第7章 8話
今日からパワースーツを使用した訓練が開始される。もちろん参加するメンバーはアレックス准将を操る私が選んだ。パワースーツの数も限りがあるため65名で訓練を進めることになったのだが、その内メンバーの約半数は既に仲間の『てんとう虫』が操っている。ちなみに『てんとう虫』さんや『菜の花』の活動限界は長くて三日程度のため、二日置きのローテーションで入れ替わりながら操っている。
内訳は後方支援部隊20名、ダンジョン攻略部隊15名×3といった具合になるのだが、もちろんすべてマスターには連絡済みだ。
「アレックス准将、ハリス司令官ですが無事操ることに成功しました。ダンジョン攻略をやめさせることも可能ですがいかがいたしましょう」
アレックス准将の部下を操ったてんとう虫から朗報が入った。これで在日米軍の動きはほぼ押さえられた。
「ポイントを稼げるチャンスだからやめるという考えはないだろうが、念のためマスターに連絡してみよう」
すぐに携帯無料アプリで亀山にいる高橋さんに連絡を入れマスターの意向を伺ってもらう。このアプリはとても便利なもので、簡単なメッセージから通話まですべて無料で使用できる優れものだ。まぁ、お金を払うのはアレックス准将なのでどうでもいいんだけど。このアプリ、ダンジョン内でも使用できれば言うことなしなのだが、それは贅沢というものだろう。
「おっ、もう高橋さんから連絡が来ている。早いな。………なるほど、さすがマスターです」
届いたメッセージを見て驚かされた。マスターは本当に面白い考えをなさる。さて、日本政府からの回答がくるまで訓練をしながらさらに隊員を操っていこう。
◇◇◇◆◆
「マスターも思い切った事を考えるっすね。『てんとう虫』も驚いていたっすよ」
「いや、僕の方が驚いてるよ。まさか司令官を操ることに成功したとか想定外過ぎるんだけど」
『てんとう虫』さんがとても頼もしい。まさか、在日米軍の中枢にあっさり入り込めるとは正直びっくりしている。
僕が立てた戦略は『千葉ダンジョン』をわざと攻略させることだ。とは言っても、実際に攻略させる訳ではなく攻略中のふりをしてもらう。
基本的には『てんとう虫』隊員にダンジョン内に入ってもらい、操れていない普通の隊員を殺してもらう。そうすることで、隊員のレベルも上がりモンスター討伐が進んでいると思わせることもできる。隊員の犠牲もある程度は想定されているだろう。
『てんとう虫』隊員には、ドロップアイテムとしてポイント交換した『傷薬10P』を渡すことでさらに信憑性を高めさせるのもいい。『傷薬』ぐらいならいくらでもあげようじゃないか。
この戦略に伴い一階層にいる『小妖精』と『一角ウサギ』は三階層の草原フロアに移動してもらった。大量の『菜の花』と『てんとう虫』さん達が残ることになる。あくまでも催眠と乗っ取りをメインにする階層にした。
少し困ったのが亀山からの入口が自由に使えなくなることだったけど、ピースケに聞いたら全く問題なかった。
「セカンドゲートの入口は別の階層に繋げられるっす。とりあえず三階層あたりにしとけばいいっすよ」
エディともこれでサヨナラかと思ったが、まだ関係は続くようだ。三階層のモンスター達に一応噛まないように伝えておこう。訪日観光客も亀山入口から今まで通り継続とさせて頂きます。
さて、これからいろいろと忙しくなる。証拠の動画も作らなくてはなるまい。ダンジョン内や戦闘シーンなど必要になるはずだ。モンスターに演出とかって、ちゃんと理解してもらえるだろうか。出演はどうしようかな。『一角ウサギ』では映像的にインパクトに欠けそうだよね。
まぁ、このあたりはみんなとも相談してみよう。ティア先生やヨルムンガンドちゃんなんかもモンスターと仲が良い。いい案が出てくるかもしれない。
あとは、パワースーツってのもどのくらいの性能があるのか気になるところだ。大したことはないと思うけど、どのくらいの防御性能があるのか、また電動アシストはどんな感じか、身体強化と比較してみようか。




