1話 微睡み
1話 微睡み
『今度こそ幸せになるんじゃぞ』
エル様のその言葉を最期に、私の意識は微睡みの中に入った。
どこかから、ゆっくりと引っ張られている感覚。
これが肉体に魂が入る感覚なのかしら?
私が死んだときはあっという間に魂は抜け出たのに…
入るのは大変なのかしら…
「サラ様、今朝もお綺麗でございますよ。
ばあやはサラ様よりお美しい方を存じ上げません。
王国中を探したっていませんとも。
さぁ、早く目を覚ましてその美しい瞳を見せてくださいな。
どうかどうか、神様 老い先短いこの老婆の願いを叶えて下さいな」
手繰り寄せられている先から聞こえる。
おばあさんの声。
あぁ、この身体の持ち主はとても愛されているのね。
待っていてね、貴方の愛した方とは違うかもしれないけど…
「ばあや、そんなこと言わないでちょうだいな。
大丈夫よ、サラはばあやが大好きだもの。
きったもうすぐ目を覚ますわ。
だから、老い先短いなんて言わないで。
ねぇサラ、ばあやに言ってあげてちょうだい、長生きしてもらわなきゃ困るって」
今度は優しいまだ若い女性の声。
きっと、お母さんかお姉さんね。
「サラ、誕生日おめでとう。
行きたがっていた魔術学院に入学できる年齢になったね。
気が早いと言われてしまうかな。
制服を今日届くように手配したのだよ。
もうすぐ届くけら、着せて見せておくれ」
まだ若い男性の声。
きっと、お父さんかお兄さんね。
サラ、あなたはとても愛されていたのね。
きっと悲しかったわよね。
こんなに愛されていて、眠りにつかないったらいけなかったなんて。
いったい何があったのかしら?
エル様は、このサラの事は何も教えてくれなかった、
どうしてかしら?
魂がサラではない、私を果たして受け入れてくれるかしら?
目を覚ましたら、知られないように生きていけるかな?
きっと大変かもしれない。
でも、このサラとして私は幸せになってみせるわ。