不思議アイテム雑貨屋
今、街の表通りを歩いている。
大勢の人が行き交っており、様々な店が軒を連ねているが、本日紹介するのは、日陰の当たらない裏通りにある、不思議な雑貨店である。
石畳の通りを歩き、地図と照らし合わせ、ようやくその店を見つけた。
チリン、という音を立てて中に入ると、店内は薄暗く、オレンジ色の間接照明で僅かに明かりが点されている。
店の奥へと進むと、カウンターにいる女性が会釈をしてきた。
彼女が、今回インタビューをする、高岡凛子さん(27才)である。
悠「はじまめして、悠早です。 本日はよろしくお願いします」
凛「よろしくお願いします」
悠「経歴書を拝見したんですが、読んで驚きました。 以前は勇者をしておられたんですか?」
凛「はい、元々勇者でした」
悠「なぜ、雑貨店を?」
凛「勇者として各地を回っていると、色んなアイテムを使うんですよね。 体力を回復する薬だったり、暗い洞窟を進むための松明だとか。 それで、ある日お金に困って、苦し紛れにそれで商売してみたら、ハマっちゃいまして」
てへへ、とはにかんだ凛子さん。
ふと店内を見渡すと、赤と緑の液体の入った瓶の棚が目についた。
悠「あの瓶は?」
凛「少し味見してみます?」
おもむろに瓶を手に取ると、スプーンで液をすくい取り、渡してくれた。
悠「……あ、何か知ってる味ですね! ニンジン?」
凛「正解です。 高麗ニンジンのエキスで、魔力の回復に効果があります。 こちらもどうぞ」
今度は緑の液体をすくい取る。
悠「……うぷっ」
とても生臭く、例えようも無くマズい。
悠早は、恐らく青汁だと判断した。
悠「何となく分かりました。 マズい、もう一杯! のやつでしょ?」
凛「青虫の体液です」
悠「オエエエエエエエエエッ」
街から離れた草むらにやって来た。
これから、店で売る「ある物」を捕まえるらしい。
悠「鎌と瓶を持っていますが、一体何を?」
凛「妖精、です。 壺の中とか、草と草の間に隠れていることが多いんですが……」
話によると、体力が尽きたときに回復してくれる妖精らしい。
凛子さんが草を刈り取ると、ピンク色の、タンポポの種の様な物が飛び出してきた。
凛「出た! これです」
シュッ、と手慣れた手つきで妖精を瓶の中に収める。
悠「ちょっと、可哀想な気もしますが……」
凛「まあ、こちらも商売なので」
妖精を手に入れ、街に引き替えそうとした時だった。
草むらから、黒いたてがみの狼が飛び出してきた。
悠「うわあっ」
凛「あれは、ダークウルフ! 離れてっ」
しかし、ウルフは悠早に襲いかかり、馬乗りになる。
悠「うわあああーっ」
ウ「グルアアアーッ」
その時、ウルフの右目にパチンコ玉が命中した。
凛「こっちよ!」
凛子さんが手にしているのは、バックから取り出したパチンコ、そして、ナイフだ。
いきり立ってウルフが躍りかかるも、後方宙返りでそれをかわす。
最後は、地面を蹴って、ウルフの顔面にナイフを突き立てた。
悠「危ない所を助けて頂き、ありがとうございました」
凛「いえいえ」
悠「やっぱり、これからも雑貨店を?」
凛「……私は、世界を救うのが自分の使命だと思っていました。 でも、人生は一回しかない。 だから、自分のやりたいことを、これからも続けていくつもりです」
悠「……自分のやりたいことが見つかって、良かったですね。 今日は、ありがとうございました!」
凛「こちらこそ、ありがとうございました」