アクアツアーへ行く→
木の柵でぐにゃぐにゃと区切られた順路を、無視して突っ切って行くあなた。
はあはあと息を切らせていると、つん、と、塩素の匂いがしました。
横を振り向くと、アクアツアーのボートがあります。
そう、ここはアクアツアーの入り口。
あなたは悩んだ末、アクアツアーを選んだのです。
あなたは、その昔、裏野ドリームランドへ行った時に乗ったアクアツアーを、思い出していました。
なんということはありません。
アクアツアーとは名ばかりで、出てくるのは全部、機械の魚やカラクリ系のみ。
ボートに乗っているとそれらがタイミングよくスローモーションで飛び上がるので、幼いあなたの記憶にも残っていたようでした。
……『茶番だ』という意味で。
ふと、横を見ると。
そこには、看板が、ありました。
『アクアツアーに現れる、謎の生き物。
その謎の生き物の、嫌いな食べ物、な~んだ?』
裏野ラビットのニッケルさんが、おどけたポーズでそんな台詞を書かれています。
看板になっても、憎たらしい格好ですね。
看板の前には、いくつかの食材が、おいてありました。
『ピーマン』、『にんじん』、『大根』、『さば』、『牛肉』。
……ここにあるもののどれかを持って、ボートに乗り込め、ということでしょうか。
そして、そのどれかを持っていれば、『謎の生き物』に襲われない、ということでしょうか。
「……はっ。
だったら、答えは簡単だな」
あなたは、ハン、と鼻息を鳴らすと。
それらの食材……全てを持ち出しました。
「別に、『一個だけ持って行け』なんて指示は、無いんだからな」
笑いながら、ボートに乗り込むあなた。
しばらくして、落下防止用……いえ、逃亡防止用のバーが、降りました。
……ちなみに、問題の答えは、『人間』。
別に、『この中に正解がある』なんて指示は、無いのですから、ね。
そうです。
『謎の生き物』は、『人間』が、大の苦手。
だけど、思い出してください。
アクアツアーの、ウワサを。
『ウワサ3 アクアツアーの不気味な生き物
遊園地が営業していたころにも、
アクアツアーで
「謎の生き物の影が見えた」なんて
話が何度かありましたね。
それ、今でも見えるらしいですよ』
……さて。
塩素いっぱいで、まともに生き物の住めないこの世界に住む『謎の生き物』は。
何を主食にしているんでしょう。
……そうです。
……ちょっとくらい味が悪くても、我慢して食べるんですね。
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