第8章 4話
ここは『新潟ダンジョン』の会議室。『千葉ダンジョン』を模して造られたものだ。もちろんテレビモニターでダンジョン内も監視可能となっている。
「どーもー。私たちダンジョンにすべてを捧げたいアイドル」
「ダンジョン愛が止まらないミクです」
「魔法大好きサクラです」
「モフモフが至上……リノ」
「「「三人合わせて『モンスタードールズ』です」」」
なんだこのダンジョンは。本当に開通したばかりのダンジョンなのか。うちのロフトとは違い、モニター付きの会議室とかある。なんでこんな余裕があるんだ。モニターにはダンジョン内が映し出されており、ダンジョン造りがかなり進んでいるのが伺える。しかし縁起が悪いな『オルトロス』がいやがる。嫌なことを思い出すな。
それにしても、なんかこいつら見たことあるぞ。あれだ、確かダンジョン中継にいたアイドルだよな。
三人の中でリーダーっぽいミクって子に話しかけてみる。
「おい。お前らもそこの案内人にダンジョンマスターにさせられたのか? というか、ダンジョンマスターって三人でなれるもんなのか?」
「私達、前世の記憶があって前の世界では三人で一組の生き物だったんです」
「へぇー、まるでなんかのモンスターみたいだな。実は僕も前世では勇者だったんだよ。まさか今世でダンジョンマスターになるとは夢にも思わなかったけどな」
「ゆ、勇者ですか……」
「心配しなくてもいいぞ。今は同じダンジョンマスターだからな。それにしても開通したタイミングが近い割りに随分と羽振りがいいみたいだな」
「そ、そうですか?」
「あぁ、あのモニターを見る限り少なくとも2フロア以上あるだろ。僕も戦略を駆使して間もなく10階層になる予定だが、お前らもたいしたもんだな」
「じ、10階層! ですか?」
あ、あくまでも予定だがな。今は一階層ロフト付きだがな。
「少し情報交換しないか? 手助け出来るかもしれないぞ」
「そ、それよりも、前の世界ではどんなダンジョンを攻略されたんですか?」
ちっ、ただで情報を引き出そうとしたが、さすがに気付かれたか。
「そうだな。僕のパーティーは四人組だったんだけど結構有名でね、多くのダンジョンを攻略してきたんだ。一番大変だったのは『オルトロス』のダンジョンだな。あそこのダンジョンマスターは倒すのに苦労したよ」
まぁ、そこで僕も死んだんだけどな。
「お、オルトロス……」
「あのダンジョンマスター何ていったっけな? ライトじゃないな、んーと……」
「……カイト」
「そうそう、カイトだ。僕には敵わなかったがなかなか手強いダンジョンマスターだったよ」
「そうですか」
「そのダンジョンには他にこんな感じのモンスターはいなかったかな?」
「お前がモフモフの敵か」
三人は手を繋ぐとサクラから流れる魔力を循環して一つになっていく。あれから何度も練習を重ねて自分たちだけでも出来るようになったのだ。ちなみに合体時間はまだ最長で三分とのこと。
「「「合体!」」」
「なっ! あれは、まさか『ゲリュオン』だと!!!!」
「お前があの時の勇者なのだと理解した」
「残念だけど、これから私達とあなたは敵同士よ」
「次会うときは戦争」
「ま、まさか! あの時のボスモンスターだというのか! お、お前らだけ変身とかズルいぞ! ハンデだ。い、いや、ハンデをください。お願いします」
僕は恥も外聞も気にせず頭を擦り付けながら土下座していた。この会談では互いを攻撃出来ない。だから僕は助かっている。次に会うとき間違いなく殺られてしまう。
「ハンデだと?」
「勇者にハンデとか」
「ぷっ。失礼」
「わ、わかった。傘下に入ろう。君たちをこの勇者が手助けしようじゃないか」
「「「いらない」」」
「「「カイトの敵討ちと私達の怨み、思い知るがいい」」」
ダメだ。とても話が通じない。前の世界であったレベル64も今はただのレベル1。ダンジョン造りもあきらかに数段劣っている。くそっ、お父さんイノシシのレベル上げた方がまだ勝ち目がありそうだよ。イノシシが仲間になってくれる訳ないけどね!
僕は逃げるように『新潟ダンジョン』を後にした。どうすればいい。防御をとにかく防御を固めよう。あれっ? でも、ダンジョンマスターって外に出れないんだよな。そもそもあいつら『香川ダンジョン』に来れないんじゃないか。
「おい、釜揚げ。ダンジョンマスターが外に出る方法ってあるのか?」
「5000万ポイントで外出できるよ」
「何そのアホみたいな数字、無理だろ。他に方法はないのか?」
「ないよ。配下のモンスターは外に出れるけどね」
あぁ、大量の『オルトロス』が来るかもしれない。ロフトで凌げるイメージがない……。




