第7章 3話
現状の国内状況を鑑みると少なくとも初期段階でダンジョンが見つかってしまうことはNGと思った方がいい。発見される=特侵隊が来て一気に攻略されてしまう。ってのは間違いない。
僕がミクちゃん達に指示した内容はこうだ。
シンプルにダンジョンの入口を出来る限り隠すこと。とりあえずはコウモリさんの外出用に地上から高さ三メートルぐらいの位置にスペースを開けておけばいいだろう。
普通に考えるとポイントが取得できないのでじり貧になるのだが『千葉ダンジョン』からコウモリさん、ニワトリさんを提供していくことで安全にポイントを積み重ねていくことが可能となる。
また、あくまで念のためだが、ダンジョンの外側は『てんとう虫』さんが操る野生動物が人を近寄らせないようにする。
次にダンジョン内だが、通路は低く狭くうねうねと迷路状に。これは魔法が得意だと豪語するサクラちゃんの『魔力操作』スキルの仕上がり具合による。
「ガチガチに守るのね。ちょっとやりすぎじゃない?」
サクラちゃん的には多少は攻めたい気持ちがあるようだけど、ある程度迎撃できる力がつくまでは我慢してもらおう。
「失敗したらカイトさんに会えないよ。まぁ地力がつくまではスキル習得と習熟を頑張って」
「サクラ、文句を言わないの。あなたが『魔力操作』スキルを覚えたらクリアもきっと早くなるんだから」
「ある程度ポイントが貯まってきたら、また方針を変えていくからさ」
「わ、わかったってば。あとは、スパイだっけ? 他のダンジョンマスターの状況をタカシに伝えればいいのよね」
これは、ミクちゃん達に協力する代わりにお願いしたことだ。どのくらい効果が見込めるかはわからない。ただ、コウジさんの『山形ダンジョン』には絶大な効果を発揮しそうだということはわかっている。
「うん、サクラちゃん。マスターも心境の変化や、僕には言えないこととかもあるかもしれないからね。上手く探りをいれてほしい。可能なら『香川ダンジョン』とかもね」
「それぐらいでいいなら任せておきなさい。も、もっと凄いことを想像してたし……」
軽く頬を染めるサクラちゃん。繰り返すようだが、コウジさんの前でそういう発言はしないように気を付けてほしい。彼のローリーを刺激しては君の身が危ないと思うんだサクラちゃん。
三人の中で魔法が使えるのはサクラちゃんだけなのだという。ちなみにサクラちゃんは火属性を持っていた。そういえばここまで火属性って縁がなかったのか全く使ってこなかったな。ファンタジーの一般魔法だというのにね。これからは出番が増えるんじゃなかろうか。爆裂魔法的なとんでも魔法を覚えたい。そうして、サクラちゃんに指導するために僕は火属性魔法を習得しておいた。
「じゃあサクラちゃん僕の魔法を見て勉強してね。炎弾!」
撃ち出された炎弾はゆっくりと進みながら分裂を繰り返して広がっていく。それは、目標にしていた岩場に向かって様々な方向から一斉に飛んでいく。
ズガァァァァン!!!!!!
火属性魔法は攻撃力が強いようだ。かなり力を抜いて放ったのだけど岩が粉々に砕けてしまった。
「……………」
「じゃあ、サクラちゃん同じように炎弾を撃ってみて」
「い、今のが炎弾の訳あるかぁぁぁぁ!!!!!」
正真正銘、間違いなく炎弾なんだ。
「まぁ、これが『魔力操作』スキルを活用した初級魔法なんだよ」
「理解出来る範囲のものではないということがわかったわ。『魔力操作』スキルについて詳しく教えて」
「僕もちゃんと教えてあげたいんだけど、先生役に向いていないんだよね。簡単に説明すると、魔法を発動させる前に魔力を頭の中のイメージに変換させて発動させるんだ」
「ちょっと何言ってるのかよくわからないわ」
そうだよね。最初は理解するのがなかなか難しい。こうなると最終手段に出るしかなくなるんだけど。
中学生の女の子には悪い気がするけど。そう、身体で覚えさせるしかないかな。




