第7章 12話
その後、なんとか無事に動画制作は完了した。『ゴブリン』達の自然な怪我がより臨場感を演出していたとかいないとか。監督をしたレイコさんはとても厳しかった。
「ちょっと、死んでるんだから動かないでよね!」
「ゴブゴブッ」
「心臓が動いてるのよ! 死ぬ気で止めなさい」
「ゴフッ」
い、いや心臓止まったら死んじゃうからね。
動画データはアメリカで確認した後、日本政府にも渡される予定になっている。かなり解析はされると思うのでバレないことを祈りたい。まぁ、バレても揉み消せるくらいはできると思う。
パワースーツに関してもある程度の耐久性は確認出来たが、たいした脅威にはならなそうだと判断した。『ゴブリン』レベルの炎弾であれば、ダメージはほとんど入っていなかったのだが、僕が炎弾を撃ってみたら貫通してしまった。まぁあれだ、中に人がいなくてよかった。
「あぁ、壊しちゃった。マスター、今のは失敗だろ?」
よくわかったね、ヨルムンガンドちゃん。火系の魔法は威力が高いので調整が難しいのだ。
「ヨルムンガンドちゃんも撃ってみる?」
「おぅ! 闇矢でいいのか?」
「うん。軽めに一回撃ってみてよ」
「軽めにっと闇矢」
矢は見事にパワースーツの心臓付近に突き刺さっていた。
「マスター。あれは着てる意味ないんじゃないか」
「やっぱりボスクラスの魔法は強度が別物なんだろうね。銃弾とかは問題なく弾いてるんだけどね」
また、電動アシストの機能は素晴らしかったが、あくまでも普通の人間が使う場合にのみ言えることだった。僕たちが動こうとしてもそのスピードに電動アシストがついてこれないため、ただ動きを阻害しているスーツと成り果てていた。うーん、微妙だね。技術力がさらに上がればアシストも可能になるかもしれないけど、せいぜいレベル2とか3までが限界じゃないかな。
「マスター、『てんとう虫』から連絡っす。佐野総理以下大臣はすべて押さえられたっす。また、ダンジョン情報についてわかったことがあるっす。どうやら浜松周辺が怪しいってことで大々的に捜索が入るところをギリギリ止められたそうっすよ」
「おー、リナちゃん危なかったんだね。特侵隊もそれなりに頑張ってたということか。今後は各省庁、与野党問わず議員も含めて催眠を少しずつ広げていこう。もちろん、特侵隊、警察、自衛隊は最優先だよ」
「了解っす。あとは、記者会見の内容について確認して欲しいと資料がきてるっす」
「あんまり難しい話はわからないから、基本的に官僚の頭脳を操れる『てんとう虫』さんに任せるよ」
一応、聞いてくれってことだったので話は聞いたが、なんか凄いことになっていた。
まず基本的な流れとしては、結構な被害は出たけど、在日米軍部隊の協力もあって悲願だった『千葉ダンジョン』の攻略に入ることができた。
その際、『ブルードラゴン』を討伐するために米軍部隊の命と引き替えに小型核兵器をダンジョン内で使用したこと。核兵器の持ち込みに関してはダンジョン内での使用に限り、日本政府として許可したことを伝える。その結果、一番の脅威と思われる『ブルードラゴン』は二体とも消滅させることに成功。
日本政府として、最大の脅威であるブルードラゴンを命と引き替えに倒したエイデン少尉へ特別な外国人叙勲を与えることを決めた。
ありがとう、エイデン少尉。顔も知らないけど。
現在は、『ゴブリン』などのモンスターからドロップアイテムを入手しながら攻略を続けており、ある程度安定的に『傷薬』を入手出来ている。その少なくない売上を消費税の減税に回す考えを発表することで世論を味方につける考えだ。
次に、ドラゴンのような恐ろしいモンスターがダンジョンの外に出て暴れるようなケースは無さそうだと判断していることを伝えた上で、しかしながら『千葉ダンジョン』は巨大なダンジョンであるため攻略にはかなりの時間と少なくない犠牲がまだまだ必要であることもしっかり伝えてもらう。




