勇者
勇者になる方法は、主に2つある。
1つは、転移先の神殿で、その資質があると見初められた場合。
このパターンでは、本人に特別な資格は必要なく、始めから勇者として活動していくこととなる。
もう1つは、戦士、魔法使い、僧侶をそれぞれ3年以上従事したことがある者の中で、神官に推薦された者だ。
今回インタビューをするのは、鈴木裕也さん(30)で、後者の方法で勇者になったとのことだ。
悠「早速ですが、この世界に来てから、勇者になるまでの経緯を教えて下さい」
山「はい。 私は、最初は無職でした」
悠「……えっ! それってまさか……」
鈴「はい、お察しの通り、何の職業の適性もないと言われました。 なので、元ニートです笑」
何と、鈴木さんは悠早と同じで、神官から適性がないと言い渡されていたのだ。
鈴「それで、あるパーティーに、戦士として使ってくれって、無理矢理頼み込んだんです」
悠「ここでは、何とかして仕事を見つける以外無いですもんね……」
鈴「はい。 でも、結局2年しか続かなくて、稼いだお金で今度は魔法使いの専門学校に行ったんです。 そこを卒業すれば、資格が貰えたので」
この世界では、魔道書を買うのに資格が必要となる。
資格を得る方法は、鈴木さんの言った方法が一般的だ。
悠「実際魔法使いになって、どうでした?」
鈴「散々でした笑 入ったパーティーが体育会系で、魔法の詠唱が遅ぇ! とか、毎日先輩戦士に怒鳴られてましたね」
悠「魔法使いって、もっと大事にされてそうなイメージでしたけど」
鈴「パーティーによります笑 でも、せっかく魔法使いになったんだからと、そこでは6年頑張りました。 僧侶もやらせて貰ったんで、結果的にいい経験でしたね」
こうして、偶然ではあるが、勇者としてのキャリアを積んでいった鈴木さん。
6年いたパーティーを抜けたのを機に、勇者を志すのを決めたそうだ。
午後、勇者がどの様な仕事をしているのか、同行させてもらうことにした。
今、とある森の入り口に来ている。
悠「その手に持っているのは?」
鈴「ゼリーの詰め合わせ、です」
鈴木さんは、おもむろに木の表面についているインターホンを押した。
?「……はい」
鈴「あ、鈴木です」
すると、目の前の草木が独りでに動き、道をあけた。
鈴「今から、挨拶に行きますので」
気づいた方もいるかと思うが、鈴木さんはこれから森の魔王に挨拶に行くのである。
鈴「こうやって各地の魔王に挨拶をして、未然に争いを防いでいきます」
悠「へぇ~…… 勇者って、営業みたいですね」
鈴「苦笑」
挨拶回りを終え、宿屋に戻ってきた。
悠「今日は、平和を守るために働く勇者という仕事を少しだけ理解出来た気がしました。 最後に、勇者を目指す若者にメッセージをお願いします」
鈴「はい。 勇者の仕事って、思っていたイメージと違うから、辞めちゃう人が多いんです。 でも、色んな経験をしてきた私から言わせると、はっきり言って楽です。 だから、せっかく資質があると言われたのなら、辞めないで頑張って欲しいです」
悠「平和を守る、ということには変わりないですもんね。 本日はありがとうございました!」
鈴「ありがとうございました」