うん、ありがとう。ついていくよ」
そう返事をするとまたしても、ものすごいスピードで来た道を戻っていく。僕も慌てて身体強化を発動して追い掛けたのだが、くやしいことに彼との差は詰まらない。僕のスピードよりもかなり上のようだ。見た感じだと、ティア先生やレヴィの方が早いとは思う。もしも彼がスピード特化タイプだとしたら、たいしたレベルでは無いだろう。
ダンジョンの入口に到着したガルフは振り向くと、びっくりした顔をして僕を見てきた。
「な、何か顔に付いてる?」
「い、いや、スピードはかなり自信があるようだな。突き放したつもりだったのだが」
いや、自信は全くない。僕のステータスは魔力一点突破型なはずだ。まぁ、勘違いしてくれているならそれで構わないけどね。
「スピードのステータスは結構自信あったんだけど、君には敵わなかったね。もっとレベルを上げないとキツいよ」
「ほぉ……。ちなみにレベルはいくつなんだ?」
「それはまぁ、秘密ということで」
「言う訳ないか。では五階層を目指して来るがいい。ちなみに俺は四階層の最後で待っている。頼むからそこまでは来てくれよ」
ちょっ、四階層にボスモンスターいるのかよ。というか、このダンジョンにボスモンスター何体いるのかな。まさか階層毎にいたりしないよね?
「とりあえず目標は五階層到達だからそれなりに頑張るよ」
「ふん。じゃあな」
ガルフはダンジョン内転移を使用したようで、僕の目の前から消えていった。さて、『熊本ダンジョン』はどんなダンジョンなのか勉強させてもらおうかな。
しばらく歩いてみて感じたことは、コウモリさんが異常に多い。普段のコウモリさんはこの時間はまだ睡眠中のはずだ。なのに、ここのコウモリさんはお仕事中な雰囲気で僕をジーッと見てくる。
なるほど、このコウモリさん達はリリアさんの眷属か。ということは、外にいたコウモリさんもか。ダンジョンカメラの代わりに眷属コウモリでこちらの動きを監視しているんだな。ダンジョンの外まで監視出来るなんてうらやましいじゃないか。
絶対零度!
マイナス273.15℃の世界がダンジョンの入口から奥に向かって広がっていく。監視するのは好きだけど監視されるのは好きじゃないんだよね。
ピコン! レベルが52に上がりました。
どんなモンスターがいたのかわからないけどレベルが上がったのはうれしい。ここでリポップを待ってレベル上げしてたらリリアさんめっちゃ怒るだろうな。まぁ、先に進むか……。
カチッ ストーン
「痛って。た、たらいだと!」
銀色のブリキのたらいが上から落ちてきた。これは、あれだ。罠だね。何かスイッチを押してしまったのだろう。こんなのわかんないわ! 勉強させてもらおうかとか言っておきながら、いきなり魔法をぶっ放した罰なのだろうか。まぁ、即死系の罠じゃなくて良かった。罠は絶対零度では凍ってくれないのだね。ほら、一つ勉強になったね! って面倒くさいわっ。
雷鳥
キュルルー
雷属性の中級魔法の雷鳥。この魔法は名前の通り雷で出来た鳥が雷撃を飛ばしながら敵を見つけ次第、自動で攻撃してくれる便利な魔法だ。僕はこの魔法に改良を重ね、罠も感知させて雷撃で使用不可にすることに成功した。一回の魔法で20~30分は僕の周辺を飛び回って活躍してくれる。
キュルルー、ズダーン!
目の前にちょっと黒くなってへこんでいるたらいが二つ落ちてきた。また、たらいか……。
ズダーン! ズダーン! ズダーン! ズダーン!
落とし穴、たらい、落とし穴、虎ばさみ。ちょっ、罠多すぎだってばー!
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