第7章 10話
水着シーンはちょっと捨てがたかったが、結局はレイコさんにお願いして『ゴブリン』達に出演をお願いすることにした。やはり炎弾は映像的にインパクトありそうだ。みんな魔法大好きだろうからサービスしちゃおう。
それにドロップアイテムで『傷薬』を渡すのに違和感もないし、『千葉ダンジョン』のモンスターをわざわざ外部に知らせる必要もないなと判断した。
「ということで、『ゴブリン』達に演技指導をよろしくねレイコさん」
「はい。死なないように気をつけますね」
「い、いや、『ゴブリン』生き返らないからね」
「ふふっ。冗談です。レヴィちゃんにも戦闘シーンの構成とか手伝ってもらいますね」
実際には在日米軍部隊がどのような機材を持ってくるかでも変わってくるだろう。こちらはこちらで一通り準備はしておこう。血糊とか、特殊メイクは厳しいか。あとは映像に映らない透明の土壁とか僕自身の『透明化』スキルとかは役に立つかもしれない。
「あとで、僕も打ち合わせに参加するよ。偽物だとバレないように頑張ろうね」
「そうですね。ある程度はリアリティも必要ですからゴブリン達はぶん殴りましょう。自然に流れる血がリアルですからね」
……『ゴブリン』ごめん。僕、レイコさんを止める自信がないよ。早めに治癒するから頑張ってね。この場に『ゴブリン』がいたら絶望していたことだろう。
「それで、最近よく横田基地に呼び出される大臣誰だっけ? まずは彼を操って徐々に日本政府へ入り込んでいこう。核の持ち込み許可を国民には内緒に承認させたいからね」
「防衛大臣っすね。誰だったっすかね。とりあえず呼び出して催眠にかかるまで監禁する方向で指示出しとくっす」
「うん、頼むよ。こうなってくると今の政権には長生きしてもらいたい。適度に餌を与えながら上手くやっていこうか」
日本政府がダンジョンに対してどのような動きをしていたのかもわかるのは嬉しいね。少しずつ情報網が広がっていく。
「ところで、ピースケ。あの『てんとう虫』さんと思われる行列は何かな?」
「あー、あれっすか。あれはティアへの特産品献上の行列っす。ローテーションで戻ってくる『てんとう虫』が購入した全国各地からの特産品っすよ」
まるで参勤交代だな。さすがティア先生、抜け目がない。やはり自分の欲望に忠実である。
「あなたは佐賀から戻ってきたのね。遠くからお疲れさま。それで地の物は何かしら」
「はっ。こちらが佐賀銘菓『佐賀にしき』。小豆や栗の入ったふんわり生地を美しい層をなすバームクーヘンで挟んだ和洋折衷の甘味でございます。こちらが試食でございます」
「もぐもぐ……。なかなか上品な甘味ね。中の小豆と栗の食感が素晴らしいわ。ふむ、合格よ。タカシ様も喜ばれるかしら。次!」
「はっ。私は香川から戻って参りました」
「香川ね。遠くからお疲れさま。それで地の物は何かしら」
「はっ。こちらが香川銘菓『イシパン』。とにかく固い食べ物でして、甘さ控えめで顎の運動にもなるらしいのでティア様にはピッタリかと。こちらが試食でございます」
「あ、あなた私が太っているとおっしゃりたいのかしら! か、固い、とても固いわ。こ、これは何なのかしら」
「い、いえ。け、決してそのようなつもりはなく」
「こ、こんなカチカチに固いものを私の口に押し込めるとか、い、いったいどういうつもりかしら」
「も、申し訳ございません。ティア様、実はもうひとつ地の物をご用意しております。どうか、こちらも。どうか、こちらも」
「しょ、しょうがないわね。早く用意なさい」
「はっ。こちらは『るんるんおばあちゃんの生うどん』にございます。こちらのうどんを茹でてだししょうゆをかけて食べると大変美味。麺は中太、硬すぎず、軟らかすぎずの絶妙なこしのある食感でございます。ティア様にはのどごしを楽しんで頂きたいと思います」
「試食は?」
「い、いえ。こちらは麺を茹でなければ召し上がれません」
「……も、もういいかしら。戻っていいわ」




