その建物へ行く→
「もう、無理、だろ……」
あなたは、弱音をはいています。
無理もありません。
あれから数か月、眠った回数だけ殺されているのですから!
「ジェットコースターへ行った!
アクアツアーへも行った!
ミラーハウスへも行った!
ドリームキャッスルへも行った!
メリーゴーラウンドへも行った!
観覧車へも行った!
どこにも、ゴールなんて、ないじゃないか!」
フラフラの頭で、大声を上げたあなたは、ふと、思い付きます。
「……まてよ?
……あの建物は、どうなんだ?」
思い出すのは、裏野ドリームランド初日。
チュートリアルの様な説明が裏野ラビットのニッケルさんからあった、あの建物。
今まで気にしていませんでしたが。
裏野ラビットのニッケルさんは、アトラクションの中に出口があるとは、一言も言っていませんでした!
そこがゴールとは限りませんが。
試す価値は、ありそうです。
あなたは、一人うなずくと、その建物を、探すのでした。
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「……ん?
どうしたの?
忘れ物?」
建物の中には、いつかのように、裏野ラビットのニッケルさんがいました。
ふと、回りを見渡すと。
夥しい数の遺影が、飾られています。
「……これは、いじめで自殺した子供達の写真だよ。
この子は、中学生。
こっちは、まだ小学生だ」
悲しそうに、裏野ラビットのニッケルさんは指を指して説明します。
呆然と写真を眺めているあなたは。
……1つの写真に、気が付きました。
それは、見慣れた、顔。
何度も馬鹿にして、罵倒して、殴り付けた、顔。
はにかんだそのモノクロ写真に、あなたは、土下座します。
「ごごご、ごめんなさい!
わ、私が、悪かったです!!」
それは、自然に行われた行為でした。
裏野ドリームランドで何度も死ぬ目にあって。
やっと、相手がどれ程傷ついていたのか気付いたのでしょう。
「……忘れ物、見つかったみたい、だね」
そばにいた裏野ラビットのニッケルさんは、そう言って。
パチン、と切符の様なものを切りました。
「そう、それがゴール。
そして、スタートでもある。
君は、その気持ちを、一生持ち続けなくちゃならない」
そう言いながら、裏野ラビットのニッケルさんが手渡したのは。
……『裏野ドリームランド優待券』に『来園済』の刻印が押された、チケット、でした。
呆気に取られるあなたに。
裏野ラビットのニッケルさんは、こう、言いました。
「裏野ドリームランド攻略、おめでとう。
……それじゃあ、また、どこかで」