第7章 15話
「何よ。この『プレミアム枇杷ソフト』美味しいわね。おかわりちょうだい。帰りにミクとリノの分も持って帰っていい?」
「もちろん。優しいんだね」
「趣味は結構バラバラだけど甘いものは二人も好きなのよね」
「元々一体のダンジョンモンスターだったんだよね。なんとなくだけど三人で合体とか出来そうじゃない?」
「何それ! めっちゃ楽しそうなんだけど! また『ゲリュオン』になれるかな。ねぇ師匠、どうやったら合体できるかな」
「いや、わからないけど三人でいろいろ試してみたらいいんじゃない?」
「普通のことやってて合体出来る訳ないよ。二人とも魔法が使えないし、私の魔力を二人に繋げれば……面白いかも。ちょっと柿の種さん、二人も呼んできて!」
最近、柿の種兄さんはピースケと何故か将棋ばかり指している。なんでも『山形ダンジョン』の案内人である駒吉に勝てないのがくやしいらしい。
「ちっとばか待ってて、あと五分」
「王手、飛車とりっす!」
「待ったぁ!」
「ダメっす。もう三回目っす。そんなだから兄貴はウナ次郎にも負けるっすよ」
案内人のなかで、将棋がどんだけ流行ってるのかわからないが楽しそうだからいいと思う。案内人の生態がまたよくわからなくなってきた気がするが、なんだろ不思議な生き物だ。
「そんなのあとですぐ出来るでしょ! 早く呼んでこないとしばらく将棋禁止よ」
「あぁ、わかった、わかった。すぐ呼んでくる」
僕はミクちゃんとリノちゃんに『プレミアム枇杷ソフト』を用意しておいた。するとすぐに二人がやってきた。
「タカシさん、いつもサクラがすみません。ご迷惑掛けてませんか?」
さすがリーダーミクちゃん。気遣いのできる中学生だ。
「僕もうちの仲間達もサクラちゃんから刺激を受けて最近は張り合いがある感じなんだ。逆に感謝をしてるよ」
「サクラが造った通路が凄くて、とっても驚いたんです」
「師匠の造った通路の方がもっと異常だよ」
「さ、さすがです」
異常なところはミクちゃんも触れてくれないんだね。弟子のディスりが止まらない。
「……タカシ、久しぶり。モフモフは元気?」
「うん、リノちゃん久しぶり。とっても元気だよ。モンスターとの親密度が上がった気がするよ。ありがとうね」
「ううん。そこにモフられるものがいただけ」
よく意味がわからないけど気にしない。
「とりあえず、二人とも『プレミアム枇杷ソフト』でも食べながら話を聞いてよ」
用意したのは僕だけどね『プレミアム枇杷ソフト』。とっても美味しいんだからね。
「で、呼び出したのはどんな理由なの?」
「師匠と話をしていて出た話題なんだけど、私達が合体出来るんじゃないかって」
「サクラ、そんなこと出来るの?」
「合体の鍵は師匠の『魔力操作』スキルにあると思うの。私の魔力を二人と繋がって循環させたら可能性があるかもって」
「そんなこと出来るの?」
「今の私の『魔力操作』スキルでは無理。でも師匠なら出来る……と思う。可能性が少しでもあるなら試してみたいの。もしもの為の保険は必要だし、何よりまた『ゲリュオン』になってみたくない?」
「そうね。可能性があるなら、やってみよう!」
「またデストロイヤーできるわ!」
デストロイヤーは絶対やめてください。さすがに庇いきれません。
「それで、僕は何をすればいいのかな?」
「師匠は、私の魔臓から均等に魔力を二人に流して欲しいの。そして三人を一つにするように魔力を循環させて……」
「させて……?」
「あとはよくわからないから師匠に任せる」
「丸投げー!!!!」
「合体が上手くいくようにいろいろ試してみてよ」
まぁ面白そうだし、向こうからやって欲しいと言うのだ。これは条例に引っ掛からないんじゃないかな。いやいや、彼女らは中学生だ。中学生はダメだろ。文字だけ見ると完全に捕まりそうだ。中学生の合体を手伝うとか僕は何をやってるんだ。
「と、とりあえず力を抜いてリラックスしなよ」
つい、言葉のチョイスもエロくなってしまった。
三人が目を瞑り向かい合って手を握り合う。僕は意を決してサクラちゃんのバックに回り込み後ろから掻き回していく。
「はゎぁー、ちょっ、急にくるー!!!!」
サクラちゃんの魔力を二人に循環させていこうとするが若干の抵抗がある。二人には魔力がないから流れが弱くなる。もっと体を包み込むように魔力を薄く広げ馴染ませる。
「あ、あたたかいです」
今だ! 僕の魔力を一気に流し込み身体に刻み込んでいく。
「はぁんっ!!あっ!……はぁ……はぁ……」
道は出来た。あとはスピードを合わせて循環させていく。三人を流れる魔力が一定のリズムを刻み一つに溶けていく。
「……っうううんっ……!はああぁんっ~!」
ポフンッ!!!
魔力の塊が一つになり、可愛らしい音と共に一体のモンスターが現れた。これが三面六臂の怪物『ゲリュオン』か。
「師匠! さっすがぁ! 」
「ちょっ、サクラ急に動かないで」
ポフンッ!!!
三面六臂の怪物が嬉しそうに抱き付いてこようと六つの手を広げて突っ込んでくるという恐ろしい光景がすぐ目の前まできていたが、どうやら助かったようだ。
「あれっ?戻っちゃった」
「サクラが急に動くからよ! 」
「でも『ゲリュオン』なれた」
「よし! 師匠、もう一回いこうか」
中学生はとっても元気だ。ぼ、僕はちょっと精神的な休憩が必要です。このモヤモヤな気持ちを一度リセットせねば。
「休憩ー!」
「えー!!!」




