第8章 9話
その頃、『千葉ダンジョン』では『大阪ダンジョン』の情報が集まってきていた。とはいえ、『ガルーダ』という空をかなりのスピードで駆け回るモンスターが群れを成して大阪湾へ魚を獲りに出てくることぐらいである。
「ティアはこの動きをどう思うかな?」
なんとなく魚は食用に獲られているのだろうということはわかる。食べることならティア先生が詳しいかもしれない。
「そうですね。狙いは何となくわかりますわ」
「えっ、わかっちゃうの!」
「この時期の狙い目はイカナゴかしら。鷲頭でも捕まえやすいサイズですし、鮮度落ちの早い魚ですから最高ですわ」
「狙っている魚を聞いた訳ではないんだけどな……。ところで、鮮度落ちが早いってことはすぐ悪くなっちゃうってことじゃないの?」
「そこですわ。足の早い魚を獲っているのは腐りかけの美味しさを知っているからに違いありませんわ。腐った強烈な臭いよりもイノシン酸による熟成の旨味を求めているかしら」
「よ、よくわからないけど、大阪のダンジョンマスターはグルメということでいいのかな?」
「間違いないですわ。しかしながら私は思うのです。同じように魚を獲り続けるこの行動には若干頭の悪さも伺えるかしら。私なら網で一網打尽にしたり、魔法で爆発気絶漁などトライさせるわ」
なんだよ爆発気絶漁って。大阪湾が広がっちゃいそうなネーミングだな。
「そんなにたくさん食べられないんじゃない? どんなマスターなんだろうね」
「私の想像では魚好きということから既にピンときてますわ。大阪のマスターは食いしん坊の雌猫ね。食べる量からして体長は10メートルぐらいかしら」
「猫って肉食じゃなかったっけ。ち、ちなみになんで雌なの?」
「……お、女の勘かしら」
全くあてにならないな。なんとなく雌猫って言いたかっただけっぽい。まぁ、参考程度に頭に入れておこう。
「マスター、お話し中失礼するっす。『新潟ダンジョン』からで、ちょっと来て欲しいとのことっすよ」
「勇者関連だよね。何かあったのかな。とりあえず行ってみようか」
◇◇◇◆◆
『新潟ダンジョン』に到着すると場所は奇声の聞こえる勇者専用の牢屋がある場所だった。
「あひゃ、あひゃひゃひゃっ………ひひっ、あひゃひゃひゃ、ひひっ」
だ、だいぶやられてらっしゃる……。
「あっ、師匠待ってたんだよ。こいつ気持ち悪くってさ」
「うん。もう言葉は喋れない感じ?」
「いや、そんなのよりこいつのスキルを見てもらいたいんだ」
そんなのよりなんだ。あひゃあひゃ言ってるけどいいの?
ショウ(ボスモンスター)
レベル1→2
体力60→70
魔力100→110
攻撃力5→15
守備力10→20
素早さ5→15
魔法:光属性初級
スキル:痛み耐性レベル2、噛みつき耐性レベル1、火魔法耐性レベル1、自動回復(小)レベル1
装備:なし
これはすごいな……。勇者めんどくさいわー。
「まさか勇者ってスキル習得しやすいの?」
「そうみたいなんです」
「あり得ないよ。なんだよこいつ! そのうち精神耐性スキルとか覚えそうだよ」
「モフモフの噛みつきも最初の数回しか効かなかった。ムカつく」
「タカシさん、このままだと勇者を育ててしまっているような気がして……」
「なるほどね。ミクちゃん、ステータス上昇も高いから勇者のレベルはもう上げないようにしよう。あとは、なんとかして弱点を探したい」
「そうですね。勇者は光属性持ちですからやはり闇属性でしょうか」
「なるほど、じゃあ僕がやろう。闇矢!」
「ふぐ、ひぎゃあぁぁぁ!!! ……あひゃひゃ」
「一応、効いてる感じはしますね。最近は痛がるのも珍しかったので新鮮です。サクラも闇属性覚えた方がいいかも」
「そうね。傷が治らないから自動回復も行われてないっぽい」
「闇魔法耐性が気になる」
「そうだね。リノちゃんの言うように闇魔法耐性を習得するか調べてみよう。出来なければ弱点の可能性が高い」
「オッケー! それでいこう。早速、闇属性習得するよ」
「じゃあ、引き続きよろしくね」
「任せてください」




