第7章 11話
在日米軍部隊が『千葉ダンジョン』攻略にくる日程が決まった。日本政府からの回答が遅れたため二週間後になったとのこと。
映像制作関係の機材は在日米軍部隊からの用意のため先に『千葉ダンジョン』に持ってくることができた。『てんとう虫』さんグッジョブです。
「そういうことで、演技の練習を始めたいと思います」
草原フロアにてレイコさんとゴブリン達、レヴィと集まった。撮影部隊の『てんとう虫』さん達は機材を確認中である。
「今日は敵役の『てんとう虫』さんがいないのでレイコさんとレヴィが代わりにやります。いいですか?」
「はーい。しっかり殺ります」
レイコさんから殺気を感じるが気のせいだろう。
「今日は流れを確認するのと、カメラテストぐらいだから力入りすぎないようにね」
「ゴブッゴブゥ」
「ゴブッ」
「ゴッブッゴッブゥ」
「ゴブゴブッ」
「ゴブ」
何やら『ゴブリン』達が念入りに打ち合わせをしているようだった。意外と真面目なのかな。ゴブリン達は五匹で出演予定だ。内、炎弾を撃つために『ゴブリンメイジ』が一匹入っている。
話し合った結果、だいたいの流れはこうだ。
米軍部隊が草原フロアに入ってきて周囲を確認しながら進んでいく。すると草むらの奥から何かの声が聞こえてくる。警戒しながら進む米軍部隊。すると何やらゴブゴブ言ってる『ゴブリン』を発見。
合図を送ってゆっくり半円状に囲んでいく米軍部隊。そして、射撃の準備をしている時に隊員の一人が音を気づかれてしまう。『ゴブリン』は一斉に振り向くと跳ねるように走り始めた。しかし、射撃の準備はもう整っていた。次々と銃弾に倒れていく『ゴブリン』達。
その時、詠唱が終わった『ゴブリンメイジ』が魔法を放つ。そう炎弾だ。射撃終わりを的確に狙われた隊員の一人はまともにあたってしまった。吹き飛ぶ隊員。しかし、パワースーツは炎弾を見事に弾いていた。ダメージはほとんどない。気を取り直した隊員がすぐさまヘッドショットを決めて戦闘終了。
「では、スタート!」
「あ、あれー。こ、ここは、い、一面の草原ねー」
「カット!」
「ちょっとレヴィ。台詞がめっちゃ棒読みだけど緊張してる?」
「す、すみません。お兄さま。演技とか初めてなので」
「大丈夫よ。レヴィちゃん。タカシさん、流れを確認するだけですからそのまま進めましょう」
「そうだね。じゃあ次はレイコさんからね。スタート!」
「ちょっと待って! 生意気な声が聞こえてくるわ。方角はあっちね。あれは『ゴブリン』よ」
「ほ、本当だー。ま、間違いない。あ、あれは、ご、『ゴブリン』ねー」
「音をたてないように気をつけながら進むわよ」
「ら、ラジャー」
「よし、見つけたわ! ぶち抜くわよ」
「あ、あれっ? レイコさん、あれは案山子では」
「あいつら……。レヴィちゃん、来るわよ!」
「えっ。台本と違いますよー」
「気配は近いわ。いったいあいつらどこに!」
すると突然下から炎弾が撃ち上がる。えっ、下から? 炎弾の風圧で二人のスカートは、めくれ上がった。それはもう見事にめくれ上がった。『ゴブリン』ナイスだ!
「きゃぁ!!」
「ゴブゴブッ」
「ゴブッ」
「ゴブッゴブゥ」
「ゴブゴブゴブ」
「ゴブゴブッゴブ」
『ゴブリン』達は真正面からぶつかっても勝ち目がないと考え、敵に屈辱を与えることに特化したようだ。そう、彼らは地面の中に顔だけ出して潜み、銃撃ポイントに隠れていたのだ。そのブレない姿勢は尊敬に値する。あとは気持ちよく逝ってくれ。
「随分と面白いことしてくれたわね。自ら逃げ道を無くすとかいい度胸じゃない」
「ゴブゴブッゴブ」
ドスンッ!!ドスンッ!!
容赦なく踏みつけた。ちょっと首が心配なので軽めの治癒を撃っておいた。きっと大丈夫……なはず。
「ゴブゴブッ」
ドスンッ!!ドスンッ!!
「で、魔法を撃ったのはお前か?」
「ゴブ」
バチコンッ!!!
久しぶりにレイコさんのコークスクリューブローがきれいに決まった。一応、薄く土壁を張ってあげたので大丈夫だと思いたい。




